転生したら自殺した元カノ似のモブ子に出会ったのでラブコメだけどハーレムから脱却します!

高見南純平

もしかしてご褒美ですか?

 生徒会に絡まられたその日の帰り道。


「しつこいかも知れないけど、1位おめでとう!」


 隣では元気いっぱいの春乃が歩いている。


 今日は金曜日で来週から部活が再開するらしい。
 テスト週間の時もそうだったか、下校は春乃としている。
 途中まで海利も一緒だが、途中で方向が違ってくるのでそこまで3人で帰っている。


「そんなことないよ。ありがとう」


 段々と春乃との会話をスムーズに行えるようになってきた。
 だいたいあっちから話しかけてくるので、俺は丁寧に対応していけばいい。


「霧歌さん、喜ぶんじゃない。1位とったのはじめてでしょ?」


 心火の母親 霧歌さんは、噂によると成績には厳しいらしい。
 まあ、部活やってないわけだし当然と言えば当然か。


「だといいけど。春乃のほうは?」


「私? ほんのちょっと点数あがっただけだから、何にも言われないんじゃないかな。
 どっちかっていうと、部活のほう頑張ってるか心配されるし」 


 春乃もなかなか頑張ってたんだが、そんなものなのか。
 隣の家だけど、教育の方針は正反対そうだ。
 まだ、菜乃川家の人たちとはあっていなかった。


「そっか、まあでも春乃もお疲れ様」


「ありがとう」


 そこで少しだけ間が空いた。
 ほっといたらすぐに春乃が喋りだすだろう。
 特に彼女のほうはそれで不思議に思っていないので、普段からこんな関係性なのだろう。


 でも、俺は彼女に言わなければいけないことがあった。
 俺はまだ、あの時のことをちゃんと伝えられていない。


 と、考えていた時だった。


 俺たちは横断歩道の所で立ち止まった。
 歩行者用信号は赤く光っている。


 そう、ここはテスト前日に俺と春乃が立ち止まった場所だ。


 横を向くと春乃は鼻歌をしながら信号が青になるのを待っていた。


 きっと彼女にとって、あの時のことは特別なことじゃなかったんだ。


「ねぇ、春乃」


「ん?」


 軽い上目遣いでこちらを見てくる。
 機関車のように全速全身って時もあるけど、黙ってると純粋に綺麗だと思ってしまう。


「寝坊したとき、ここで止まってたよね」


「あ、そっか。この信号……」


 やっぱり彼女はおぼろげな反応をした。


「走り出した春乃が、また戻ってきたのには驚いたよ」


「あの時は私も混乱してたの。一度はおいてっちゃってごめんね」


 彼女は恩着せがましい態度を一切とることなく、それどころか謝罪の気持ちを伝えてきた。
 一度でも心火を一人にしたことを後悔しているようだ。


「謝らないで。僕は感謝してるんだ。戻ってくれて、心の底から嬉しかった」


「そっか、そう思ってくれてるなら嬉しい」


 春乃は顔を赤くしながら鼻を軽くさわった。
 照れてるのが丸和かりだけど、俺はそこは見ないふりをした。


「春乃、ありがとう」


 俺はしっかり言葉にして礼をいった。
 あのあとリムジンが来て助かったわけだけど、それも彼女が連絡をしていなければ来なかったはずだ。


「いいえ、どういたしまして」


 その屈託のない笑み、見ているだけでこっちも微笑んでしまう。


 彼女を遠ざけようと思う反面、何の罪もない彼女と心火の距離を引き裂こうとしていることに心が痛みだした。




「じゃ、また来週」


「うん、ばいばい」


 虎頭家の前で俺たちは解散をした。


 最初は二人でいて緊張しないのは海利だけだったけど、今は春乃とも自然な関係を維持できていると思ってる。
 ちょっとは演技力があがったかな?
 なんて自画自賛してしまった。


「ただいま~」


 家の玄関を開けているであろう霧歌さんに向けて言った。
 姉の華蓮さんは日によって帰りが違うし、双子の紫水はいてもすぐに友達と遊びにいってしまう。


「お帰りなさい、心くん」


 部屋着を来た霧歌さんが玄関までやって来た。
 飾り気のない格好なのに、美しさが滲み出ている。
 こんな母親が良かった……
 いや、こんなこと言ったら母さんに怒られるな。


 俺は独り暮らしだったから、家族とはたまにしか会ってない。
 だからからか、虎頭家の一員として過ごせることは案外悪くなかった。


「そうだお母さん、実は今回の中間テスト1位だったんだ」


 報告を終えると、一気に霧歌さんの目が輝きだした。


「ほ、本当に!? それはおめでたいことね!」


 おっとりとした印象だったが、急にテンションが上がった。
 そしてそのまま、俺のことを抱きしめた。


「ぐふっ」
  
 霧歌さんの大きすぎる胸が、俺の顔面に密着してきた。
 玄関の段差があるので、彼女の胸と俺の顔の高さが一緒だったのだ。


「こんなに嬉しいことはないわ! よくやりました」


「ちょ、く、苦しい」


 息が出来ない。だが、このままでもいいと思えるほどに幸せだった。
 殺されかけてるのは朝の副会長と一緒だったけど、幸福度がまるで違った。


「ごめんなさい。私ったらつい」


 取り乱したことに気がつき、俺から離れる霧歌さん。
 彼女のボディはまさしく殺人的だ。


「ただー」
「いまー」


 そこに華蓮さんと紫水が玄関にやってきた。
 華蓮は何故かスーツで、紫水は相変わらず露出度の高い制服を来ていた。


「あら二人ともお揃いなのね」


「紫水にそこであってさ」


「ママ、うち今日も遊びに行ってくるから」


「ダメよ、紫水ちゃん」


「え……」


 霧歌さんの反応に紫水だけじゃなく、俺と華蓮も驚いた。
 厳しい時はあるみたいだけど、基本的には放任主義だった。
 だから、出掛けるのに反対するところは見たことがなかった。


「うち、テスト期間まだなんだけど?」


「そうじゃないの。心火くんが、なんとテストで1位をとったみたいなのよ。ね?」


「え、うん」


「やるじゃん心火。姉さんは誇らしいぞ」


 今度は華蓮さんが俺にヘッドロックをしてきた。
 彼女もまた、例外なく巨乳だった。


「痛いよ、姉さん」


「何やってんだか。ママ、それがうちに関係あるん?」


 俺の順位を聞いても淡白なままの紫水。
 心火に興味なしか。


「もちろんあるわよ。1位を祝してレストランに行こうと思うの」  


 そのレストランというワードを聞いて、紫水の態度が一変する。


「マジ? もしかして、近所のところ?」


「そうよ。お父さんから、子供達に良いことがあったら連れていってあげてって言われてるから」


「さすがパパ、分かってるぅ。じゃあ、友達には行けないって連絡しておく」


 会話について行けないまま、話が進んでいく。
 ほぼ毎日遊んでた紫水が止めるって、そのレストラン相当美味しいだな。


「まだ早いから、それまで何着てくか決めといてね」 


「私はこのままで行こうかな」


「えー、お姉も着替えなよ」


「久々にお出かけね」


 レストランってこては、もしかしてドレスコードってことか。


 俺はタンスにある適当なやつ着てくかな。


 女性陣、特に紫水のやつはかなり張り切っていた。

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