転生したら自殺した元カノ似のモブ子に出会ったのでラブコメだけどハーレムから脱却します!

高見南純平

展開早すぎだろ!!

 各々が勉強をし始めて、早くも数十分が経っていた。


 現状としては俺が春乃に国語を教え、委員長がルニールに歴史を教え、沙理弥が海利を屈服させようとしていた。


「あーもう、作者の気持ちなんて作者しかわかるわけないじゃん!」


 国語ができない人間のベタな言い訳をする春乃。
 脳が全て筋肉になっていそうな彼女にとって、人の心を読み取るというのは難しい事なのかもしれない。
 俺は国語が一番得意だから、ある程度は教えることができる。


 というか、国語に関しては勉強の必要はほとんど必要ないと俺は思っている。
 漢字や慣用句などは別だが、物語を読めば分かることしか書いていないのだからこれほど簡単なことはない。


「大丈夫だよ春乃。答えはこの文章に眠ってるんだから、それをただ起こしてあげればいいんだよ」


「またそういうこと言って、自頭がいい人には私の気持ちは分からないんだよ」


 そういうこと言って、ってことは心火も同じようなことを以前にっていたということか。
 彼も国語が得意科目なおかもしれない。
 得体のしれない虎頭心火と、少しでも共通点が見つかってなんだか安心した。


 春乃に教えるのは余裕そうなので、俺は耳を反対にいる委員長の声に傾けた。
 俺も歴史を学ばなければいけないのだ。


「それでこの幕府が亡くなった年なんですけど……」


「1190年ではなくて?」


「最初はそうだったんですけど、今は諸説が色々あって、年代を答えるだけではなくその理由を答える問題が主流です。
 特に日本史の爆蓮ばくれん先生はそう言った問題が好きですから、暗記じゃなくて歴史の流れを覚えるのが重要になってきます」


 最初のおどおどした態度から一変し、まるで先生のような冷静かつ論理的な思考でルニールに教えていた。
 ルニールの方もその話を真面目に聞いており、なんだかいいムードだった。
 これは、俺がアシストするまでもないのか?


 こっちも意外と問題なく進んでいたので、チラッと海利たちの方に視線を移す。
 すると、急に空気が変わったかのように重々し語った。


「で、できた!」


 沙理弥がその場で作った軽い単語のテストを、海利が解いているようだった。


「違う。全部違うよ海利くん。脳みそ家においてきたの?」


「いや、ここにちゃんと詰まってるけど」


 上手くいっているのかはよくわからないが、一応勉強はしているようだった。
 沙理弥は変なスイッチが入ってしまったのか、鬼教師と化している。


 いや、他のみんながそれほど不思議がっていないところを見ると、このドSな彼女が本当の姿なのだろうか。


 そしてさらに一時間ほどたって頃、部屋に執事の駒岸さんが再び現れた。


「失礼いたします。よろしければ、休憩にマカロンでもいかがでしょうか」


 彼女が運んできたケーキスタンドについた三つの皿には、多彩な色をしたマカロンがいくつも盛り付けれれていた。


「おいしそう! いただきまーす」


「駒岸のマカロンは絶品ですわよ」


 これ、駒岸さんの自作かよ。
 やっぱ執事ってすごいんだな。


 ルニールの言った通りマカロンは、とんでもなく美味しくいくらでも食べれそうなほどだった。


「おいしい~」


「手が止まらないよ~」


 女子二人が惜しみもなくマカロンを口に運ぶ。
 その姿を見てると、普通の女の子なんだなと思えた。
 おやつ一つで幸せを感じれる、女子高生らしいとこもあるんだな。


 思えば女子三人は発育が異様にいいくせに全く太っていない。
 マカロンの食べぶりからすると、特にダイエットをしているわけでもないようだし、俺の世界の女子が見たら恨むだろうな。


「じゃあ、俺ももらおーと、ってあれ?」


 海利が手を伸ばし多頃には、皿の上には何も乗っていなかった。


「おい、お前ら食べすぎだろ! まだ1分もたってねぇぞ!」


「海利くん、食事とはスピードなんだよ~」


「そうそう。つまり、早い者勝ちってこと。駒岸さん、ごちそうさまでした! とっても美味しかったです」


 謎に勝ち誇っている沙理弥と春乃が、いつも以上に海利を煽っている。
 さすがに可哀想に思えたけど、普段の行いがああじゃ仕方がないか。


「あ、あの駒岸さん。まだ残ってませんかね?」


「申し訳ありません」


「ですよね、大丈夫ですから」


「いえ、在庫はまだあるのですが、お嬢様から唐石様のことは何ももてなさなくていいと言われてる者だ」


 その駒岸さんの言葉で、空気が一種止まった。
 それを知らなかった俺たちは、笑いを堪えるのに必死だった。
 執事にまで冷たい反応をされるとは思ってもみなかった。


「ルニール、貴様ぁぁ!!」


「家に招き入れただけでも感謝しなさい」


 やはり、招かれざる客の約一名は海利のことだったようだ。


「さ、勉強の続きをしましょう」


「はーい」


 マカロンが下げられると、再び一同は勉強モードに戻った。
 海利だけは不満そうだったけど。


「あのルニールさん。今度は僕に英語を教えてくれませんか? リスニングが苦手で、ルニールさんなら上手に話せますよね?」


「もちろんですわ。英語なら私に任せなさい」


「あ、ありがとうございます!」


 二人の関係がスムーズにしすぎてて、俺が歴史を教えてもらうのは少し先になりそうだ。
 ま、今日は春乃との約束果たすことに勤めるかな。


「委員長、私からお願いがあるのだけれど、聞いてくれるかしら?」


「もちろん、僕にできることならなんでも!」


「じゃあ、私の家庭教師になってくださらない?」


 これは急展開!。
 一気に二人の距離が縮まるどころじゃないぞ。


「か、家庭教師ですか!? 僕がこんな豪華な家で、ルニールさんに?」


「えぇ。歴史の家庭教師を探していたのだけれど、いい人が見つからなくて。
 学年2位のあなたなら、お父様も了承して下さいますわ」


「ルニールさんが良いなら、僕は大丈夫です!」


「よかったですわ。……駒岸、準備を」


「かしこまりました」


 そう言ったやり取りがあったすぐに、駒岸さんが文字の書かれた紙とペンを持ってきた。
 その紙には、家庭教師として働く契約の内容が書かれていた。
 いや、展開早すぎるだろ。


「え、今ここでですか?」


「善は急げですわ」


 契約書に興味を惹かれた俺たちは、委員長の周りに集まり内容を確認した。


 そこに記された報酬の項目で、全員の目が留まった。


「1時間1万円!?」


 声を合わせて俺らは驚いた。
 自給1万円て、そんなバイト話が良すぎる。
 俺がやりたいぐらいだ。


「これでも少ないぐらなのです。
 学生ということでこれぐらいの報酬になりますが、長期間やっていただき尚且つお嬢様の成績が上がれば、さらに成功報酬ということで追加でお支払わせていただきます」


 務めるなら金持ちの家に限るなこれは。


「まずはこのテスト期間だけでいいですわ。放課後毎日来てくださる?」


「ま、毎日ですか!?」


「えぇ、報酬以外にも英語なら少し教えれますわよ」


「る、ルニールさんと二人きりで……しかも毎日……」


 委員長は報酬の額よりも、ルニールと入れることが嬉しいらしく何やらよからぬ妄想をしていた。
 そして、それが頂点に行ったとき、委員長の鼻から鼻血が流れてきた。


「い、委員長っ! 血、血!」


 俺は慌ててティッシュをとり、委員長に渡した。


「ご、ごめん。僕にまだ早すぎたかもしれない……」


「な、何を想像したの委員長……」


 エロいこと想像して鼻血が出るなんて、本当にあるんだな。
 この世界の人間は、純粋な奴が多いのかもしれない。




「あ、あの、お誘いは嬉しいんですけど、実は虎頭くんと唐石くんにも勉強を教える約束をしてまして。
 よかったら、二人も一緒にではダメですかね?」


 そうだ、肝心なことを忘れていた。
 毎日委員長がルニールにつきっきりってことは、俺に教える時間がないってことじゃないか。
 それは困るな。
 二人の恋路も大事だけど、もともとは俺が教えてもらうために委員長に話しかけたのだ。


「……そうでしたか、約束では仕方ないですわね。
 では虎頭心火のみ認めましょう」


「おい、俺を省くんじゃねぇ!」


 スムーズにメンバーから除外された海利は、当然つっかかっていった。
 こいつ、ルニールにめちゃくちゃ嫌われてるな。


「ちょ、ちょっと! 約束なら私も心火に教えてもらう予定なんですけど!」


 俺は約束という言葉を武器にする春乃をみて、軽い気持ちで引き受けてしまったことを後悔していた。
 結構人に教えながら自分も勉強するのって大変なんだよな。


「そんなこと言うなら、私も海利くんと約束してるよ。ね?」
「身に覚えのない約束を追加するな!」


 そこから、論争は誰が最初に誰と約束をしたかにヒートアップしていった。
 こいつら仲は良いんだろうけど、全員自己主張がありすぎて論争に発展しやすいんだな。


「はぁ、もう分かりましたわ。皆さん、またいらっしゃって構いませんわ」


 その鶴の一声で、事態はすぐに収束した。


 結局また、今日みたいに勉強会ってことか。


 楽しい毎日になりそうだと思う反面、騒がしくて勉強に集中できるか心配になってきた。

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