ジェネレーション・ストラグル〜6日間革命〜
3日目(8)―ブレイキング・ニュース
龍馬、碧、東海林、桐生の4人は、夕方遅く、再び龍馬の家に集った。
全員、昨晩に続き2日連続の龍馬の家につき、勝手知ったるで各自冷蔵庫から自分で好きな飲み物を取り出すと、リラックスした様子でひとつのちゃぶ台を囲んだ。龍馬と碧だけが学校帰りで制服を着ており、別行動で各々のミッションをこなしてきた桐生と東海林は私服姿だった。
集まった理由は、互いの今日の成果を共有するためだった。
最初に、先ほど地元から急行列車で帰ったばかりの桐生が話の口火を切った。
「じゃあ、俺から報告いいか?」
残りの3人がうなずく。
「結論から言うと、火薬20キロが手に入った。打ち上げ花火に使われる、いわゆる黒色火薬というものだ。あとちょっとしたおまけもな」
そう言って、桐生はリュックから「黒色小粒火薬 5キロ」書かれた紙袋をひとつだけ取り出すちゃぶ台の上にぽんと置いた。
「正直、あっけないくらい簡単に手に入った。話してた通り、親戚の工場はすでに廃業しているからセキュリティも甘くてな。そもそも、誰も工場にいなかった。もっと言うと、火薬の貯蔵庫にすら鍵をかけていなかった。おそらく、火薬が取られたことにもまったく気づいてないと思う。親戚として逆にちょっと心配になったくらいだ」
すると、ちゃぶ台に置かれた火薬を見つめながら東海林が言った。
「本当に本物の火薬、手に入れてくるなんて……でも、本物はヤバいというか危険というか……一応、しまってくんない?」
よく見ると、東海林はかなり及び腰になっている。
「ま、たしかに無造作にちゃぶ台に置いとく代物じゃねえな」
そう言うと、桐生は再びリュックの中に火薬をしまい、部屋の角に置いた。
東海林はそれを見て安堵した様子で、言葉を引き継いだ。
「じゃ、続いて俺の報告も――」
そして、手にしていたノートパソコンを開き、そのモニターを3人に見せた。
「――こんな感じ!」
そこには、全国生徒会会議の会場となる区立ハーバースクエアの見取り図が表示されていた。しかも、3Dのグラフィカルな描画で、地下1階から地上5階まで、各会議室や階段、エレベーターの配置はもちろん、窓の位置や防火扉までこと細かに立体的に書きこまれており非常にわかりやすかった。
「ここまでのレベルのものを、いつの間に?」
龍馬が尋ねると、
「あぁ、メモったり写真撮ったりして頭の中に入れた見取り図をさ、3D描画ソフト使って再現しただけだよ。俺さ、趣味でちょっとした3Dのゲームとかも作ってるからさ、このレベルなら楽勝だよ」
「すげえなぁ、こんなのが簡単にできるのか?」
完全、体育会系の桐生も驚いた様子で尋ねた。
「ゲームに比べたら、なんてことないって」
東海林は、こともなげに応える。
「でも、どうしてこんな精緻《せいち》な下見ができたわけ? 設計図でも手に入れたみたいじゃない」
碧が尋ねた。
「一階の守衛にさ『2日後にお世話になる全国生徒会会議の実行委員の者ですが、下見いいですか?』って聞いたら『はいはいご自由にどうぞ』ってそれだけ。ぶっちゃけ見放題だった。いかにもやる気のないじいさんだったから、当日もあの守衛なら色々やりやすいかもね」
守衛がザルだったとはいえ、東海林の精密な下見を珍しく碧も評価した。
「そう……なかなかやるじゃない」
「じゃあ、俺と碧の報告なんだが――」
続いて、龍馬が話し始めようとすると、
「――ねえ、聞いて! 私、今日、人生最大のセクハラをそこの龍馬から受けたんだけどー!」
碧が鋭く割って入り、とんでもないことを言い出す。
「おいおい、誤解を与えるような言い方すんなって! 散々、謝っただろ? あれは不可抗力だったんだって」
「不可抗力じゃないわよ!」
と、そんなふたりの間に割って入るように東海林が言った。
「……ごめん、おふたりさん。エキサイトしてるとこ悪いんだけど、俺からの報告にはまだ続きがあるんだ」
「おぉ、そうだったのか。すまんすまん、続けてくれ」
龍馬は内心ほっとして、東海林に促した。すると東海林は、あっけないくらいにその重大な報告を告げた。
「返信が来たんだ――neosengoku39から」
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