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闇を抱えた勇者は世界を救う為に全てを飲み殺す~完結済み~

青篝(夢八)

黄金の扉

太陽が遠くの空に薄らと見えて、
街の人々が帰路に着く夕暮れ時。
昼間の喧騒が嘘のように感じられる
人のいなくなった街を
俺達は歩いていた。
俺とシイラだけでなく、
フィユとチュニ、アユも一緒だ。
全員で話し合った結果、
俺とシイラに何かがあった場合に
フィユが取り残されるのを防ぐ為に、
全員で赴くことになったのだ。
アユをシイラに背負わせ、
俺とチュニは周囲を警戒しながら
ザンマのいる城を目指す。
城の場所を唯一知っている
シイラを先頭に歩く俺達は、
何だか泥棒のようだった。

「深慈君、着いたよ」

シイラが立ち止まって、振り返る。
だが、わざわざ言われなくとも、
城に着いたことくらい分かる。
というか、城の場所なんて
シイラに案内させなくたって
顔を上げれば城が見えるのだから。
それ程に、ザンマのいる城は
巨大で強大な代物だった。
シンガルの城と比べても
見劣りしないタアラの城。
それはシンガルの赤を基調にした
豪華な城とは違い、
白地に緑と黄色のデザインをした
落ち着いた雰囲気の城だった。

「貴様ら、何者か」

その城の3m越えの門の前で、
俺達は槍を向けられた。
彼らは昼に会った近衛兵団長のクレと
同じような鎧を装着しており、
一目で彼らが近衛兵団の騎士と分かる。
いや、いきなり武器向けるなよ。
殺されてぇのか。

「お前らの王からの呼び出しだ。
……これがその証拠だ」

俺はアイテム袋から
ユーカリの紋章を取り出し、
彼らの前に突き出した。
この紋所が目に入らぬかーって、
一度はやってみたかったんだよ。

「…ふむ。貴方達がザンマ様の
勅命を受けた方でしたか。
これは無礼を致しました。
どうぞ、ザンマ様がお待ちです」

俺が見せつけた紋章を
じっくりと凝視した後、
槍を降ろして
門兵は門を開けてくれる。
彼らの前を横切る際、
体全身に穴が開きそうな程に観察され、
シイラ達にもその目が向けられると
俺は彼らを睨みつけた。
中には悲鳴を上げる奴もいたが、
俺は気にせずに先に進む。

「広い…」

王族の城らしい、
ただ土地を無駄にしているだけの
広い廊下やエントランス。
黄金のシャンデリアが吊るされ、
高級そうな壺がいくつも置いてある。
物珍しくフィユは周りを
キョロキョロしながら歩き、
シイラに着いていく。
そのシイラはというと、
豪勢な代物には一瞥もくれずに
無言で歩いていた。

「……」

そして、シイラの足が
ある扉の前でピタッと止まる。
2mはありそうな、
全てが黄金で作られた扉だ。
ドアノブから鍵穴まで、
キラキラと輝いている。
考えなくても分かる。
この黄金の扉の先に、
タアラの現国王であり、
シイラの父親であり、
俺をこんな場所に呼びつけた張本人、
ザンマ・メイズ・タアラがいる。
シイラは背中のアユを背負い直し、
扉に右手を伸ばす。
しかし、その手は扉に触れる前に
力なく下ろされてしまう。
見れば、シイラは震えている。
自分から会いたいと言った手前、
今さら引き返すことは出来ない。
だが、やはり恐怖という感情が
シイラの中に渦巻いているのだろう。
自分と母親を捨てたような人間に、
自分が何をすればいいのか。
何かした所で何か変わるのか。
ザンマの怒りを買って
自分達は殺されはしないか。
一度負のループに嵌ると、
自力で脱出するのは困難を極める。
だからと言って、
ここで俺が扉を開くのは
シイラが許してはくれない。
今の俺がするべきなのは、
震えるシイラの手が再び動くのを
後ろから見守ってあげるだけだ。
そして、決心がついたシイラの手が
その扉を開けるのは、
それから約5分後のことになる。

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