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【完結】✴︎私と結婚しない王太子(あなた)に存在価値はありませんのよ?

necoaya

第56話 尻に敷かれるタイプか(SIDE竜)

 *****SIDE 竜



 叱られて悄げるテュフォンの様子を見ながら、庭で日向ぼっこをするアグニが欠伸をひとつ。

「ふーん、陛下は尻に敷かれるタイプか」

 竜は知っている。テュフォンが民の夢に介入し、竜の乙女への求婚を受け入れられたと自慢したことを。真実を共有する彼らは、多少の罪悪感をもってエステファニアを見守った。

 竜帝にとっては焦がれに焦がれた数百年の恋だが、彼女はまだ恋を自覚したばかり。これから育む愛情は、結実して国を潤すだろう。予知や予言の能力がなくても、竜達は確信していた。

「構って欲しかっただけでしょ、ほら」

 苦言を呈するピンクの唇をキスで塞いだ竜帝テュフォンの行動を指差す黄色い竜は、子供の姿でくすくすと笑う。

「何にしろ、平和で結構なことですわね」

 白青のマリエッラの一言に、羽を伸ばして昼寝する竜達は心の中で同意した。

 竜国ティタンに宗教の概念はない。そのため教会のような建物は存在せず、結婚式と言えばお披露目のパーティーが一般的だった。

 セブリオ国の王宮を一夜にして踏み潰した竜が瓦礫を片付けた跡地は、今や花が咲き乱れる美しい屋敷が建っていた。テュフォンの方針で、塔のある城は却下される。

 その理由に貴族達は驚いた。曰く『民を上から見下ろす権力者は堕落する』から不要――と。

 にっこり笑って賛成したエステファニアは、平屋造りの屋敷に住むこととなる。

 階段ばかりの王宮はドレスの裾を踏まないよう、常に摘まんで歩かねば危険だった。それが解消されたことに、貴族女性の評価は高い。男性もエスコートの際にパートナーの裾を踏まないように歩くのは難しく、階段がない利便性に気づいた一部の貴族は、屋敷の改装に取り掛かる程だった。

 滅多に使わない客間を上階に変更し、お金をかけずに生活空間を1階に集中させる貴族や商人も現れる。こうしたささやかな改革が半年の間にいくつも行われた。税が軽減され、街の公共事業が促進されたことで、竜の治世への期待は高まっている。

 そんな中で行われる竜帝と竜の乙女の結婚式は注目の的だった。誰もが着飾って屋敷を訪ねて、一言お祝いを申し上げたい。仲睦まじい2人の姿を一目見たい。そんな期待を受けて、準備に飛び回る貴族達も忙しかった。

 ある辺境伯は自慢の自家製ワインを山ほど用意し、ロエラ侯爵家は領地から大量の食肉を取り寄せる。家具を作らせ献上するのは木材豊富な北方の伯爵家だった。

 庭の花が必要だろうとメレンデス公爵家も領地から薔薇を運ばせ、大量の真珠を使ったティアラを作らせた。ヴェールやドレスの生地を作ったのは絹の生産で有名なパラダ伯爵、その絹を使ったドレスの縫製はセラーノ子爵が経営するドレス専門店だ。

 首飾りなどのジュエリーは、エステファニアの母の遺品を身に着けることが決まったらしい。街の人々も食材を寄付し、子供達が作ってくれた紙飾りが大量に屋敷へ取り付けられた。

 アグニの提案で、花嫁の手に小さな花束を持たせることが決まる。前の世界での習わしだと説明すると、テュフォンは喜んだ。お祝いの花を竜達が持ち寄り、それを当日の朝に束ねることに決まる。

 花嫁に渡す役は花婿に嫉妬されないよう女性のみ。共有した知識に含めたブーケは、当日の朝に母親が渡す地域もあると知った。もちろんエステファニアが異世界の知識や慣習を持つわけはない。だから誰が持って行っても同じなのだが、13匹の竜の中に母親経験者マリエッラがいた。

 アグニの鶴の一声で、彼女が適役と決まる。花の色がバラバラにならないよう、当日の朝に積む花は同じ庭で選ぶこととなった。

 慌ただしい中、準備は着々と進められていく。国民が楽しみにする祝い月は豊穣の祭りでもある。その晴れの日に行われる結婚式は、周辺の村や他国から参加希望者が押しかける一大行事に発展しつつあった。

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