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【完結】✴︎私と結婚しない王太子(あなた)に存在価値はありませんのよ?

necoaya

第26話 食料が足りませんわ

「まあよい。じきに慣れるであろう」

 優しく頬を撫でられ、接触過多な竜帝陛下に淑女との距離をどう理解していただこうかと悩みます。婚約者になったばかりで、まだ婚姻したわけではないのですから。髪や頬もたまに触れる程度で、ずっと手を滑らせるのは触りすぎでした。

 さりげなく腰を抱く癖も、直していただきたいです。ついでに手が上下して、艶めかしく腰を撫でる行為も……うなじの匂いを嗅ごうとしたり、髪に顔を埋めようとするのも、マナー違反ですわ。

 遠回しに警告したところ、彼はきょとんとした顔で聞いたあと「人間は面倒な種族なのだな」と眉尻を落として落ち込んでしまわれました。

 どうやら竜の「番」という婚姻関係では、問題ない行為ばかりのようですが、私は人間なのでこちらに合わせていただけると助かります。

 さすがに胸や足に触れませんので、腰は譲歩することにします。テユ様にはよく言い聞かせ、人前で撫でたら殴りますと明言しました。フランカが扇の陰で笑っていますが、見ないフリでやり過ごすことにします。

 だって恥ずかしいんですもの。

「そろそろ我が民も目覚める頃であろうが、どこぞに空いた建物はあるか?」

「……人間サイズでよければございますぞ」

 照れている間に男性陣の間で話が進んでいます。

 お父様ったら平然とお話についていけてますのね。この辺は有能な執政官であり外交官と褒める部分でしょうか。外交手腕がえげつないほど優秀と、他国で評価されていました。あれは誉め言葉でしたのかしら。

 ところで、目覚める我が民とは竜……ですか?

 ガシャン! 大きな音と同時に、広間に続く扉がノックされて開かれます。血相を変えたメレンデス公爵派の貴族が数人飛び込んでこられました。

「た、大変です! 巨大な空飛ぶ生き物がっ!!」

 赤、銀、青、水色、緑、黄……様々な色の竜が空を舞う。見上げた黒い空を自由に飛び交う巨体に、驚きで声が詰まりました。

 よく大きな蜥蜴に羽が生えたと表現されるが、もっと優美な形をしています。手足を畳んで風の抵抗を少なくし、我が物顔で空を支配する流線形の竜は美しいの一言に尽きました。

「ふむ、数は少ないが……こんなものか」

 テユ様の言葉に目を瞬かせました。腰を抱く彼に押されるようにして、大広間のテラスへ出ますが、この数のドラゴンを前にして少ないとおっしゃった。

 まだたくさんのドラゴンが眠っているのなら……大変です。

「どうしましょう……食料が足りませんわ」

 この国は竜の加護があり、実りは豊かです。他国の侵略も退けていただいたので、略奪されたこともありません。ですが……いえ、だからこそ備蓄の量は少ないのです。増やすよう進言しましたが、国王陛下……ではなく、元国王に却下されたことが悔やまれます。

「確か『毎年確実に得られるゆえ、蓄えは最低限で良い』でしたかしら」

 伯母様が呆れ半分で、当時の夫のセリフを繰り返しておられます。記憶力のいい方ですけれど、そっくり繰り返されて私の記憶も鮮明になりました。

 確かにこの国が突然の不作になって苦労した話は聞きません。それでも突然くるのが不作であり、天候不順です。天災で台風が襲うかも知れません。進言した私を退けた時点で、あの人には何も期待しませんでしたが……。

 このような事態になるのなら、無理を言っても用意しておくべきでした。

 国を守護する竜が目覚めたというのに、十分な食料すらご用意できないなんて。数百年に及ぶご加護への返礼として、あまりに失礼ですわ。きっと起きたばかりでお腹が空いているでしょうに。

 そういえば……どうしてテユ様は竜のお姿じゃないのかしら。服に隠して尻尾や羽をお持ちだとしても、空を舞う竜と大きさが違いますわね。

「安心しなさい。我が派閥の貴族は、領地に蓄えをしている……が、あの巨体では1ヶ月も保たないか」

 眉をひそめて計算を始めた父に、何でもないようにテユ様が微笑まれました。

「問題ない。我が眷族は地脈から力を得るゆえ、人と同じ食料は不要だ」

 食料は……必要ないのですか? つまりご用意しなくて平気という意味ですよね。遠慮ではなく?

「そうなんですの?」

「ああ」

 寿命が長くても、数百年食べなかったら餓死するでしょう。ですから食事が必要ないというお言葉も理解できます。理解しますけれど、これは別ですわ!

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