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【完結】✴︎私と結婚しない王太子(あなた)に存在価値はありませんのよ?

necoaya

第41話 私、生きてますわよね?

「……私、生きてますわよね?」

「大丈夫よ、多分」

 フランカと私の会話に、それぞれ婚約者が心配そうに覗き込んでいます。厚手の絨毯を敷いた上に座るテユ様の膝枕で、目元を包む温かくて大きな手のひらに目を閉じました。ぐるぐる回る視界が楽になった気がしますわ。

「すまなかった」

 私達2人が目眩に襲われているのは、素直に謝るテユ様が原因でした。馬で行くより快適で速いからと、竜の背に乗るよう提案されたのです。しかし掴まるのが難しいと断りました。空も怖いですし。

 ここでテユ様が引いてくれればよかったのでしょう。ですがリオ兄様が一緒になって、乗る方法を考え始めました。今までのリオ兄様なら止めてくれたでしょうね。

 怖くない、その言葉を信じて竜の手のひらに乗りました。安全用の紐を竜の手に結びつけ、自分達の腰に巻く念の入れようです。

 飛び上がった最初は興奮しましたわ。

 だって王城の一番高い塔より上から見る景色ですもの。美しいと感動した私達はすぐに後悔しました。喜んだ私達の反応に気を良くしたテユ様が、曲芸飛行をしてくれたの。

 それはそれは……この世の終わりかと思う恐怖でした。天地が逆になったり、一回転する時に手のひらに押さえつけられたり。

 必死にリオ兄様が止めてくれましたが、時すでに遅しですわ。目的地についた私達は動けなくなっていました。嘔吐はさすがに我慢しましたが、目眩がして真っ直ぐ立てませんのよ。

「……うっ、ダメ」

「我慢、よ」

 淑女たるもの、いくら婚約者であっても人前で吐くわけにいきませんわ。コルセットのない服で本当によかったです。これであんな拘束具つけてたら、絶対に戻していましたから。

 限界を訴えるフランカに、必死で呼びかけます。リオ兄様は幻滅しないと思いますし、看病もしてくれるでしょう。でも未婚女性なのですから、醜聞は避けるべきです。

 訴える眼差しに、彼女がごくりと喉を鳴らしました。吐き出しかけを、なんとか堪えたみたいです。そんな私達の様子に、テユ様が動きました。

 侍女に命じて湖の冷たい水を用意させます。運ばれた水で濡らしたタオルを、額や首筋に当ててくださいました。ひんやりして気分が楽になります。

 唇から「ほぅ」と声が漏れました。冷やすことにこんな効果がありますのね。

「人間のルールやマナーの厳格さには呆れるが、そなたらにとって大切なのは理解した。吐けば楽になるが、ステファニーは嫌なのだろう? ならばこれが一番だ」

 湖の水を使って、周囲に天幕を作ってくださいました。テントで姿を隠した形だが、その素材は氷です。侍女達が運んだ水を薄く凍らせたものと説明され、目を見開きました。そんなこと出来るんですの?

 驚きすぎて吐き気が一時的に治まったほど。

「器用ですね」

「半透明にする方法なら、アグニが知っておったわ」

 リオ兄様の感嘆の声に、テユ様が答えます。周囲がひんやりと冷たいからか、少しずつ気持ち悪さが治まってきました。目を開けても世界が回る感じはしません。それどころか眠くなってきてしまって……。

「少し休むが良い」

「そうだね、体力を回復しないと」

 優しい2人の声を聞きながら、目を閉じたら……もうダメでした。意識が持っていかれます。どこか夢の中を揺蕩うように、心地よさに引き込まれてしまいました。

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