話題のラノベや投稿小説を無料で読むならノベルバ

【完結】✴︎私と結婚しない王太子(あなた)に存在価値はありませんのよ?

necoaya

第4話 どなたが責任をお取りになるの?

 不敬罪で叱られそうな物言いは、フランカの魅力ですわね。

 相変わらず歯に衣着せぬ友人は扇をひらひらと揺らして、悪びれた様子はありません。パーティーや夜会でのエスコートは、婚約者の義務であり権利です。兄エミリオは当然婚約者を伴って入場しましたが、私が1人だったため、慌てて2度目の入場も付き合ってくれました。

 淑女が紳士のエスコートなしに入場するなどあり得ません。婚約者が紳士ではないので、どちらにしろ困ったでしょう。お父様にお願いしようと思ったのですけれど、見つからないので助かりました。

 考えるまでもなく、リオ兄様は私の名誉のために王太子殿下に苦言を呈しに行ったのでしょう。そんなことどうでもよかったのですが……。毎回私を放り出しておられるし、愛があるわけじゃありませんもの。ただ、兄の気遣いは嬉しく思います。

 決められた数の子を産んだら、実家に戻りたい――大好きな兄エミリオや親友フランカと暮らしたい、そんな願いを口にしたのは昨年でした。このアイディアは兄も義姉になるフランカも喜んでくれましたので、結婚したらすぐに王太子殿下に進言する予定です。

 彼が誰を好きになろうと、義務である王子と王女を産んだ後なら自由にすれば良いのです。愛人でも側妃でも、隣に置いて愛でればよいでしょう。だって私たちの結婚は義務で、それ以上の感情はありませんから。



 セブリオ国は豊かな土壌と恵まれた地形の国です。北に大きな山脈があり、冷たい風を防いできました。高い山に降った雪は春に川を作り、秋まで田畑を潤します。山から与えられる恵みは木の実や森の動物だけでなく、腐葉土や川に流れ出た栄養も含まれる豊かな土壌でした。

 連作障害もなく毎年耕作できる肥沃な大地、枯れることがない山からの水資源、冷たい風を遮られた温暖な気候……それらすべてを与えるのは、初代国王が契約した――銀の竜帝陛下。

 今ではお姿を見せてくださらない竜族ですが、恩恵は子孫であるセブリオ国の民に今も与えられています。

 他国からの侵略があっても、なぜか季節外れの雪が降ったり台風が敵を弱らせました。戦う前に勝利が決まってしまうのです。これも竜の加護のおかげと感謝し、20年に1度舞いを竜の乙女が献上するのも、この国の特徴のひとつ。

 セブリオ国の王妃となり国母となるのは、常にメレンデス公爵家の令嬢でした。メレンデス公爵家は2人しか子供が生まれません。跡取りとなる嫡男、その姉妹であり王家に嫁ぐ娘です。先代は姉弟でした。すでに兄がいる私は生まれる前、懐妊当初から王太子の婚約者に決まっていたのです。

 特殊な事情があるが故の措置で、王族ならばその重要性は理解しておられたはず。しかし彼は突然婚約破棄を申し渡し縁を切りました。

 ――この騒動のツケを伯父様は払えるのかしら。





「わ、私にはクロード様だけですわ」

 皆が見惚れるという王太子の言葉を真に受けて照れるカルメン。彼女がくねくねと腰を揺らして王太子の腕に足りない胸を押し付ける仕草に、貴族は失笑しております。あれでは場末の娼婦ではないか、そんな囁きも聞こえてきました。

 国王陛下の玉座がある広間の壇上に上がるには、身なりも所作も不相応ですけれど。

「そうか?」

 でれでれと鼻の下を伸ばす元婚約者……ではなく、一応まだ婚約者の王太子に肩を落として顔を扇で隠した。恥ずかしくて、明日から人前に出られなくなりそう。

 隣に歩み寄ったフランカも口元を扇で覆うが、こちらは呆れではなく苦笑を隠していました。

「本当に最低な男ね。ある意味よかったわ、あなたがあんな男の子を産む羽目にならなくて」

 周囲に聞こえない小声ですが、辛辣な内容にこちらも口角が歪むのは仕方ありません。苦笑を堪えようとした私の表情に、フランシスカはウィンクして寄越す余裕があります。

 愛嬌があって可愛らしい女性だと感心しますわ。こういった場面で、当事者の私に近づく勇気はもちろんのこと、和ませる言葉の選び方も好ましく思います。得難い親友の存在が心強くて、口元がゆったり弧を描いていきました。

 こうなれば、状況を楽しんだ方が勝ちですわ。

「【完結】✴︎私と結婚しない王太子(あなた)に存在価値はありませんのよ?」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「恋愛」の人気作品

コメント

コメントを書く