闇を統べる者
王道 -破滅へ続く道-⑩
「おし、んじゃ今度は俺が直接やり取りしてやる。」
冗談ではない。ただでさえ義足の青年は恐怖と憎悪の対象として深層心理に君臨しているというのにやり取り等を強いられたら今度こそ心が壊れてしまう。
しかしそれを直接伝えるのさえも憚られたアナは慌てて首を横に振るのが精いっぱいだ。
「黒い竜達はアルヴィーヌ様から許しを得て御世話をさせてもらってるんだ。なのにハジャルを怪我させてしまった。恐らく俺は処刑されるだろう。だったらその前にお前ら全員道連れにしてやるって考えるのは当然だろ?アサドとの約束もあるしな?」
こんな時はどうすればいいのだ?まるで襲ってきそうな気配を感じてただ怯えるしかなかったのだが相手も両脚がない。
であれば体を許すような素振りを見せてまず義足を外させる。それから隙を見て全力で逃げられないだろうか?いや、そもそもここが何処かかもわからないのに飛び出しても部屋の外で捕らえられるだけか?
一先ず警戒だけは高めて身構えるもフランシスカはリリーが座っていた椅子に腰を下ろすと徐に手の平を差し出す。
「なぁお前、何でボトヴィって奴を放ったらかして逃げたんだ?仲間だろ?それとも薄情なだけか?あいつの奴隷とか?」
しかし義足の青年は襲ってくるどころか先程以上に平穏な雰囲気を漂わせながら意外な質問を投げかけてきたので心身が硬直してしまった。
それは態度が豹変したからではない。考えたくなかった内容に触れられてしまったからだ。
これは尋問なのか。だったら素直に吐露した方が酷い目に合わずに済むのか。無意識に人差し指だけを立てていたものの若干震えてしまい、彼の手の平で動く気配はない。
「・・・わかった。また答えられるようになったら教えてくれ。」
義足の青年も様子を見かねたのか、いつまで経っても動かないアナに軽く答えるとこちらもゆっくりと手を膝の上に戻す。
そうだ。自分はボトヴィを見殺しにしてしまった。にも拘らず一緒に死ぬことも、仇を討とうともせず逃げ出してしまったのだ。
第三者がしっかり検分してくれれば独力で戦えないアナの行動を擁護してくれるかもしれないが、そんな事で心が癒される事も慰められる事もない。
故に自分でも納得の行く答えが欲しかったのだろう。またしても本能に似た部分が彼の手首を無理矢理掴んで机の上に持ち上げるともう一度人差し指を近づける。
何故自分が逃げてしまったのか。何故ボトヴィが亡くなったというのにこんなにも悲しみを感じられないのか。
その答えは確かに存在するはずなのに盲目だった彼女が辿り着く事は無く、しばらくしてリリーが戻ってくると異変を感じたのだろう。扉の前で立ち尽くしてこちらの様子を窺った後、客人を部屋に案内してくれた。
冗談ではない。ただでさえ義足の青年は恐怖と憎悪の対象として深層心理に君臨しているというのにやり取り等を強いられたら今度こそ心が壊れてしまう。
しかしそれを直接伝えるのさえも憚られたアナは慌てて首を横に振るのが精いっぱいだ。
「黒い竜達はアルヴィーヌ様から許しを得て御世話をさせてもらってるんだ。なのにハジャルを怪我させてしまった。恐らく俺は処刑されるだろう。だったらその前にお前ら全員道連れにしてやるって考えるのは当然だろ?アサドとの約束もあるしな?」
こんな時はどうすればいいのだ?まるで襲ってきそうな気配を感じてただ怯えるしかなかったのだが相手も両脚がない。
であれば体を許すような素振りを見せてまず義足を外させる。それから隙を見て全力で逃げられないだろうか?いや、そもそもここが何処かかもわからないのに飛び出しても部屋の外で捕らえられるだけか?
一先ず警戒だけは高めて身構えるもフランシスカはリリーが座っていた椅子に腰を下ろすと徐に手の平を差し出す。
「なぁお前、何でボトヴィって奴を放ったらかして逃げたんだ?仲間だろ?それとも薄情なだけか?あいつの奴隷とか?」
しかし義足の青年は襲ってくるどころか先程以上に平穏な雰囲気を漂わせながら意外な質問を投げかけてきたので心身が硬直してしまった。
それは態度が豹変したからではない。考えたくなかった内容に触れられてしまったからだ。
これは尋問なのか。だったら素直に吐露した方が酷い目に合わずに済むのか。無意識に人差し指だけを立てていたものの若干震えてしまい、彼の手の平で動く気配はない。
「・・・わかった。また答えられるようになったら教えてくれ。」
義足の青年も様子を見かねたのか、いつまで経っても動かないアナに軽く答えるとこちらもゆっくりと手を膝の上に戻す。
そうだ。自分はボトヴィを見殺しにしてしまった。にも拘らず一緒に死ぬことも、仇を討とうともせず逃げ出してしまったのだ。
第三者がしっかり検分してくれれば独力で戦えないアナの行動を擁護してくれるかもしれないが、そんな事で心が癒される事も慰められる事もない。
故に自分でも納得の行く答えが欲しかったのだろう。またしても本能に似た部分が彼の手首を無理矢理掴んで机の上に持ち上げるともう一度人差し指を近づける。
何故自分が逃げてしまったのか。何故ボトヴィが亡くなったというのにこんなにも悲しみを感じられないのか。
その答えは確かに存在するはずなのに盲目だった彼女が辿り着く事は無く、しばらくしてリリーが戻ってくると異変を感じたのだろう。扉の前で立ち尽くしてこちらの様子を窺った後、客人を部屋に案内してくれた。
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