あの狼たちによろしく
第9話 開戦
「足音を消しただけで警戒するなんて、何かをずっと警戒してるんだろうな」
ポケットに手を入れて背中を向けたまま、男が聞いてきた。
心臓が高鳴る。
「走りながら足音を消せる奴も、何者なのかと思うけどね」
「そりゃそうだ」
言うと、男はゆっくりと振り返った。
だが、男の顔はどこか少し寂しげだった。
「もっと、戦いたくて仕方無いって顔をしてるのかと思ったけど」
あまりに意外で率直な意見を言ってしまった。
言うと男はポケットに入れていた手を、すぐに顔へと動かした。
顔に出る——若いかどこか図星を突いた証拠だ。皺の少ない顔。本当に若いのかもしれない。そのまま口撃を続けることにした。
「思ってたよりも若いな。20代中盤か」
「それがどうした」
男が左足を後ろへと下げた。
やるのか? こいつがやる理由はなんだろう?
構えないでいると男が聞いてきた。
「やりたいんじゃないのかよ?」
やりたいが。
「ひとつ、質問させてくれ」
「めんどくせぇ」
男を無視して問いかける。
「どうして、やるんだ?」
男は不思議そうな顔で聞き返す。
「あんただってそうだろ。わかるだろ。見てたんだよ、この間の」
少しイライラし始めている。気は短い方か。これ以上怒らせると単純に戦いを楽しめない。それでもまだ聞きたいことがあった。得てして戦いの後には質問をする時間はない。警察が来て逃げなければならないことも多いし、どちらかが気を失っていることもある。すぐに病院に行く必要がある場合もあるだろう。
「君はソープランドのボディガードをやるような奴には見えない。ああいうところに立っているやつは、もっとだらしない立ち方をするやつばかりだ。君はなぜあそこで働いている?」
「金に決まってるだろ。首を吊った親父の借金の肩代わりさ。もういいだろう」
男が構えを解こうとしたので、こちらがすぐさま構えた。
「失礼した。もう聞かないよ」
「ふんっ」
男は何かを吹き飛ばすように鼻で笑うと、ニヤッと笑ってゆっくりと腰を落とした。
嬉しそうな表情——そうだ。同類の証だ。
男はさらに腰を落とす。
両の手を開いたままで、低めに前へと出した。
レスリング経験者!
戦慄とともに、嬉しさが込み上げてきた。
俺はキックボクシングの構えをとる。二つの構えはどちらもすでに見られている。他の手も考えねばならない。
ただ何よりも、とにかく戦えることが嬉しかった。
ポケットに手を入れて背中を向けたまま、男が聞いてきた。
心臓が高鳴る。
「走りながら足音を消せる奴も、何者なのかと思うけどね」
「そりゃそうだ」
言うと、男はゆっくりと振り返った。
だが、男の顔はどこか少し寂しげだった。
「もっと、戦いたくて仕方無いって顔をしてるのかと思ったけど」
あまりに意外で率直な意見を言ってしまった。
言うと男はポケットに入れていた手を、すぐに顔へと動かした。
顔に出る——若いかどこか図星を突いた証拠だ。皺の少ない顔。本当に若いのかもしれない。そのまま口撃を続けることにした。
「思ってたよりも若いな。20代中盤か」
「それがどうした」
男が左足を後ろへと下げた。
やるのか? こいつがやる理由はなんだろう?
構えないでいると男が聞いてきた。
「やりたいんじゃないのかよ?」
やりたいが。
「ひとつ、質問させてくれ」
「めんどくせぇ」
男を無視して問いかける。
「どうして、やるんだ?」
男は不思議そうな顔で聞き返す。
「あんただってそうだろ。わかるだろ。見てたんだよ、この間の」
少しイライラし始めている。気は短い方か。これ以上怒らせると単純に戦いを楽しめない。それでもまだ聞きたいことがあった。得てして戦いの後には質問をする時間はない。警察が来て逃げなければならないことも多いし、どちらかが気を失っていることもある。すぐに病院に行く必要がある場合もあるだろう。
「君はソープランドのボディガードをやるような奴には見えない。ああいうところに立っているやつは、もっとだらしない立ち方をするやつばかりだ。君はなぜあそこで働いている?」
「金に決まってるだろ。首を吊った親父の借金の肩代わりさ。もういいだろう」
男が構えを解こうとしたので、こちらがすぐさま構えた。
「失礼した。もう聞かないよ」
「ふんっ」
男は何かを吹き飛ばすように鼻で笑うと、ニヤッと笑ってゆっくりと腰を落とした。
嬉しそうな表情——そうだ。同類の証だ。
男はさらに腰を落とす。
両の手を開いたままで、低めに前へと出した。
レスリング経験者!
戦慄とともに、嬉しさが込み上げてきた。
俺はキックボクシングの構えをとる。二つの構えはどちらもすでに見られている。他の手も考えねばならない。
ただ何よりも、とにかく戦えることが嬉しかった。
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