闇を統べる者

吉岡我龍

王道 -破格の歩む道は-⑩

 「さて、どの子がいいかな?」

『トリスト』に帰る途中『アデルハイド』に寄ったアルヴィーヌは早速フランシスカを連れて牧草地へと向かう。
提案した手前、責任も感じているのだろう。カズキにプレオスも同乗した馬車はゆるやかに目的地へ入ると中にアルヴィーヌが乗っていたのにすぐ気が付いたのか、黒い竜達が甘えた声を上げながら近づいて来た。
「・・・アルヴィーヌ様、今更ですが本当に貸与して頂いてもよろしいのでしょうか?」
「おい?!ここまで来て何言ってんだ?!」
そんな様子を車内から見て思う所があったらしい。フランシスカが申し訳なさそうな様子で尋ねてきたのだからアルヴィーヌも驚く。
「それじゃやめとく?」

「い、いえ。本心ではとても欲しいです。ただ、俺も戦士ですから恐らくこの先黒い竜を駆って戦いに赴く事になるでしょう。そうなると彼らも危険に晒してしまいます。それを許していただけますか?」

これには隣に座るプレオスも深く頷いている。自身もあまり考えた事がなかったのは既にカズキやクレイスが彼らを連れて戦っていたからであり、改めて問われるとおもむろに腕を組んで考えてる風を装ってみた。
「・・・・・う~~~~ん。カズキはどう思う?」
「俺に聞くのかよ。そうだな、俺はオンプを大切な相棒だと思ってる。だから飛空状態での足場っていう意味では全力で頼るし何かあれば全力で護る、もしくは逃がすつもりで戦ってる。」
「な、なるほど。流石だな。」
何が流石なのか。それは当たり前というのだ。黒い竜達は自分達の我儘に付き合ってくれている。それを忘れなければ自ずと辿り着く答えだというのに。
フランセルの兄という事で少し期待していたが似ていない兄妹らしい。自分とイルフォシアはよく似ているのにと思いながらいつもの広場に到着すると早速可愛い子達が大きな頭を擦り付けてくる盛大な出迎えを受ける。
「おおっ?!本当に人懐っこいですね?!」
「アルヴィーヌが甲斐甲斐しく世話をしているからな。」
そこに獅子族という異形の種族が現れるとフランシスカだけはあっけに取られっぱなしだ。

「それじゃはじめよっか。フランシスカのお友達選び。」

しかし圧倒されてばかりでは何の為にやってきたのかわからない。アルヴィーヌは黒い竜達を大きな輪のように整列させると早速フランシスカに挨拶を促すのだった。

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