転生したら自殺した元カノ似のモブ子に出会ったのでラブコメだけどハーレムから脱却します!

高見南純平

間違っていなかったんだ

 海利がどんどん彼に近づいていくので、俺はそれについていった。


 そもそもそれほど距離は離れていなかったので、すぐに彼の背中に追いついた。


 その背中が自分のものだと感じているのに、なんだか一気に緊張してきた。


 後ろをずっとつけていても怪しがられるので、海利はすぐに彼に話しかけた。


「あのすいません、ちょっと道を訪ねたいんですけど」


 学校の時や普段の時とは全くの別の、優しい声で海利は尋ねた。
 礼儀正しいのも出来るんだな。


「っえ、俺ですか?」


 突然話しかけられた彼は、戸惑いながら振り向いてくれた。


 うわー、間近で見るとまじでかっこいいな。
 こんな美形の人を俺って認めるの、なんだかこっぱずかしい。


 そんな彼を思わず凝視していると、彼のジャージに名前が縫われていることが分かった。


 花京院寛太かきょういんかんた


 聞いたことのない名前だ。
 田中尊とは全くの別名だ。


「すいません。一番近くの駅ってどこに行けばいいですかね?」


 海利は腰を低くしながら質問している。
 別世界の自分かどうか確かめるなんて言ったら、彼に不審に思われることは間違いない。


「ああ駅ですか。それならこの先真っすぐ行って、2個目の信号曲がれば見えてくると思いますよ」


 親切に細かく教えてくれた。
 俺ならスマホ使えばいいって言ってしまうかも。


 性格は一緒じゃないのかな。
 いや容姿が変わったことで中身も変化したとか。


 うーん、知れば知るほど違うんじゃないかと思ってきた。


「ありがとうございます。……あの関係のない質問なんですが」


「はい? まだ何か……」


 海利は彼に不審がられながらも、聞きたいことを聞いてくれた。
 こいつがついてきてくれて良かった。


「あの、バドミントンやられてるんですか?」


 自然にラケットの方に視線を移す海利。
 やっぱ自分を偽っているだけあって、こういうの向いてんだな。
 役者とかなればいいのに。


「っえ、ああーこれですか。はい高校の部活でやってます」


 やっぱりそうか。
 よく見れば、高校時代に俺が使っていたラケットケースに似てる。
 というか同じものだ。


「そうなんですね。僕たちも高校でやってて、気になってしまって」


 ほほ笑みながら上手く会話をする海利。
 出来るだけ怪しまれないように努めてくれている。


「あなたたちもですか。もしかしたら、どこかで会ってるかもしれませんね」


「かもしれませんね。……すいません、足止めさせてしまって」


「いいえ。もし道が分かんなかったら、近くに交番があるので聞いてみてください。それじゃあ」


「はい、ありがとうごまいした」


 花京院寛太は愛想よくお辞儀をしてその場を去った。
 俺と海利も自然と尾頭を軽く下げていた。
 結局、俺は一言も喋ってはいなかった。


「……はぁ、なんか妙に神経使ったぜ」


 海利は深いため息を吐いた。
 なんか海利に全部任せちゃって悪いことしたな。


「ありがと海利。近くで彼を見れてよかった」


「別にいいいさ。っで、結局どうなんだよ。部活は同じみてぇだぞ」


 海利におかげでなんとなくだけど、分かった気がする。
 彼が俺自身なのかを。


「同じ場所と家に住んでいて、部活や恰好も同じ。顔とか雰囲気は似てないけど、でも俺の説通りならきっと彼は俺なんだ」


 まだイケメンの彼が俺だなんて実感はないけど、ここまで証拠が揃っていては認めるしかない。


 分かっている事 〈追加〉


 その⑲
 花京院寛太というおそらくこの世界での俺が埼玉に住んでいる。
 イケメンで礼儀正しい。
 俺とは違う部分は多いけど、それ以上に一致している部分がある。
 バトミントンをやってるとか、住んでいる場所が一緒とか。




「そうか。改めてきくとおかしな話だな」


「確かに。けど、これではっきりした。俺のいた世界とこの世界はどこで繋がっているんだ」


 目に映る人間が全員美形で、周りの奴らは派手だから全くの別世界に来てしまったのかと思っていた。
 まさか、かなり酷似している世界だったなんて。


「てことはよぉ、つまり……」


 何かを察した海利は最後まで言わずに俺を見てきた。
 きっと俺と海利は同じことを考えていたんだと思う。


「ああ、つまり俺とあの花京院が一緒なように、下山真里菜と宝城詩織は同一人物なんだと思う」


 彼女が真里菜なのか今まで半信半疑だった。
 それでも、何もせずにはいれずにあれこれ作戦を考えた。


 俺が宝城詩織に近づき自殺の理由を探る。


 そのために周りの女子を遠ざけることにした。


 こんなことやって本当に意味があるのかと思う日もあった。


 けど、今わかった。


 俺のやろうとしていることは間違っていなかった。
 真実を知れるという意味では。


 宝城さんが真里菜であるなら、彼女は高校を卒業し大学で花京院寛太と出会うのだろう。
 そして、交際した1年後……彼女は自殺をする。


 どうしてなんだ。
 なんで自ら死を選んだんだ。


 やっぱり俺は知りたい。
 きっと知らなきゃいけないんだ。


 絶対に真実を見つける、俺はそう強く決意を固めた。

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