闇を統べる者
王道 -破滅へ続く道-⑬
(私はボトヴィを利用する事しか考えていなかった・・・仲間、だったはずなのに・・・)
細かい事は気にしない性格なのだろう。アルヴィーヌがいつの間にか気を許し始め、初めてハジャルの鼻先を撫でさせてくれると答えに辿り着いたアナはやっと彼の墓前に立つ事が出来た。
本来仲間とは、友人とは損得で付き合うものではない。利よりも先に情で結ばれるからこそ尊く、大切なのだ。
それを彼らと黒い竜達の生活に触れ合う事でようやく掴んだアナはやっと後悔が芽生えるも向き合うにはまだ時間がかかるだろう。
フランシスカもその行動が答えだと受け取ってくれたのか、以降は少しだけ気楽に接してくれるようになったのだが残る黒威の問題については国家が動いていたのを彼女は知る由もない。
「クレイス様、もし我が『ビ=ダータ』の宿願にご助力頂けるのでしたら王位継承の件は全力で支援致します。」
丁度アナの気持ちに整理が付き始めた頃、ガビアムに呼び出されたクレイスはそのような話を持ち出されたので酷く混乱する。というのもショウに彼が黒威に手を染めた可能性と最大限に警戒するよう告げられていたからだ。
「・・・ありがとうございます。しかし『ビ=ダータ』の宿願となると『リングストン』、の件ですよね?」
「はい。我々は長い間祖国の地を奪われておりました。そして我が姉もネヴラディンに惨殺された。この怨嗟を晴らすには最低でも国王の首か王都陥落を引き換えにと考えていたのですが、どちらも別の力により簒奪されてしまいました。」
だがここで断るだけでは脳が無い。
わざわざ会談を持ち掛けてくれたのだから相手の情報を出来る限り引き出せないだろうか。王族の血に目覚め始めていたクレイスは感情を排除しつつ同情する素振りを見せながら彼の話に耳を傾ける。
「・・・アン様が補佐として滞在しているお話も聞いております。ガビアム様の心中もお察し致しますが今は動く時ではないかと。」
「そうなのです。まさかかの女王が『リングストン』に協力するとは・・・我々も無理を押し通すつもりはございません。しかしクレイス様、せめて彼女を何とか他国へ移す事は出来ませんか?」
途中その愚直な思考を逸らそうと何度か試みたが彼の中ではその道しか見えていないらしい。『黒威』や極秘である『リングストン』の内情を知っているからこそクレイスは大いに悩むが選択肢は多くない。
「・・・・・であればガビアム様、貴方がボトヴィ様に仲介したという『黒威』を扱う人物を紹介して頂けませんか?」
もちろん聡明な彼が隠し通せているとは考えていない筈だ。なのであえてここはその正体と関係を突き止める為に持ち出してみたのだがその時、何度か相対したことのある雰囲気がガビアムから感じ取れてしまった事でクレイスは静かに魔術での警戒も行う。
もしこの場にイルフォシア達がいれば余計な心配をかけていただろう。
2人だけの会談でよかったと安堵するクレイスは様子を見守り続けるとガビアムもしばしの熟考の後、やっと口を開く。
「・・・・・セイド様とお会いしてどうなさるおつもりですか?」
偽名かもしれないが一応その名前を刻み込むと今度はこちらが判断を迫られる。『黒威』については『七神』の元長であるティナマですらよくわかっていないらしいのですぐに討伐という訳にはいかないだろう。
「・・・・・『黒威』を人々に与えるのを止めて頂きます。」
なので答えも無難なものに収まった。というかこれ以上の知恵を持ち合わせていなかったというのが正しいか。
もしセイドという人物が『七神』であれば『天人族』か『魔人族』の筈だ。となれば戦って勝てるかどうか、最悪一方的に殺される程の実力差も考慮しておかねばなるまい。
「・・・わかりました。でしたら今度お見えになられた時には報告致します。かの御仁は大変気まぐれな方ですので。」
様々な人物の前にふらりと現れて黒威を渡すという行動は今も変わらないらしい。クレイスもこれ以上深入りする事は避けたかった為この日は素直に引き下がるが『黒威』を保持しているであろうガビアムの行動には注意すべきだと留意するのだった。
細かい事は気にしない性格なのだろう。アルヴィーヌがいつの間にか気を許し始め、初めてハジャルの鼻先を撫でさせてくれると答えに辿り着いたアナはやっと彼の墓前に立つ事が出来た。
本来仲間とは、友人とは損得で付き合うものではない。利よりも先に情で結ばれるからこそ尊く、大切なのだ。
それを彼らと黒い竜達の生活に触れ合う事でようやく掴んだアナはやっと後悔が芽生えるも向き合うにはまだ時間がかかるだろう。
フランシスカもその行動が答えだと受け取ってくれたのか、以降は少しだけ気楽に接してくれるようになったのだが残る黒威の問題については国家が動いていたのを彼女は知る由もない。
「クレイス様、もし我が『ビ=ダータ』の宿願にご助力頂けるのでしたら王位継承の件は全力で支援致します。」
丁度アナの気持ちに整理が付き始めた頃、ガビアムに呼び出されたクレイスはそのような話を持ち出されたので酷く混乱する。というのもショウに彼が黒威に手を染めた可能性と最大限に警戒するよう告げられていたからだ。
「・・・ありがとうございます。しかし『ビ=ダータ』の宿願となると『リングストン』、の件ですよね?」
「はい。我々は長い間祖国の地を奪われておりました。そして我が姉もネヴラディンに惨殺された。この怨嗟を晴らすには最低でも国王の首か王都陥落を引き換えにと考えていたのですが、どちらも別の力により簒奪されてしまいました。」
だがここで断るだけでは脳が無い。
わざわざ会談を持ち掛けてくれたのだから相手の情報を出来る限り引き出せないだろうか。王族の血に目覚め始めていたクレイスは感情を排除しつつ同情する素振りを見せながら彼の話に耳を傾ける。
「・・・アン様が補佐として滞在しているお話も聞いております。ガビアム様の心中もお察し致しますが今は動く時ではないかと。」
「そうなのです。まさかかの女王が『リングストン』に協力するとは・・・我々も無理を押し通すつもりはございません。しかしクレイス様、せめて彼女を何とか他国へ移す事は出来ませんか?」
途中その愚直な思考を逸らそうと何度か試みたが彼の中ではその道しか見えていないらしい。『黒威』や極秘である『リングストン』の内情を知っているからこそクレイスは大いに悩むが選択肢は多くない。
「・・・・・であればガビアム様、貴方がボトヴィ様に仲介したという『黒威』を扱う人物を紹介して頂けませんか?」
もちろん聡明な彼が隠し通せているとは考えていない筈だ。なのであえてここはその正体と関係を突き止める為に持ち出してみたのだがその時、何度か相対したことのある雰囲気がガビアムから感じ取れてしまった事でクレイスは静かに魔術での警戒も行う。
もしこの場にイルフォシア達がいれば余計な心配をかけていただろう。
2人だけの会談でよかったと安堵するクレイスは様子を見守り続けるとガビアムもしばしの熟考の後、やっと口を開く。
「・・・・・セイド様とお会いしてどうなさるおつもりですか?」
偽名かもしれないが一応その名前を刻み込むと今度はこちらが判断を迫られる。『黒威』については『七神』の元長であるティナマですらよくわかっていないらしいのですぐに討伐という訳にはいかないだろう。
「・・・・・『黒威』を人々に与えるのを止めて頂きます。」
なので答えも無難なものに収まった。というかこれ以上の知恵を持ち合わせていなかったというのが正しいか。
もしセイドという人物が『七神』であれば『天人族』か『魔人族』の筈だ。となれば戦って勝てるかどうか、最悪一方的に殺される程の実力差も考慮しておかねばなるまい。
「・・・わかりました。でしたら今度お見えになられた時には報告致します。かの御仁は大変気まぐれな方ですので。」
様々な人物の前にふらりと現れて黒威を渡すという行動は今も変わらないらしい。クレイスもこれ以上深入りする事は避けたかった為この日は素直に引き下がるが『黒威』を保持しているであろうガビアムの行動には注意すべきだと留意するのだった。
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