闇を統べる者
王道 -破格の歩む道は-⑧
「なぁアルヴィーヌ、ちと頼みがあるんだが」
「駄目、お断り。」
絶対に碌でもない内容なのは決まっている。過去に何度も立ち合いを申し込まれていた記憶から更なる反射で断ると周囲は目を丸くしていた。
「おいおいアル、あのカズキが珍しく畏まってるんだ。話を聞いてやるくらいはいいんじゃないのか?」
まるでわかっていない。リリーが小声で囁いて来ると余計に腹の立ったアルヴィーヌは頬を膨らませて隣の席に座るヴァッツに抱き着く。
「ヴァッツ、カズキとリリーが私の嫌がる事を無理矢理押し付けてくる。何とかして。」
「えぇぇ・・・・・まだ嫌な事かどうかわからないよね?」
「わかる。カズキは暇さえあればいっつも私と立ち会えってしつこく迫ってきてた。これを夫として見過ごしてはいけない。」
その発言から同席していた4将達も呆れたりカズキを白い目で見たりとしていたがこの仲裁に入ったのは他でもないネクトニウスだ。
「ふむ。ではどうだろう。一先ずカズキの話を聞いてみる。もしアルヴィーヌ様が不快に思われたら4将の地位を剥奪、更に国外追放にしようじゃないか。どうかね?」
「父上???」
身分を全く気にしないアルヴィーヌからすれば処罰の軽重を判断しかねたがナイルが珍しい表情と声色を出した事でそれなりの内容なのだと読むことは出来た。
「わかった。いいよ、カズキの頼み、聞いてあげる。」
「えぇぇぇぇ・・・そ、そこまでの条件を付けられると話しにくくて仕方がないんだが・・・すみません、もしアルヴィーヌの機嫌を損ねたら許して下さい。」
「ちょっと?謝るのなら私にでしょ?」
ナイルの推薦を受けて4将になった事情を知らなかったので最初に皇太子に向かって頭を下げたのが気に入らなかったのか、フランセルが拗ねた様子で迫っていたのだから晩餐会は再び混迷に陥る。
「で?カズキの頼み事って何なの?アルヴィーヌにでしょ?珍しいね?」
そこに今度はアルヴィーヌを抱きしめながらヴァッツが尋ねるといよいよその内容が明かされたのだがそれには嫌悪を忘れる程の驚愕を覚えた。
「あ、ああ。実は黒い竜の一頭をフランシスカに譲ってやってくれないか?って話なんだが。」
「おい?!また相談も無く勝手な事を言いやがって?!アルヴィーヌ様の御機嫌を損ねたら4将が剥奪されるんだぞ?!あ、アルヴィーヌ様、俺は大丈夫です。そんな事思った事も考えた事もないので今の話は忘れて下さい。」
考えるより本能で生きてきた彼女だからこそすぐに理解する。確かにフランシスカは先の『ジグラト戦争』により両脚を失っていた。
となれば移動手段として何かしらを求めるのは至極真っ当だろう。ただ2人のやりとりからこれはカズキの独断だったらしい。フランシスカも彼が4将から外れるのを恐れて速やかに断りを入れてきたのだが彼らの気持ちを汲み取れない程子供ではないのだ。
「いいよ。でもあの子達を他所に持ち込みたくないからフランシスカだっけ?あなたが『アデルハイド』に来るのが条件かな。」
故に譲歩案という訳ではないがこちらも最低限の条件を伝えると周囲は口を開ける程驚く。ただし抱きしめていたヴァッツだけは喜びを感じていたのだろう。その腕から優しいぬくもりが伝わってくるとアルヴィーヌも自然と笑顔が漏れていた。
「駄目、お断り。」
絶対に碌でもない内容なのは決まっている。過去に何度も立ち合いを申し込まれていた記憶から更なる反射で断ると周囲は目を丸くしていた。
「おいおいアル、あのカズキが珍しく畏まってるんだ。話を聞いてやるくらいはいいんじゃないのか?」
まるでわかっていない。リリーが小声で囁いて来ると余計に腹の立ったアルヴィーヌは頬を膨らませて隣の席に座るヴァッツに抱き着く。
「ヴァッツ、カズキとリリーが私の嫌がる事を無理矢理押し付けてくる。何とかして。」
「えぇぇ・・・・・まだ嫌な事かどうかわからないよね?」
「わかる。カズキは暇さえあればいっつも私と立ち会えってしつこく迫ってきてた。これを夫として見過ごしてはいけない。」
その発言から同席していた4将達も呆れたりカズキを白い目で見たりとしていたがこの仲裁に入ったのは他でもないネクトニウスだ。
「ふむ。ではどうだろう。一先ずカズキの話を聞いてみる。もしアルヴィーヌ様が不快に思われたら4将の地位を剥奪、更に国外追放にしようじゃないか。どうかね?」
「父上???」
身分を全く気にしないアルヴィーヌからすれば処罰の軽重を判断しかねたがナイルが珍しい表情と声色を出した事でそれなりの内容なのだと読むことは出来た。
「わかった。いいよ、カズキの頼み、聞いてあげる。」
「えぇぇぇぇ・・・そ、そこまでの条件を付けられると話しにくくて仕方がないんだが・・・すみません、もしアルヴィーヌの機嫌を損ねたら許して下さい。」
「ちょっと?謝るのなら私にでしょ?」
ナイルの推薦を受けて4将になった事情を知らなかったので最初に皇太子に向かって頭を下げたのが気に入らなかったのか、フランセルが拗ねた様子で迫っていたのだから晩餐会は再び混迷に陥る。
「で?カズキの頼み事って何なの?アルヴィーヌにでしょ?珍しいね?」
そこに今度はアルヴィーヌを抱きしめながらヴァッツが尋ねるといよいよその内容が明かされたのだがそれには嫌悪を忘れる程の驚愕を覚えた。
「あ、ああ。実は黒い竜の一頭をフランシスカに譲ってやってくれないか?って話なんだが。」
「おい?!また相談も無く勝手な事を言いやがって?!アルヴィーヌ様の御機嫌を損ねたら4将が剥奪されるんだぞ?!あ、アルヴィーヌ様、俺は大丈夫です。そんな事思った事も考えた事もないので今の話は忘れて下さい。」
考えるより本能で生きてきた彼女だからこそすぐに理解する。確かにフランシスカは先の『ジグラト戦争』により両脚を失っていた。
となれば移動手段として何かしらを求めるのは至極真っ当だろう。ただ2人のやりとりからこれはカズキの独断だったらしい。フランシスカも彼が4将から外れるのを恐れて速やかに断りを入れてきたのだが彼らの気持ちを汲み取れない程子供ではないのだ。
「いいよ。でもあの子達を他所に持ち込みたくないからフランシスカだっけ?あなたが『アデルハイド』に来るのが条件かな。」
故に譲歩案という訳ではないがこちらも最低限の条件を伝えると周囲は口を開ける程驚く。ただし抱きしめていたヴァッツだけは喜びを感じていたのだろう。その腕から優しいぬくもりが伝わってくるとアルヴィーヌも自然と笑顔が漏れていた。
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