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あの狼たちによろしく

エイジ・シンジョウ

第7話  練習

 合気道の練習が始まる。
 まずは受け身から。前転、後転、横。
 次に足さばき。
 しゃがんだ姿勢で左右の膝を交互に出しながら前に進む。畳の上で武士が摺り足で移動するような型だ。
 そのあとは立った姿勢での足さばき。相手の横へ入る動作。相手の正面から逸れ、自分の正面に相手を持ってくる、格闘技の基本動作だ。これを知っているかどうか、とっさにできるかどうかで喧嘩の勝敗は大きく分かれる。
 そして拳を前に突き出す動作。
 その後、足を前に突き出す動作。
 つまり、パンチとキックだ。
 合気道の準備運動に含まれていることに驚いたが、打撃も想定していることを知って素直に嬉しかった。
「では二人一組になって」
 師範の掛け声で二人一組になる。俺は師範とだ。
 「では小手返しから」
 師範の指示でハナザワさんがヤマギワさんを投げる。合気道では女性を優先する。開祖・植芝盛平の教えだそうだ。ちなみに男性は段位を得てから袴を許されるが、女性は初めから袴の着用を許される。
 同時に俺も師範を投げる。
 合気道では投げられる側は無理な抵抗はしないので軽く投げられるが、師範はさらに投げやすい。
 まるで空気を投げているようだ。
 続いて投げられる側。師範の投げは自然だ。おかしな表現だが投げられやすい。つい投げられてしまう、という合気道の不思議さを実感できる。ただし受け身をしっかりととることは大事だ。

 入門初日に試させたもらったが、師範は小柄なのに、押したり引っ張ったりしても全く動かない。そこに合気道の秘密が隠されているのだろうと思って嬉しかった。学べることがあるのだ。手品も科学もそうだが、何にでもタネはある。おそらくこちらが力を入れるタイミングを見計らって何かをしているか、力が入りづらい形になるように持っていかれているのだろうと思う。ただ、その具体的な方法が難しいに違いない。

 練習は、入り身投げ、四方投げへと続く。繰り返して自然な動きになるように続けていく。「続けることが最も大事です」という師範の言葉をいつも心の中で唱えながら動く。体で憶えた動きをどこで使えるか、それが大事だと考えながら。

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