闇を統べる者

吉岡我龍

王道 -破滅へ続く道-①

 何となくだが自分の相棒はハジャルになりそうな気がする。
『アデルハイド』で暮らし始めたフランシスカは故郷と違う環境と季節の中、初めて豊作の祭りというものに参加しながら感じていた。
というのも彼はやや小柄な体格なのを活かした旋回能力がとても高いのだ。
自身も地上ではバッタのように飛び跳ねて攻撃する為、それを中空で活かすのなら小回りの利く彼が欲しい。そんな思いから少しずつ距離を縮めていたのだがそれは別の方向にも影響があったらしい。

「フランシスカよ。少し相談があるのだが。」

「うん?何だ?」
アサドとも打ち解けていたフランシスカは杯を片手に大柄な友人の話に耳を傾ける。するとその内容は彼以上に悩ましい内容だった。
「実は隣国『ビ=ダータ』にどうしても討ちたい人間がいる。これを達成する妙案はないだろうか?」
「物騒だな~。でもお前がそんな事を言うってことは何か怨恨でもあるのか?」
「うむ。その男に同胞を殺されている。我が王は気にしていないようだが俺はどうしても仇を討ちたいのだ。」
相手は他国の優秀な戦士であり、もし敵討ちを敢行すれば国家間の問題になるのは明白だ。
それをわかっているからこそ相談してくれたのだろう。協力してやりたいのは山々だがこればかりは難問過ぎてアルヴィーヌのように大きく小首を傾げてしまう。

「う~ん・・・・・難しいな。相手から仕掛けてくれれば大義名分も立ちそうだけど俺もそんな知恵は持ち合わせていないんだよなぁ。」

「そうか。いや、すまんな。今の話は忘れてくれ。」
彼は見かけによらず気を遣い、頭も切れるほうだが我慢強さや切り替えはどうだろう。何人の仲間がやられたのかはわからないが『アデルハイド』での交友関係は決して広くはない筈だ。打ち明けられるのは恐らく自分やプレオスくらいか?
そう考えると益々力になれないかと悩むがここは異国なので何一つ使えそうな要素がない。せめてアサドが『ネ=ウィン』所属ならと妄想してみても内政に重きを置く今の母国ではやはり難しいか。

「・・・そいつの名前はわかるか?」

「む?確かボトヴィと言ったか。何か策があるのか?」
「いや、もし俺が相対した場合、お前の代わりに仇を討ってもいいかなって思ったんだけどどうだ?それじゃ気は収まらないか?」
「いいや。お前になら十分任せられる。その時が来れば頼む。」
それでも戦闘国家である以上戦う機会は自分の方が多い筈だ。この2か月ほどですっかりお互いを認め合っていた2人はそう誓うと杯を酌み交わす。
それにしても獅子族を倒す戦士とはどのような者なのか。
カズキ程ではないにしても戦いに誇りと興味を多分に持つフランシスカは少しだけ高揚を覚えつつ祭りを終えたのだがボトヴィとの邂逅は思っていた以上に早く訪れるのだった。

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品