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あの狼たちによろしく

エイジ・シンジョウ

第4話  日常

普段の帰宅は22時頃になる。
「お帰りー。今日も京太がだらだら勉強して、まだ終わってないのよ? それから学校で、別の友達同士の喧嘩の仲裁に入って、結局自分も喧嘩になって先生からまた電話かかってきたのよ」
 いつもの愚痴だ。妻の話を聞いてあげるのは夫の仕事だと思う。だが長い。そして話にオチもない。聞いてあげるだけだ。これは仕事だ。

 妻と小学生の息子。何不自由ない暮らしだ。給料も多くはないが少なくもない。子ども一人ならと妻も働かず、慎ましい生活を送っていると思う。ローンはある。俺が死ねば返済義務が無くなる契約だ。生命保険もかけている。いつ死んでもいいか、とよく考える。子どもは悲しむだろう。妻は……少しは困るだろうが、近くに住む両親の助けを借りてなんとかやっていくだろう。明日も仕事。家に帰れば子どもが寝た後は次の日のために自分も寝るだけだ。ジョギングのふりをして夜の街に出ない日は。

 朝、息子を送り出したら自分も出勤する。出社は10時だ。15時までは採点や宿題のチェック、その日の授業の準備。16時頃から塾の生徒達を迎えて授業が始まる。うちの塾は小中高校生すべてを見ている。どの子もかわいい。勉強ができるようになって嬉しそうにしている姿を見ると少し良かったと思える。しかし、自学力のある子なら一人でもできてしまうようなことをただ教えているだけだと、よく考える。それでも無くならないのなら、これは必要な仕事なのだろう。

 男の子2人が、踊り場で向かい合って遊んでいる。一人が出した両手にもう一人がパンチをする。少ししたら交代。それを交互に繰り返す。次第に両方が拳を構え、顔に当たらない程度に繰り出す。腹や肩には当ててもいい。よくあるルールの懐かしい遊びだ。微笑ましい光景だ。そのやり取りは、さらにその先まで進むことはないだろう。本当にあてるところ、本当に戦うところまでは普通は行かない。

 ――教えてほしければ、格闘も教える。

 いつもそう思うが、本当にそれを望む子はいない。そんな子がいれば、自分の生活も何か変わるのだろうか。格闘技ならば、楽しく普段の生活に組み込めるだろうか。

 俺がしたいのは格闘技だったか。
 喧嘩と格闘技の違いはなんだろうか。

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