ジェネレーション・ストラグル〜6日間革命〜

0o0【MITSUO】

3日目(5)―隠蔽

 30分後、龍馬は第二化学準備室ラボにいた。

 桐生の地元に向かう電車ではなく、だ。碧との電話の後、すぐに龍馬は桐生に連絡し火薬のことは一任した。それだけ、碧がこの件を重要だと龍馬に語ったからだ。

 テロを成功に導くまさに「鍵」になる、と。
 
 龍馬は、同じくその電話で碧からリクエストを受けた超小型のウェアラブルカメラを東海林から借りると、とにかく第二化学準備室ラボへと急いだ。そして到着するなり、息も整わないまま切り出した。

御影石陽斗みかげいし はるとは事故でなく……いじめを苦に自殺したって……本当か?」

「まさか走ってきたの? 汗だくじゃない」

 さすがに碧も、突如、息を切らし入ってきた龍馬に驚いたようだった。

「そんなことはいい……本当……なのか?」

「ええ、その通りよ。私の情報筋から裏は取れたわ」

 碧が自慢気に胸をはる。

「じゃ、御影石妙が言ってた陽斗の日記の記述はやはり本物――」

「――それだけじゃないわ! むしろ、ここからが重要なの。どうやら、その事実を校長と区の教育長が結託し隠蔽・・しようとしているらしいの」

「隠蔽!? それ本当なのか?」

「えぇ、そうよ」

「だとしたら……校長も教育長もクソだな、教育者の風上にも置けない!」

 龍馬の脳裏に、先日、妙を迷惑そうに振り払う校長の姿が浮かび、思わず怒りがこみ上げた。

「まったく、その通りよ。でね、考えたんだけど……今まさにあなたがいきどおったように、この件を広く世に訴えたら、かなりの支持・・・・・・が得られそうって思わない?」

「……ん? どういう意味だ?」

「いじめの事実を隠蔽する、悪しき校長と教育長に正義の鉄槌てっついを! これならマスコミもネット住民だってのりやすいでしょ?」

「碧、まさか……」

 龍馬は、碧の企みに気づいた。

「正直、いきなり社会保障や世代間格差の話をしてもねー、普通の人は食いつきづらいだろうなってずっと思ってたのよ。けどね、いじめを隠蔽する悪者をらしめるって話なら、誰にも腹落ちしやすい・・・・・・・・・・勧善懲悪かんぜんちょうあくの話になるでしょ?」

「つまり、まずこの隠蔽の件を世間に訴えることで世論を味方につけ、その後に俺たち本来の要求を行うってこと、か?」

「ご明察! つまりね、私たちの要求を二段構えにするの。第一の要求は、校長と教育長に対しいじめの隠蔽を認めさせ謝罪させること。第二の要求は、当初の構想通り総理とあなたとの直接対話を求めるの。そうやってあえて段階を踏むことで、より多くの国民の注目と賛同を得られるかたちに作戦を導くってこと」

「なるほど、二段構えか……確かにその方が注目を集められそうだな」

「フッ、私を誰だと思ってるの?」

 碧がいつもの台詞セリフで締めた一方で、龍馬はひとつ気になっていた根本的なことを尋ねた。

「ところで……さっき言ってた、碧の情報筋って……誰?」

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