転生したら自殺した元カノ似のモブ子に出会ったのでラブコメだけどハーレムから脱却します!
番外編 海利と沙理弥
俺はなんで勉強なんかしてんだ?
高校は親の命令で入学したが、正直勉強なんてどうでもいい。
俺んちは金がないから、中卒で工場かなんかで働いたってよかった。
肉体労働は俺の性に合ってる。
けど、今俺は絶賛勉強中。
原因は隣にいるこいつだ。
「ほら、はやくペン動かす」
「へいへい」
俺は気の抜けた返事をする。
隣のそいつの名前は鬼龍沙理弥。
顔は可愛いしスタイルもいいが、その名の通り鬼みたいにおっかない時がある。
「へいは1回でいいの」
「へーい」
友人たちでテスト週間の勉強会を開いたときに、俺はこいつに目をつけられた。
赤点を免れればいいぐらいの気持ちで参加したんだが、そこで彼女のスイッチが入ったみてぇだ。
普段はニコニコしている彼女は、今は鬼教官に変わっている。
「沙理弥~、ちょっとは休憩しようぜぇ?」
「だーめ、ファミレスが閉まるまでやるの」
「閉まるまでって……ここ24時間営業だぜ?」
「だったら24時間やるの」
「それはさすがに冗談だよな?」
「……」
「おい、なんか答えろよ!」
さっきからこの調子で永遠と勉強をさせられている。
ファミレスに入ったのが午後3時だから、って、もう4時間ぐらいやってんじゃねぇか。
ただでさえ今週は勉強会に強制参加させられ続けてて休んでねぇってのに。
俺が不貞腐れていると、突然「ぎゅーーーー」っと謎の音が鳴った。
何だ今の音?
「あ、お腹なっちゃった」
沙理弥かよ。
音が鳴って照れてるが、全く俺は可愛いと思わない。
こいつに打ちのめさせられた記憶が消えないからだろうな。
「じゃあさ、さすがに飯休憩はしようぜ?」
「うーん、しょうがないか」
はぁ、助かった。
このままじゃ疲れすぎて死んじまうとこだ。
俺は店員を呼んで注文をしようとしたが、沙理弥の注文を聞いて俺は耳を疑った。
「えーと、キャラメルジェラートに、キングサイズパフェ、タピオカミルクティーに、パンケーキでハチミツ多めを4つ、あとグラタンで」
「おいおい、頼みすぎだろ! お前、こんな食うタイプだったっけ?」
俺のイメージだと、昼飯は平均的な量しか食べてなかった気がするが。
いくらなんでもギャップがありすぎる。
「ほら、デザートは別腹って言うじゃない?」
「お前の場合グラタンが別腹だろ!」
主食はグラタンしか頼んでねぇし、まじでデザートならこんぐらいの量食うのか。
「海利君は?」
「俺は~、ハンバーグとライス、一番小さいサイズで」
店員が俺らの頼む量の違いに驚きながら厨房に戻っていった。
「それしか食べないの? だから頭がすっからかんなんだよ?」
こいつ、平然とした顔でなかなかの毒舌を。
「金がねぇんだよ。あのな、そもそもファミレスなんてめったに来ねぇんだ」
「そっか、それはごめん……」
こう素直に謝られると調子が狂うな。
こいつのことは嫌いじゃないんだが、少し苦手なんだよな。
なんていうか、底が見えねぇんだよな。
って、それは俺もか。
本当の俺だったら、こいつの言動にいちいち突っ込んだりしない。
普段の俺は不愛想って言葉がぴったりだ。
「おまたせしました」
早くも沙理弥が頼んだデザートがわんさかやってくる。
あっという間にテーブルが埋め尽くされた。
「いただきます」
「若干、引くわ」
バクバク食べていく沙理弥の姿は、恐怖を感じるほど異様だった。
体が華奢な分、行動とマッチしてなくて違和感が凄げぇんだよなぁ。
俺はそんな沙理弥をよそに、自分の頼んだハンバーグを食べ始める。
ライスと肉があれば、俺には十分だった。
沙理弥がもくもくとデザートを食べ進めていると、店内が少しだけ騒がしくなってきた。
夕食時ってことで、家族連れが増えていた。
あとは、部活帰りに見える高校生が何人か来店していた。
俺は何となく店内を見渡していたが、それにつられたのか沙理弥も同じく店内に目を向ける。
沙理弥の目線が、離れた席にいる女学生2人組のところで止まった。
その学生たちは楽しそうに和気あいあいと喋っていた。
彼女たちの会話が気になるのか、耳を澄ませていた。
デザートを食べていた手も止まっていた。
「どうかしたか?」
「ん、いや~、ああいうの良いなって思って」
「ああいうのって、友達同士で喋ったりしてるのが?」
「そう。楽しそうで羨ましい……」
意外だった。
沙理弥は女友達もいるし、男子にもそれなりに人気はある。
そんな彼女が、ただべちゃくちゃ喋っている姿に憧れているとは思わなかった。
沙理弥は女学生たちを横目にパフェを食べるのを再開した。
俺はそんな彼女を見てあることを思い出した。
そうだ、そういえばこいつは1年の時に部活を突然辞めたんだった。
当時は仲が良いわけではなかったから詳しくは知らない。
けど、親友だった奴と喧嘩をしてそのまま退部をしたらしい。
沙理弥は毒舌だけど、感情を真正面からぶつけるタイプではない気がする。
そんな沙理弥が、なんでその友達と喧嘩をしたんだ?
今聞こうと思えば聞けるが、それはやめておいた。
せっかくの食事がまずくなるかもしれないからな。
今まで言わなかったってことは、言いずらいんだろうし。
「……叶うといいな」
俺は短くそう呟いた。
「っえ、叶うって?」
「だから、話したい奴と思う存分話せるようになるといいなって」
もう俺らは2年だし、喧嘩をしたことはずいぶんと前の話だ。
けど、沙理弥は今もずっと後悔してんだろうな。
普段平然としている奴が、インキ臭いか押されるとこっちの調子が狂う。
こいつには早く、普段の自分を取り戻してもらわないとな。
「……そうだね。海利君、珍しく優しいね」
「俺は常に優男だぜ」
珍しくって部分に少し引っかかったがスルーした。
よく考えれば、普段の俺は面倒くさくて口の悪い男だった。
「……ねぇ、海利君は私のこと友達だと思ってる?」
「え、それは……」
俺は思わず考え込んでしまった。
まさかこの流れで、話題が俺に映るとは予想してなかった。
沙理弥のことは友達……いや、友達の友達か。
難しいところだな。
こうやって2人っきりでいたことは、ほとんどないしな。
俺は考え込んだ結果、いいことを思いついた。
「それ、くれたら友達ってことにしておいてやるよ」
俺はテーブルに置かれたパンケーキを指さした。
「パンケーキあげたら友達になってくれるの?」
俺の謎の提案に沙理弥は困った様子だった。
真面目に聞いた自分が馬鹿みたい、って思ってるかもしれん。
「いいからよこせって、友達になってやんねぇぞ」
子供みたいなセリフを俺は吐いた。
「海利君も食べたかったんだね」
彼女の言う通り、単純に腹が減ってたというのもある。
ライスとハンバーグだけで満腹だと言い聞かせたが、体は正直だ。
目の前に美味しそうな食べ物があれば、我慢するのは難しい。
俺は食べ終わったライスの皿を、彼女に近づけた。
「1枚でいいぜ」
「へいへい。っあ、アーンしてあげよっか?」
「恋人じゃねぇんだから、普通に渡せよ」
「そうだよね。……友達、だもんね」
沙理弥はにっこりと笑顔を見せた。
やっぱ、こいつには暗い顔は似合わねぇな。
俺はハチミツがたっぷりかかったパンケーキを1枚貰った。
甘いのは嫌いじゃないし、シンプルに旨そうだ。
「ねぇ、美味しい?」
「まだ食べてないだろ!」
俺はツッコミを入れながら、パンケーキを頬張った。
「……まじかよ、ファミレスのってこんなに旨いんだ」
「海利君、幸せそうな顔してるよ」
俺の頬は自然とあがってしまった。
きっと、いつもは見せないような表情をしてしまったのだろう。
こいつと勉強をしにファミレスに来なければ、これを食べることはできなかったのか。
正直に言ってしまうと、さっきの質問から逃れるために提案したことだった。
けどまぁ、パンケーキ1枚の友情も悪くはなかった。
高校は親の命令で入学したが、正直勉強なんてどうでもいい。
俺んちは金がないから、中卒で工場かなんかで働いたってよかった。
肉体労働は俺の性に合ってる。
けど、今俺は絶賛勉強中。
原因は隣にいるこいつだ。
「ほら、はやくペン動かす」
「へいへい」
俺は気の抜けた返事をする。
隣のそいつの名前は鬼龍沙理弥。
顔は可愛いしスタイルもいいが、その名の通り鬼みたいにおっかない時がある。
「へいは1回でいいの」
「へーい」
友人たちでテスト週間の勉強会を開いたときに、俺はこいつに目をつけられた。
赤点を免れればいいぐらいの気持ちで参加したんだが、そこで彼女のスイッチが入ったみてぇだ。
普段はニコニコしている彼女は、今は鬼教官に変わっている。
「沙理弥~、ちょっとは休憩しようぜぇ?」
「だーめ、ファミレスが閉まるまでやるの」
「閉まるまでって……ここ24時間営業だぜ?」
「だったら24時間やるの」
「それはさすがに冗談だよな?」
「……」
「おい、なんか答えろよ!」
さっきからこの調子で永遠と勉強をさせられている。
ファミレスに入ったのが午後3時だから、って、もう4時間ぐらいやってんじゃねぇか。
ただでさえ今週は勉強会に強制参加させられ続けてて休んでねぇってのに。
俺が不貞腐れていると、突然「ぎゅーーーー」っと謎の音が鳴った。
何だ今の音?
「あ、お腹なっちゃった」
沙理弥かよ。
音が鳴って照れてるが、全く俺は可愛いと思わない。
こいつに打ちのめさせられた記憶が消えないからだろうな。
「じゃあさ、さすがに飯休憩はしようぜ?」
「うーん、しょうがないか」
はぁ、助かった。
このままじゃ疲れすぎて死んじまうとこだ。
俺は店員を呼んで注文をしようとしたが、沙理弥の注文を聞いて俺は耳を疑った。
「えーと、キャラメルジェラートに、キングサイズパフェ、タピオカミルクティーに、パンケーキでハチミツ多めを4つ、あとグラタンで」
「おいおい、頼みすぎだろ! お前、こんな食うタイプだったっけ?」
俺のイメージだと、昼飯は平均的な量しか食べてなかった気がするが。
いくらなんでもギャップがありすぎる。
「ほら、デザートは別腹って言うじゃない?」
「お前の場合グラタンが別腹だろ!」
主食はグラタンしか頼んでねぇし、まじでデザートならこんぐらいの量食うのか。
「海利君は?」
「俺は~、ハンバーグとライス、一番小さいサイズで」
店員が俺らの頼む量の違いに驚きながら厨房に戻っていった。
「それしか食べないの? だから頭がすっからかんなんだよ?」
こいつ、平然とした顔でなかなかの毒舌を。
「金がねぇんだよ。あのな、そもそもファミレスなんてめったに来ねぇんだ」
「そっか、それはごめん……」
こう素直に謝られると調子が狂うな。
こいつのことは嫌いじゃないんだが、少し苦手なんだよな。
なんていうか、底が見えねぇんだよな。
って、それは俺もか。
本当の俺だったら、こいつの言動にいちいち突っ込んだりしない。
普段の俺は不愛想って言葉がぴったりだ。
「おまたせしました」
早くも沙理弥が頼んだデザートがわんさかやってくる。
あっという間にテーブルが埋め尽くされた。
「いただきます」
「若干、引くわ」
バクバク食べていく沙理弥の姿は、恐怖を感じるほど異様だった。
体が華奢な分、行動とマッチしてなくて違和感が凄げぇんだよなぁ。
俺はそんな沙理弥をよそに、自分の頼んだハンバーグを食べ始める。
ライスと肉があれば、俺には十分だった。
沙理弥がもくもくとデザートを食べ進めていると、店内が少しだけ騒がしくなってきた。
夕食時ってことで、家族連れが増えていた。
あとは、部活帰りに見える高校生が何人か来店していた。
俺は何となく店内を見渡していたが、それにつられたのか沙理弥も同じく店内に目を向ける。
沙理弥の目線が、離れた席にいる女学生2人組のところで止まった。
その学生たちは楽しそうに和気あいあいと喋っていた。
彼女たちの会話が気になるのか、耳を澄ませていた。
デザートを食べていた手も止まっていた。
「どうかしたか?」
「ん、いや~、ああいうの良いなって思って」
「ああいうのって、友達同士で喋ったりしてるのが?」
「そう。楽しそうで羨ましい……」
意外だった。
沙理弥は女友達もいるし、男子にもそれなりに人気はある。
そんな彼女が、ただべちゃくちゃ喋っている姿に憧れているとは思わなかった。
沙理弥は女学生たちを横目にパフェを食べるのを再開した。
俺はそんな彼女を見てあることを思い出した。
そうだ、そういえばこいつは1年の時に部活を突然辞めたんだった。
当時は仲が良いわけではなかったから詳しくは知らない。
けど、親友だった奴と喧嘩をしてそのまま退部をしたらしい。
沙理弥は毒舌だけど、感情を真正面からぶつけるタイプではない気がする。
そんな沙理弥が、なんでその友達と喧嘩をしたんだ?
今聞こうと思えば聞けるが、それはやめておいた。
せっかくの食事がまずくなるかもしれないからな。
今まで言わなかったってことは、言いずらいんだろうし。
「……叶うといいな」
俺は短くそう呟いた。
「っえ、叶うって?」
「だから、話したい奴と思う存分話せるようになるといいなって」
もう俺らは2年だし、喧嘩をしたことはずいぶんと前の話だ。
けど、沙理弥は今もずっと後悔してんだろうな。
普段平然としている奴が、インキ臭いか押されるとこっちの調子が狂う。
こいつには早く、普段の自分を取り戻してもらわないとな。
「……そうだね。海利君、珍しく優しいね」
「俺は常に優男だぜ」
珍しくって部分に少し引っかかったがスルーした。
よく考えれば、普段の俺は面倒くさくて口の悪い男だった。
「……ねぇ、海利君は私のこと友達だと思ってる?」
「え、それは……」
俺は思わず考え込んでしまった。
まさかこの流れで、話題が俺に映るとは予想してなかった。
沙理弥のことは友達……いや、友達の友達か。
難しいところだな。
こうやって2人っきりでいたことは、ほとんどないしな。
俺は考え込んだ結果、いいことを思いついた。
「それ、くれたら友達ってことにしておいてやるよ」
俺はテーブルに置かれたパンケーキを指さした。
「パンケーキあげたら友達になってくれるの?」
俺の謎の提案に沙理弥は困った様子だった。
真面目に聞いた自分が馬鹿みたい、って思ってるかもしれん。
「いいからよこせって、友達になってやんねぇぞ」
子供みたいなセリフを俺は吐いた。
「海利君も食べたかったんだね」
彼女の言う通り、単純に腹が減ってたというのもある。
ライスとハンバーグだけで満腹だと言い聞かせたが、体は正直だ。
目の前に美味しそうな食べ物があれば、我慢するのは難しい。
俺は食べ終わったライスの皿を、彼女に近づけた。
「1枚でいいぜ」
「へいへい。っあ、アーンしてあげよっか?」
「恋人じゃねぇんだから、普通に渡せよ」
「そうだよね。……友達、だもんね」
沙理弥はにっこりと笑顔を見せた。
やっぱ、こいつには暗い顔は似合わねぇな。
俺はハチミツがたっぷりかかったパンケーキを1枚貰った。
甘いのは嫌いじゃないし、シンプルに旨そうだ。
「ねぇ、美味しい?」
「まだ食べてないだろ!」
俺はツッコミを入れながら、パンケーキを頬張った。
「……まじかよ、ファミレスのってこんなに旨いんだ」
「海利君、幸せそうな顔してるよ」
俺の頬は自然とあがってしまった。
きっと、いつもは見せないような表情をしてしまったのだろう。
こいつと勉強をしにファミレスに来なければ、これを食べることはできなかったのか。
正直に言ってしまうと、さっきの質問から逃れるために提案したことだった。
けどまぁ、パンケーキ1枚の友情も悪くはなかった。
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