ジェネレーション・ストラグル〜6日間革命〜
1日目(4)―タイムリーパー
龍馬と碧がつきあっていたのは、龍馬が米国留学していた大学2年の頃の話だ。
互いに、十代最後の年だった。
たまたまキャンパスで出会ったふたりは、かつて日本でも同じ高校に通っていた「偶然」を「必然」と感じ、やがて「運命」だと信じた(少なくとも、当時のふたりは信じていた)。
ふたりとも、それまでは夢中なるものが他にあって、正直、色恋に疎かった。だからこそ、初めて触れた恋の甘さに、瞬く間に溺れた。まあ、要するにウブだったのだ。
当時、碧は誰にでも好戦的で、特に男性にはそれが顕著だった。半分は、自分以外の人間は大概バカだと思っていたから。しかし、もう半分は、人づきあい、特に男性とのつきあいが苦手な自分を隠すための鎧だった。その鎧を龍馬がいち早く見抜いたことも、ふたりの距離を縮めるきっかけになった。
だから、龍馬はあらかじめ知っていたのだ。眼前のかつてのカノジョ(まだ出会う前だが)との会話でうかつに下手に出てはいけない、と。
むしろ強気に仕掛けることで、男性が苦手な碧を怯ませ、この困難な交渉を少しでも有利に進めたかった。話し方もできるだけ感情を押さえ、つとめて冷静に語ることを心がけた。碧は、冷静な押しに弱い。
「――嫉妬なんかするわけない。君は天才だ。それは認めている。その上で、相談したいことがある。端的に言えば、君のその天才的な頭脳を借りたい」
「えっ、なに? 超怪しいんだけど……」
碧が両手で自分の肩を抱き、龍馬から一歩距離を取った。
アレ? 冷静な押しに碧は弱いはず、だが……高校時代はちがうのか?
龍馬は、内心焦ったが、このままいくしかないとさらにまくし立てた。
「……具体的には、あるゲームに参加してほしいと思っている。その中身を語る前に、その前提となる話をまずさせてほしい。正直、きっと信じ難い話だ。だが、少なくとも君の知的好奇心は刺激できる話だとは思う。君がハマっている『謎解き』くらい、いやそれ以上にはね。もちろん、参加するかどうかのジャッジは、話を聞いた後で構わない」
龍馬は、一気にまくし立てた。ちなみに、碧が高校時代「謎解き」に凝っていたのは、後の彼女自身から聞いた話だったが、その場のアドリブで取り混ぜてみた。
「……えっ!? 私が最近『謎解き』ハマってるって、どこで知ったの? ま……まさか、私のことどっかで覗いてたの? スススス、ストーカ――!?」
碧は、もはや犯罪者でも見るような視線で龍馬を見ていた。よく見れば、その瞳に薄っすら涙まで浮かんでいる。
龍馬もさすがに動揺していた。おいおい、未来の碧とだいぶ違うんだが……。
「驚かせてしまったら、すまない。これには理由があるんだ」
龍馬は、それでも何とかつとめて冷静に語りかけた。
「理由ってなによ! ス、ストーカーに理由なんてあるわけ!?」
ついに碧は、スマホを取り出すと3桁のダイヤルをプッシュし耳にかざした!
「おい待て! まさか……警察!?」
龍馬は、急いで距離を詰めると、碧の手のスマホをつかむと110番に発信された通話を急いで切った。そして、暴れる碧の目を見て、気づくと叫んでいた。
「頼むから聞いてくれ! 俺は未来から来たんだ!!」
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