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【完結】✴︎私と結婚しない王太子(あなた)に存在価値はありませんのよ?

necoaya

第10話 そんなお話聞いておりません

 咎める響きにびくりと肩を揺らしましたが、カルメン嬢は開き直ったように再び言い返します。その気の強さは見事ですけれど、この場では悪手ではないかしら。印象が悪くなるだけですわ。そうですね、私でしたら扇で顔を隠して泣いたフリを……あら、扇をお持ちではないのですか。

「だって、おかしいじゃない! ちゃんとシナリオ通りにクロード様を手に入れたのに、エミリオ様はあたしを振るし、『攻略対象』のロベルト様やカリスト様も冷たいなんてぇ! 絶対に、あんたが何かしたのよぉ!!」

「え? リオ兄様にも言い寄ったの?」

 思わず漏れた言葉に、兄の婚約者であるフランカが教えてくれました。付き纏われて困ると相談を受け、フランカと協力して追い払ったと。

 仲の良さを見せつけ、お前など嫌いだと言い放ったリオ兄様の武勇伝を聞き、私の眉尻が少し下がりました。感情豊かな私にフランカが苦笑いしております。

「いやですわ、教えてくださったらよかったのに」

 簡単な協力くらい出来ましてよ? 除け者にされた気分で呟く私の尖らせた唇を、フランカの絹の手袋がそっと押しました。ふわりと柔らかな感触に続いて、涼やかな心地よい香りがします。

「リオのお願いだったの。大切な妹を心配させたくなかったのでしょうね」

 リオ兄様の気遣いは嬉しいけれど、私だけ知らないなんて。それだけでなく、ロベルト様やカリスト様にも言い寄ったというではありませんか。ロベルト様は宰相閣下のご子息で、カリスト様のお父様は騎士団を纏める将軍職に就いておられます。

 深く考えるまでもなく、権力者の跡取りに言い寄ったと発言したのですもの。

 玉の輿狙い――最初からそういうつもりなのでしょう。カルメン嬢の出自に興味もありませんが、上位貴族の令嬢である可能性はゼロですわ。庶子という可能性も皆無です。たとえ愛玩動物であっても、ここまで野放しで無礼な生き物を育てる貴族はいないのですから。

 多数の相手と同時に付き合うのは、未婚であってもふしだらな行為とされ、嫌悪される対象でした。ほとんどの貴族子女は幼い頃に婚約者を決め、それ以外の相手と付き合うことはありません。婚約者のいる男女が、別の異性と密室で2人きりになることも眉を顰められるのが常識でした。 

 カルメン嬢が口にされるシナリオや攻略対象の意味はわかりませんが、彼女の振る舞いがこの国で嫌悪される類である事実は揺るぎません。

「クロード様以外もクリアしたかったのに! どぉして反応がないのぉ? 『逆ハーエンド』にならない! 私はちゃんと、シナリオ通りにしたのにぃ」

 叫びながら近くにあったテーブルの上のグラスを叩き落とす。カルメン嬢の品がない八つ当たりに、侍女や侍従が困惑顔で王子を見つめました。止めて欲しいのでしょうが、彼女の言葉に衝撃を受けた様子のクラウディオ王子は動きませんでした。完全に固まっているみたい。

 あのひと、突発的な出来事に弱かったですね。あれで帝王学や王族教育を受けたと言い張るのです。よほど教師が酷い授業をなさったか、上手に手を抜いたのでしょう。本当に夫にならなくてよかった。

 他国の王族相手にこんな騒動起こされましたら、いくら私でもフォローしきれません。

「ロベルト様、カリスト様。どちらもお似合いの婚約者がいらっしゃるのに」

 なびかなかったと名を出されても、正直、迷惑でしかないでしょう。

 あの方々はリオ兄様と同じ年だったかしら。思い浮かべながら視線を彷徨わせれば、婚約者と腕を組んだお二人が顔を顰めておりました。

 当然の反応、と周囲も同情の視線を向けます。互いの婚約者にすでに話が通っているみたいですね。腕を組んだ婚約者に対し、彼女達は詰め寄る様子を見せません。

 そう考えると、リオ兄様がフランカに事前に話を通したのも当然でしょうか。あのような痴女と知り合いだなんて勘違いされては腹立たしい上、著しく名誉を傷つけられるのですから。誤解の種は撒かれる前に回収、が貴族外交の鉄則ですもの。

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