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【完結】✴︎私と結婚しない王太子(あなた)に存在価値はありませんのよ?

necoaya

第58話 花嫁のブーケね

 ――祝い月の初日。

「私は恵まれているわ」

「それはティファが人々に与えた物が返ってきたんだね」

 リオ兄様が親族の特権で控室に入り込む。花嫁はぎりぎりまで花婿や異性に姿を見せないとされていますが、お兄様やお父様は当然のように控室で目を潤ませていました。まあ、家族なので仕方ないのですけど。

「綺麗だ。妻にも見せたかった」

 母の形見であり、嫁いだ母が結婚式で着けた首飾りを父が掛けてくださいました。黄金の花模様の中心に大きな白真珠が光っています。金剛石や緑柱石が散りばめられた豪華な首飾りを鏡越しに見つめ、頬を緩めて指先で触れました。

 ずっしりと重い首飾りに合わせ、同じデザインの耳飾りが渡されます。お母様の形見があるのは知っていましたが、つけて結婚式に臨めるなんて。それでジュエリー類はお父様担当に決まったのですね。

 お母様の形見を貸してくださった父の気持ちが嬉しくて、涙がこぼれそうになりました。お母様も結婚式に参加してくださるのですもの。涙に慌てて侍女がハンカチで吸い取りました。

「お嬢様、せっかくのお化粧が流れてしまいます」

「ごめんなさい。あなたの力作ですもの、気を付けるわ」

 微笑んだことでこれ以上涙を零さずに済みました。さすがは我が家自慢の侍女ね。

「失礼します。うわぁ……すごく綺麗よ! 結婚おめでとう、ティファ」

 親友のフランカの言葉に、結婚するという実感がわいてきました。そう、今日から私はメレンデス公爵令嬢ではなく、竜帝テュフォン陛下の妃となるのです。

「ありがとう。次はあなたね、フランカ」

 次の結婚式は2ヶ月後で、リオ兄様とフランカです。すでに公示された日程に合わせ、彼女もドレスや装飾品を準備していました。人が増えたこともあり顔を隠す形で下げたヴェールの中、結い上げられた銀髪に指で触れます。

 公的な場で初めて髪をすべてアップにしました。

 これから既婚者になるのだと自覚したら、擽ったい感じがするのです。水色のドレスを纏った白青の竜マリエッラ様が近づき、淡いピンクの花束を差し出してくださいました。

「これをお持ちくださいな。アグニが言うには、花嫁はが必要なんですって」

 くすくす笑う竜から受け取ったのは、レースやリボンで飾られた華やかで小ぶりな花束です。受け取った持ち手部分もぴったりな大きさでした。

「作っていただいたんですか?」

「うふふ、そうよ。面白かったわ。皆で並んで花を持ち寄って束ねるんだけど、意識共有してるのに被るんだもの。一斉に出すと同じ花が揺れてたりして、余った分はあなたのお部屋に飾ってもらうよう手配したわ」

「ピンクにしたけど、ブルーでも良かったか。ジュエリーが最初から分かってれば、オレンジも映えそうだ」

 赤竜のアグニがリボンや装飾の色を口にします。ピンクが好きなので、これで十分です。微笑んで満足だと示しました。ところで、アグニ様……ここは花嫁の控室ですのに。

「アグニったら凝り性で、でも手先が器用で驚いたわ。双子なのにヴェールとは大違い」

 マリエッラは楽しそうに裏事情を暴露なさいます。なるほど、作った花束を届ける役でおいでなのなら、親族でない異性でも構わないかも知れませんわ。先に見せたとテユ様が臍を曲げなければよいのですが。

「ありがとうございます」

 頬を緩めた私に、横からフランシスカが声をかけました。

「あら、花嫁のね? 未婚女性へ投げるのよ。受け取った女性は、次に結婚できるの。ぜひ私に投げてね」

「え?」

 驚いたのは竜の女性だけ。私は「わかったわ」と素直に了承し、お父様やお兄様は不思議そうに「そんな意味があったのか」と呟いておられました。私も初めて知りましたわ。

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