ジェネレーション・ストラグル〜6日間革命〜
6日目(18)―見識と品格
龍馬は団の激昂の後しばらく間を置き、対照的にいたって冷静に返した。
「――たしかに、あなた方の世代が成し遂げた経済成長は、世界に誇るこの国の奇跡だった。しかも、その奇跡は間違いなく日本史上最も人口ボリュームのあるあなた方、団塊の世代なしには成し得なかった。これは、まぎれもない真実だ」
龍馬は、一瞬だけ間をとると続けた。
「そう、政治と同じで数は力なんです。使い方によっては奇跡も起こすが、時に暴力にもなる。だから、あえて言わせていただきます。力を持つ世代こそ、その力を行使する際には『見識』と『品格』を持っていただきたいんです」
「見識と品格だぁ? 説教するつもりか!」
「――えぇ、説教してるんですよ! 総理、さっきから何をキレてらっしゃるんですか?」
団は、思わず口ごもった。図星だったからだ。
「日本国総理ともあろう方が、たかがテロリスト風情にキレてどうするんだ!」
団は、苦虫を噛み潰したように口を閉じた。
「話を戻します。なぜ、数の力を持つ世代こそ、その判断に『見識』と『品格』を持つべきなのか? 簡単な話です。これも子供の頃、教わりませんでしたか? 強い者こそ、弱い者の立場に立って考えなさい。今の10代は、政治的には圧倒的に弱者だ。選挙権のない17歳以下に至っては、投票行動すらできない。それはつまり、政治的に声がないのと一緒だ。我々はシルバーポリティクスを否定しない。それが民主主義だからだ。しかし、我々は政治的に力を有する高齢世代に対し、『自分さえよければいい』というエゴではなく、この国の未来も見渡す『見識』と年長者としての『品格』を持って、その力を行使していただきたいんです」
「そ、そんなのは、当たり前だ。それこそ、テロリスト風情がエラそ――」
「――我々が、なぜ10代の若者ばかりを人質に取ったとお思いですか?」
「そんなもん知らん! 貴様らがやったことだろう!」
「それは、政府や公権力がどれだけ10代の若者の命を重んじるか、あるいは軽んじるかを見極めたかったからです。残念ながら、政府や警察の対応は10代の人命を尊重しているようには到底思えなかった!」
「何を言ってる! そもそも、監禁したのは貴様らだろう!」
「こうでもしないと、10代の声は届かないと思ったからだ! 現にこうして、今! 我々は国政の代表者たるあなたと対話できている!」
「ならば、目的は達したということだろ? 早く人質を――」
「――対話はまだ終わってない!」
龍馬は、鋭く言葉で遮った。
「なに長くはなりませんよ。我々は、これから団総理に最後の訴えをしたい」
「……訴え、だ?」
「団総理、我々がこれから話す議題を今国会でご議論いただきたい」
ここで団は、初めて政治的な要求が来たなと身構えた。
「……承服しかねる」
「そうですか……やはり44名の10代の命など、総理にとってはどうでもいいことのようですね? わかりました。では、対話はここで――」
「――ちょ、ちょっと待て! わかった! わかった! まずは話を聞こう」
先程までキレていた団だったが、この龍馬の発言には大いに焦った。わかっていたことだが、44名の命が自らの発言ひとつで左右されるのはかなり心臓に悪い。
――団は、額に汗がじんわり伝うのを感じた。
「――たしかに、あなた方の世代が成し遂げた経済成長は、世界に誇るこの国の奇跡だった。しかも、その奇跡は間違いなく日本史上最も人口ボリュームのあるあなた方、団塊の世代なしには成し得なかった。これは、まぎれもない真実だ」
龍馬は、一瞬だけ間をとると続けた。
「そう、政治と同じで数は力なんです。使い方によっては奇跡も起こすが、時に暴力にもなる。だから、あえて言わせていただきます。力を持つ世代こそ、その力を行使する際には『見識』と『品格』を持っていただきたいんです」
「見識と品格だぁ? 説教するつもりか!」
「――えぇ、説教してるんですよ! 総理、さっきから何をキレてらっしゃるんですか?」
団は、思わず口ごもった。図星だったからだ。
「日本国総理ともあろう方が、たかがテロリスト風情にキレてどうするんだ!」
団は、苦虫を噛み潰したように口を閉じた。
「話を戻します。なぜ、数の力を持つ世代こそ、その判断に『見識』と『品格』を持つべきなのか? 簡単な話です。これも子供の頃、教わりませんでしたか? 強い者こそ、弱い者の立場に立って考えなさい。今の10代は、政治的には圧倒的に弱者だ。選挙権のない17歳以下に至っては、投票行動すらできない。それはつまり、政治的に声がないのと一緒だ。我々はシルバーポリティクスを否定しない。それが民主主義だからだ。しかし、我々は政治的に力を有する高齢世代に対し、『自分さえよければいい』というエゴではなく、この国の未来も見渡す『見識』と年長者としての『品格』を持って、その力を行使していただきたいんです」
「そ、そんなのは、当たり前だ。それこそ、テロリスト風情がエラそ――」
「――我々が、なぜ10代の若者ばかりを人質に取ったとお思いですか?」
「そんなもん知らん! 貴様らがやったことだろう!」
「それは、政府や公権力がどれだけ10代の若者の命を重んじるか、あるいは軽んじるかを見極めたかったからです。残念ながら、政府や警察の対応は10代の人命を尊重しているようには到底思えなかった!」
「何を言ってる! そもそも、監禁したのは貴様らだろう!」
「こうでもしないと、10代の声は届かないと思ったからだ! 現にこうして、今! 我々は国政の代表者たるあなたと対話できている!」
「ならば、目的は達したということだろ? 早く人質を――」
「――対話はまだ終わってない!」
龍馬は、鋭く言葉で遮った。
「なに長くはなりませんよ。我々は、これから団総理に最後の訴えをしたい」
「……訴え、だ?」
「団総理、我々がこれから話す議題を今国会でご議論いただきたい」
ここで団は、初めて政治的な要求が来たなと身構えた。
「……承服しかねる」
「そうですか……やはり44名の10代の命など、総理にとってはどうでもいいことのようですね? わかりました。では、対話はここで――」
「――ちょ、ちょっと待て! わかった! わかった! まずは話を聞こう」
先程までキレていた団だったが、この龍馬の発言には大いに焦った。わかっていたことだが、44名の命が自らの発言ひとつで左右されるのはかなり心臓に悪い。
――団は、額に汗がじんわり伝うのを感じた。
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