闇を統べる者

吉岡我龍

王道 -破格の歩む道は-⑪

 「うわわっ?!どいつもこいつも力強いな?!」
彼らもフランシスカが不自由なのを察したのか、それぞれが襟足を咥えてはひょいと自分の頭上に乗せて自己紹介をしている。
初めての人間を相手にこうも心を開いているのはやはりアルヴィーヌの情操教育がしっかりと行き届いているからだろう。それが本当の我が子のように嬉しくて、胸の奥では恋心よりも先に親心が芽生えてしまう。
といってもそれに気づく事はなく、カズキらと微笑みながらその光景を眺めていると一頭だけフランシスカを避けるような竜がいた。
「おいアルヴィーヌ、あいつって何だ?」
「ああ、あの子はハジャル。ちょっと大人しい性格なんだけど・・・人見知りもあるみたい?」
いつも同じ人間としか接していない為警戒するのは当然なのだが初めて見せる様子にアサドやプレオスも心配そうだ。しかしフランシスカの目にも留まったらしい。義足でぎこちなく近づいても距離を取られたことで彼はある決心をする。

「アルヴィーヌ様、俺も今日からこの牧場で働かせてもらってもいいですか?」

あまりにも意外な提案に周囲も唖然としたがここは責任者であるアルヴィーヌが毅然とした対応を見せねばならない場面だろう。
「どうして?あなたは自分の脚になる子を探してるんでしょ?それに御世話は私とアサドがやってるし。」
「いえ、突然やって来た人間に『はい、この竜が今日から俺の相棒です』っていうのもなんか違うなって、あの子を見てて感じたんです。」
そういいながら指を刺したのはやはりハジャルだ。
「どうやら彼らはかなり知性があるようで。だったらまず距離を近づけたい。文字通り俺の脚となって貰うんだからまずはお互いの事を良く知ってもらって、それから選びたいし選んで欲しいと思ったんです。」 
「いいんじゃねぇか?どうせ『アデルハイド』に滞在するんだ。時間はたっぷりあるだろ?」
またカズキは余計な口出しをして。オンプの頭を撫でながら軽く提案してきた事に若干の苛立ちを覚えるもフランシスカの言っている事自体にはとても納得がいく。

「・・・ま、いいか。私もヴァッツと一緒にいる時間を多めに取ってて少し人手不足気味だったし。」

だが彼らの御世話とは護る意味も含まれており、ここは彼の強さも知っておく必要があるだろう。そこで軽い立ち合い稽古の話になるとやっぱり自分が相手をすると言い出したのでアルヴィーヌはオンプにカズキと散歩してくるよう促すのだった。

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品