年下の上司

石田累

extra1 年下の元カレ(7)



「私の分」
「ああ」
 結局、ワリカンで清算を済ませる。デザートだけは、かろうじて奢らせてもらうことができた。
 とはいえ、肝心の本題には、触れられず仕舞いである。
 さて、どうするか。店を出た晃司は嘆息する。これ以上ひきとめる理由は何もない。
 その時、不意に果歩の視線が向けられた。
「煙草やめたの?」
「え? うん」
「そっか、よかった」
「………」
 果歩はうつむき、1人で微笑んでいるようだった。
 別に……今さら、俺が煙草やめようがどうしようが、関係ないと思うけど。
 それでも不思議な温かさを感じ、晃司は果歩を見下ろしている。
 優しげな目もとも、唇も、以前はなんのためらいもなく触れて、愛することができた。
 不思議な気がした。あれほど近かった人が、今は、一番遠い場所にいるような気がする。その距離は、多分、二度と縮まることはない。美早との関係がそうだったように。
 男と女って、儚ねぇな。
 同時に、ふと思っていた。俺、そもそも、どうして果歩とつきあうようになったんだっけ。
 この女を手に入れたら、どれだけ自身の昇進に有利だろう。そんな計算を感じたのは確かだった。美早より、絶対にいい相手を見つけてやる。そんな焦りも、間違いなくあった。
 でも、しょせん晃司には高嶺の花で、話すきっかけさえ見つけられなくて――それで。
「でも晃司が、そんなに須藤さんを好きだったなんて、知らなかったな」
 ぽつりと呟かれた声に、えっと、晃司は現実に引き戻されている。
 え? 今、なんつった?
 俺が、須藤のことが好きだって?
「……好きって……俺、そんなこと言ったっけ」
 どぎまぎしながら、晃司は答える。
「だって、そうじゃない。新しい彼女まで出来たのに、須藤さんのことが気になってるんでしょ。今日だって、彼女の様子が知りたくて、私を誘ったんじゃない」
「……? は?」
 一瞬唖然とした晃司は、すぐに果歩のとんでもない勘違いに気がついた。
 ち、ちが……それ、すげー誤解っていうか。
 須藤の様子を聞いたのは、職場イジメの真偽を確かめたかっただけで。
 てか、俺が気になってるのは、そもそも須藤の方じゃなくて。
「私が言うべきことでもないけど、それって、新しい彼女に対して失礼なんじゃない?」
「……………………」
「少しは、自嘲したほうがいいよ。余計なお世話だと思うけど」
 ……てか、こいつ…………。
 しばし、ぽかんと口を開けていた晃司は、やがて呆れと諦めと共に、顔を背けた。
 こいつ、実はバカなんじゃねぇのか??
 俺が須藤を好きだって? いったいどうやったらそんな結論にいきつくんだよ。
 苛立ちを抑え、あえて、そっけなく晃司は答える。
「まぁ、そりゃ、多少気にはなるよ。てか、人間として、気にならないほうがどうかしてるだろ」
 俺が気になってるのはお前なんだ。
 どうしてそれがわかんねーんだ。
「いっぺんでも……なんつーのかな、つきあった相手が、なんかこう辛そうだったら。……そりゃ、気になるよ。どうしたって」
 果歩が、驚いたように顔をあげる。
 ――伝わった、らしい。
 ほっとすると同時に、晃司は、すうっと顔が熱くなるのを感じた。
 そうだ、伝わったら伝わったで、かえって警戒されるかもしれない。
 まだ果歩に未練があると、そんな風に誤解されてはたまらない。
「いや、今のはさ。そんな深い」
 意味があって――と言いかけた時だった。
「須藤さんって、そんなに辛そうなの?」
「えっ?」
「そっか。そんなに……そんなに、深刻な状態だったんだ」
 …………はい?
 誤解の殻をますます厚くし、果歩は眉をひそめたまま、うつむいた。
「知らなかった……。それで藤堂さんも、あの子のことを気にかけていたのね」
「………………」
 だめだ。何も通じてねー。
 てか、通じさせる必要、そもそもないか。
 晃司は、嘆息してうつむいた。
「俺も、そこまでじっくり、須藤のこと観察してるわけじゃねぇから」
「じゃあ、よく見てきてよ。私じゃ、普段の様子まで判らないから」
 真剣な目で切り返される。
「え、見てきてって……俺が??」
「だって、晃司が言いだしたことじゃない」
 むっとした顔で見上げられる。
「お前も、よく分かんない女だな」
 さすがに呆れて晃司は言った。
 結局は2人で同じ方向に歩き、役所はもう目の前である。
「てっきり須藤のこと、恨んでるのかと思ったよ」
「それとこれとは……別の話よ」
 ますますむっとした目で、果歩は自身に言い聞かせるように天を睨む。
「藤堂さんのことはいいのよ。もう割り切ったんだから」
「ふぅん」
 そんな風には見えないけど。
「本当に今回はよく判った。男の人って、しょせん、若くて可愛くて、小悪魔みたいな女の子に弱いのね」
 何故かぎらっと睨み上げられ、晃司はぎょっと引いている。
「な、なんだよ、その端的な決め付けは」
「だって、その通りじゃない」
「その通り?」
「私こそ、親切で忠告するけど、彼女ができたなら、もう、そんなのに迷わされちゃだめだからね」
「はぁ??」
 何言ってんだ……こいつは。……
 が、今が、本題を切り出すチャンスでもあった。
 また、不愉快にさせるだろう。
 でも、どうせ、二度と2人で会うこともない。ひどいことした詫びの代わりに―― なればいいけど。
「あのさ……ひとつ、いい?」
「なによ」
「ちょい……きつい、言い方かもしんねーけど」
「だから、何よ」
「……須藤は」
 須藤は、俺や藤堂より、ある意味お前のことばかり見てるんだ。
 言いかえれば、お前に執着してるから、俺や藤堂に絡むんだ。
 そんなに、悪い奴じゃない。
 嫌がらせも不遜な態度も、多分コンプレックスの裏返しだ。
 あいつはさ、ああ見えて……結構、かわいそうで、一生懸命なとこがあるんだよ。……




 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・




「ごめん、遅くなった!」
 こんな大切な日に、なにやってんだ、俺。
 焦りながらドアの鍵を開けると、室内は静まり返っている。それでも部屋の中はいつになく温かで、どこか家庭の匂いがした。
「……的場さん?」
 電気はついたまま。机の上には、ラップがかけられた惣菜の皿が並べられている。
 ――帰ったのか……。
 そりゃ、そうだよな。もう午後11時を過ぎている。
 初めて部屋で会う約束をして、残業にかまけて忘れてましたとは、とても言えない。
 政策課に異動して、初めて任された巨大事業。その初回ヒアリングが、5時過ぎに急きょはいった。
 同時に、今夜は初めて、つきあいはじめて数週間になる恋人が、部屋に来てくれることになっていた。
(ごめん、ちょっと遅くなるかもしれない。でもそんなには待たせないから)
 そんな言い訳をしたのは自分なのに、それが、なんだかんだで11時。
 早く帰ろうと思えば、その機会はいくらでもあった。が、晃司はそうするより、先輩職員らとフリーでミーティングするほうを選んだ。
 せっかく掴んだチャンスを、絶対に逃がしたくなかったからだ。
 そういう意味では、忘れていたわけじゃない。だから、より悪質だ。
「…………」
 今夜は、2人の関係に、大きな変化が起こりそうな予感があった。
 先月、つきあってくださいと言ったのは晃司で、私でよければ、と答えてくれたのは果歩だった。が、今でも晃司は、どうして彼女があっさりOKしてくれたのかが判らない。
 自分でも焦りすぎた告白だったというのは判っていたし、なにしろ当の的場果歩から何一つそれらしい気配を感じたことがなかったからだ。
 今でも――正直、そういった空気はあまり感じない。
 晃司にしても、年上の女性とつきあうのは初めで、接し方はおろか、呼び方さえ判らない。それと、とにかく異動したばかりの仕事についていくのが必死で、ついつい「彼女」の存在を後回しにしてしまっていたのだ。
(――今度、前園さんの部屋に行ってもいいかな)
 果歩がそう切り出したのは、中途半端な今の関係をはっきりさせたいからだろうし、晃司もこのままではまずいと思っていた。
 その意味で、今夜はなにより大切な夜だったのだ。
「あ、帰ってた? おかえりなさい」
 ガチャッと、背後で扉が開いた。
 晃司はびっくりして振り返っている。
「ごめんね。ちょっとコンビニ行ってた。買い忘れたものがあったから」
 玄関で靴を脱ぐ果歩は、手にビニールの袋を提げている。
「こんな時間に?」
 まだいてくれた嬉しさより、こんな夜分に、女性が一人で外に出たことに驚いている。
「危ないだろ、何かあったら……。って、終電とかは、大丈夫なわけ?」
「うん……まぁ」
「駅まで送るよ。家の人が心配するだろ」
「………」
 口にしてようやく、晃司は、自分がひどく無神経なことを言ったのに気がついた。
 こんな時間まで待っていて暮れた人に「送る」って……、それはすぐ帰れと言ったも同然だ。
「平気よ。家にも電話したし、タクシーで帰れるから」
「……だったら、いいけど」
「おかず、あっためなおすから、座ってて」
 テーブルの上には、驚くほど沢山の皿が並んでいる。しかも、手のこんだものばかり。どれだけ時間がかかったのだろうと思うと、申し訳なくなって、晃司はつい言っていた。
「ここまで、大げさにしなくてもよかったのに」
「うん、……ごめんね。暇だったから作りすぎちゃった」
 いや、謝んなくても……。
 てか、今も俺、無神経なこと言った? もしかして。
「…………」
「…………」
 やべ、なんだ、この気づまりな沈黙は。
 ここは、もっとこう、気のきいたムードのあることを……。ああ、ダメだ、何も出ない。俺には女を喜ばせる才能がないのか?
 やがて食卓で向き合っても、案の定会話は弾まない。
 果歩は箸を置くと、意を決したように晃司に向き直った。 
「……あのね、前園さん」
「う、うん」
  あー、これは別れましょうだな。この空気、美早の時にも感じたやつだ。 
「……私、昔、結構ひどい失恋をして」
「……? ああ、うん」
 果歩は居住まいを正し、うつむいた状態で口を開いた。その表情が初めて見るような暗く、硬いものになっている。
「もう随分昔のことなんだけど、その時のショックがあまりに大きすぎて……なんていうか、トラウマ? とにかく、ずっと恋愛に臆病になってたの」
「……随分前って? 去年とか」
 思わずそう聞いたのは、その相手が同じ局にいる誰かだとしたら、まずいと思ったからだ。新人の立場で、余計な敵を作るのはちょっと困る。
「4年くらい……そのくらいは前になるかな。役所の人じゃないよ」
「へぇ……」
 言葉に出さず、晃司は内心驚いていた。そんな前のことを今でも引きずる?
 もっとドライな人だと思ってたけど――思ったより真面目というか、古風というか。
「引くでしょ、そんな話聞いたら」
「いや、まぁ別に」
「無理しなくていいよ。自分でも引いてるくらいだから」
 その時見せた笑い方がとても寂しげに見えたから、思わず彼女を抱き寄せたい衝動にかられている。
 一体どんな失恋の仕方をしたんだろう。不倫? まさかね。そういうタイプにはとても見えない。とはいえ不倫する女がどんなタイプかなんて、晃司にはよく判らないのだが。
 果歩は、そんな晃司の視線を遮るようにうつむいた。
「私、そんな自分をいい加減変えたかった。前園さんみたいなかっこいい彼氏ができたら幸せだろうなって思ったし、……正直に言うと、いいきっかけかなと思ったんだ」
「きっかけ?」
 こくん、と果歩は頷いた。
「過去を忘れるきっかけというか……つまり、そういう不純な動機で、前園さんとつきあうことに決めたの」
「…………」
「だから、……お互い無理して……これ以上続けるのもどうなのかなって」
 晃司は唖然としながら、ああ――とようやく果歩の話の流れを理解した。
 つまり別れを切り出すための前振りか。
 てか、そういうことだったんだ。だからあっさりOKされたのか。昔の男を忘れるために。
「ごめんね」
「いや……」
 どうだろう。言っては悪いが、俺だってそこは同じだ。
 彼女には色んな意味で引かれていたが、結構不純な動機ばかりだった。しかもその根底に結婚した美早を見返してやりたいとい気持ちがあったことも間違いない。
 ――似たもの同士……そう言っていいなら、そうなのかもしれないな。
「し、失礼な動機だよね」
「ま、まぁ、……だよな」この場合俺の方がだけど。
「…………」
「…………」
 なんて言ったらいいんだろう。
 つまり彼女は、今夜別れを言うために来たってことか。
 自分の本性を思い知らされた以上、それを引き留めるのは、余計に卑怯なような気がする。
「さめちゃったね」
「いいよ、別に」
 果歩は微笑して、手つかずの汁椀をトレーに乗せて立ち上がった。
「もうこんな時間だし、あっため直したら、私帰るね」
 そっか。
 ま、そうだよな。
 その方がいいんだよな。でもなんだろう。局の高嶺の花を落としたいとか、元カノを見返したいとか、確かに俺の動機は不純まみれだったけど、でも――でも、それだけじゃなくて。それだけでもなくて―― 
「きゃーーっっ」
「!!??」
 いきなり放たれた叫び声に、晃司はびっくりして立ち上がった。
 シンクの前では、的場果歩が口に手をあてて固まっている。
「な、なに?」
「ゴ、ゴキブリ」
「えっ?」
 綺麗好きの晃司にも、それは由々しき事態である。
「どこ」
「そこ!」
 玄関から箒を掴んで引き返した。目指すブツは、冷蔵庫脇の壁を這っている。
「こいつ」
「だめ、殺さないで!」
 振り上げた箒を掴まれる。晃司は面喰って、腕をつかむ果歩を見下ろした。
「殺すなって、俺んちで増殖するんだぞ」
「わかるけど……、逃がしてあげればいいじゃない」
「逃げた先の家で迷惑かけたらどうすんだ」
「まぁ、それはそうなんだけど」
 もじもじしつつも、果歩は台所の窓を開け放った。
「とにかく、外に出してみようよ。ね」
「そりゃ……、やるだけ、やってはみるけど」
 そんなにうまく、ゴキブリが誘導できるものか。
 半ば呆れながら、晃司は箒を振り上げた。
 当たらないように用心して、壁のあたりをばすん、と叩く。
 さーっと凄まじい速さで、ゴキブリが異動する。その速さにたじろいだ時、いきなり茶色の羽を広げ、黒い昆虫は飛び立った。
「うわぁっ」
「きゃーっっ」
 顔を背け、2人は同時に背後に飛び退き、もつれあって尻もちをついていた。
 飛ぶとは噂で知っていたが、実際に見たのは初めてだ。で、それがこんなに恐ろしい現象だとは思ってもみなかった。
 まるで、バイキンの塊が、いきなりばさばさっと襲いかかってきて、頭上から菌を撒き散らされたような感覚だ。
 目の前をかすめるように飛び立った茶褐色の塊は、そのまま、果歩が開けた窓の外に消えていった。
「逃げた……」
「よ、よかったね」
「ゴキブリって、本当に飛ぶんだな」
「初めて見た、私」
「俺も」
 互いの上半身が重なって、果歩の手が晃司の肩に触れている。自分の手も彼女の背中に回っていて、それがすごく自然のことのような雰囲気だった。
「……ごめん、重かった?」
「……いや」
 半身を起こそうとした果歩を止めるように腕に力を込めながら、直感的に、今しかないと思っていた。
 今、この腕を離したら、多分この人は二度と俺を振り向いてはくれない。
 今、この人を帰してしまったら、2人の人生は永遠に交わらない。
 心臓がドキドキしている。こんなに緊張するのは、どれくらいぶりだろう。
 唇が離れた後も、果歩はしばらく無言だった。
 晃司もまた、どうしていいか判らないまま、胸にしなだれかかる彼女の髪をなで続けていた。
 やばい、胸が苦しい。無茶な運動をした後みたいに動悸も激しい。この音も緊張も、2歳年上のこの人には、きっと全部見抜かれてるんだろう。
 てか、これで好きじゃないとか、――ないだろ、俺。
「……お、俺は好きだから」
 口にした後、みるみる顔が熱くなり、晃司は自分の目を手で覆った。
 ――は、恥ずかしい……。
 身を起こした彼女が、上から見下ろす気配を感じる。
 ますますいたたまれない気持ちになって、顔を手で隠したまま、晃司は顔を背けていた。
「……ま、的場さんがそうじゃなくても、俺は好きだし、……このままでいいと思ってる。もし、的場さんが嫌じゃなかったらだけど」
「うん……」
 果歩の身体から力が抜けるのがわかり、そのまま胸に頭が預けられる。
 どこかほっとした気持ちで、晃司はその背中に手を回してから抱き締めた。
 細い肩が、わずかに震えているのが判った。怖いんだ――そうだ、怖いって言ってたっけ。
 そう思うと、余計に愛しさがこみ上げる。
 果歩を抱いたままで身体の向きを入れ替えると、もう一度、そっと唇にキスをした。
「前園さん……」
 細い指が、しっかりとシャツを掴んでいる。
 そのまま――キスは、甘く、深みを増して。……


 
 *************************




 着信音で我に帰る。
 まずい、転寝してたんだ。まだ風呂にも入ってないってのに。
 起き上った晃司は、慌てて携帯電話を取り上げた。
 相手を確認せずに、とりあえず、出る。
「はい、前園」
「晃司?」
 ――果歩?
 ドキっと、心臓が跳ね上がった。
 夢と現実が、その刹那溶けてわからなくなる。さっきまで、夢の中でキスをしていた。
 過去の、もう思い出の中にしかいない果歩と。
「ごめん、こんな時間に、起きてた?」
「いいよ、何」
 照れ隠しから、恐ろしいほどぶっきらぼうな声がでた。
 電話の相手が、一瞬ひるむのが判る。
「今日はありがとう……。私、お礼も言わずに、帰っちゃったから」
「ああ、いいよ、別に」
 また、前にもまして無愛想な声。晃司は自身に嘆息する。
「色んな意味で……目が覚めた気がするから。晃司が、そんなに流奈のこと思ってたなんて、少し意外だったけど」
 また、その誤解か。――ま、もういいけどさ。
「それだけ、じゃあね」
「うん」
 プッと、電話が切れる。
「…………」
 晃司は目を閉じて仰向けになり、携帯を胸に載せた。
 だめだ……過去の思い出にやられて、身動きがとれない。
 なんだってこのタイミングで、最悪な夢を見て、このタイミングで果歩から電話があったりするんだ。
 シャツに、まだ果歩の手があるような気がする。
 ――前園さん……。
 甘い声が、まだ耳に残っているような気がする。





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