転生したら自殺した元カノ似のモブ子に出会ったのでラブコメだけどハーレムから脱却します!

高見南純平

ね、姉さん!?

 6月6日(月曜日)


 俺は朝起きて階段を降りると、玄関に華蓮さんがいることに気がついた。


「はぁあ、おはよう姉さん」


 寝起きなのであくびをしてしまった。
 まだ7時なのに華蓮さんが起きてるのは珍しい。
 それにスーツ姿だった。


「おはよう心火」


「もしかして就活?」


「うーん、まぁ、そんなところかな」


 曖昧な返事だった。
 確か華蓮さんは4年生だから、てっきり就活だと思ってたけど。


「そっか、頑張ってね」


「もちろん。じゃ、またな心火」


 華蓮さんは足早に家を出ていった。


 ん?


 またなってどう意味だ?


 俺は不自然だった華蓮さんの反応を見て違和感を覚えた。


「心く~ん、紫水ちゃ~ん。朝ごはんよ~」


 リビングで霧歌さんが呼んでいる。


 ま、とりあえず今は朝の準備にとりかかりますか。




 俺は朝ごはんを食べ制服に着替えた。
 今日から夏服なようでシャツのみだ。
 もう結構、日が強くなってきていた。


「いってきま~す」


 玄関を出ると、いつものように春乃が家の前で待っていた。
 彼女も夏服で、健康的な腕がみえていた。


「心火おはよう。もう夏服だね」


「うん。似合ってるよ、春乃」


「な、いきなり褒めないでよね」


 春乃は照れ臭そうにしながら、俺から目を反らした。
 なんか褒める気がなくても、口が勝手に言っちゃうんだよな。


 幼馴染らしい会話をしながら、俺たちは学校へと向かった。


「そう言えば、今日から教育実習生が来るの、知ってる?」


「へー、知らなかった」


「どんな人だろうね。優しい人だといいけど」


「っね、だといいね……」


 あれ、まてよ。


 もしかしてさっきの言葉の意味って……


 俺は朝イチでして会話を思い出した。


 マジかよ、聞いてないぞ俺。


 俺はその実習生に心当たりがないよう振る舞いながらも、内心ほぼ分かっていた。


 これは何だか荒れるような気がしてならない。




「皆さんおはようございます。知ってる人もいると思うけど、今日から教育実習生がやってきます」


 朝のホームルーム、担任の久美長先生が話はじめた。
 それを聞いてざわつくクラスメイトたち。


「はい静かに。主にこのクラスを見て貰うから、紹介して置くわね」


 久三長先生は廊下にいるであろう実習生に向かって「入りなさい」と声をかけた。


 しかし、数秒経ってもそこから顔を出すものはいなかった。


「あれ、おかしいわね……」


 様子を見に先生が廊下に出ようとした時だった。


「どーもー、よろしくね~」


 突然、教室に謎の声が響いた。


 誰だ? いや、この女性の声、聞き覚えがあるぞ。


 というか、俺の真後ろから声がしたんだけど!


 後ろからの声に気がついたクラスメイト全員が、一斉に俺の方へと振り返る。
 俺も反射的に振り返ってしまった。


 本来なら掃除用具入れしかないはずなのに、1人の女性がそこには立っていた。


「っよ」


 軽くこっちに手を振ったのは、虎頭家の長女 華蓮さんだった。


 やっぱり教育実習生は彼女だったのか。
 朝に「またな」って言ってたからうすうす気がついていたけど。


 でも、まさか俺の真後ろから登場してくるとは。


「あなた、どこから出てきてるのよ」


 呆れた様子の久三長先生。


「ベランダからのほうがインパクトあるでしょ? こういうのは最初が肝心だからね」


 この人、ベランダでスタンバイしていたのか。
 ここのベランダは他の教室と繋がっているから、俺たちにバレずに移動することはできるはできるけど。
 でも、教育実習生なのにそんな事普通するかなぁ。


 俺は忘れかけていた、この世界の人の非常識さを思い出した。


 華蓮さんは全員の視線を釘付けにしながら、教卓の方へ移動していく。
 実習に来たなら緊張するのが当たり前な気がするけど、彼女からは全くそんな気は感じなかった。


「ねぇ心火、実習生が華蓮さんなら言ってくれればよかったのに。びっくりしたじゃん」


「いや、僕も聞かされてなかったから」


 俺と春乃は歩いている華蓮さんの背中を見ながら、小声で会話をした。


「クミリン、紹介よろしく」


「あのね、ここでは久三長先生と呼びなさい」


 黒板の前で話している2人を見ているとなんだか親しげに思えた。
 面識があるんだな。


「えー、彼女は私の教え子の虎頭華蓮さん。皆仲良くするのよ」


「どもー、未来ある若者たちよ」


 その紹介を聞いて、再びクラスが騒がしくなった。
 落ち着いているのは俺と春乃、あとは海利もか。


「ちょっと、皆静かにしなさい」


 先生が注意をするも、抑えきれなかったクラスメイトの1人が立ち上がって声を出した。


「っえ、虎頭ってまさか、虎頭の姉さん!?」


 虎頭なんてこの世界でも珍しいみたいだから、そう疑うのも無理はない。
 ま、それが事実だし。


「っそ。だから虎頭だとあいつと被るから、華蓮さんって呼んでね」


 こうして、予想通り俺の学校に華蓮さんが実習生としてやってくることになった。


 まぁでも、知らない人よりもいいか。


 なんて思ってはいるけど、心のどこかでは何かかが怒こりそうで不安だった。

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