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闇を抱えた勇者は世界を救う為に全てを飲み殺す~完結済み~

青篝(夢八)

近衛兵団長クレ

彼女は申し訳なさそうに頭を下げ、
俺が書いた報告書を
そっと俺の方へ戻す。
俺はそれをポケットに押し込み、
長居しない内にギルドを出た。
国王の所か…。
はっきり言って、行きたくない。
アユの一連の話を聞いて、
この国の有様は大方把握した。
好き勝手に暴れる国王の息子、
何の罪も無い人を見せしめに殺し、
それに対して何の不満も感じない民。
この国がどれだけ狂っているのか、
そう考えるだけで吐き気がする。

「くそったれが…」

俺は悪態をついて、
そろそろ宿屋に戻ろうかと
足を宿屋に向けた。
が、俺の歩みは邪魔される。

「君、少しいいか」

俺のことを取り囲んでいたのは、
重そうな甲冑に身を包んだ
いかにも兵士という感じの男達だった。
彼らは俺を逃がすまいと
左右と後ろに回り、
未だにフードを被っている
俺の顔を覗き込んでくる。

「…ダメだ。俺は急いでいる」

俺は物凄く嫌な気配がしたので、
そそくさと正面切って
逃走を試みたのだが、
後ろから肩を掴まれて
動きを止められた。
それも、かなり強い力で。
逃げようと思えば
簡単に出来るのだが、
それをすると余計に
面倒になると思ったので
俺は大人しく従うことにした。

「…俺に何の用だ」

肩に乗せられた手を
強引に剥がして、
俺はフードを被り直す。
すると正面にいた男は、
顔の甲冑を上に上げて顔を出した。
ツンツンヘアーの金髪と
鋭く眼光が特徴的な
ハンサムな野郎だった。

「私は、クレ・ワガだ。
このタアラの近衛兵団、
ユーカリの団長をしている。
君の名前は何という?」

ユーカリの兵団長…か。
シイラがいなくなってからは
こいつが後を継いでいるのか。
腕っぷしも強そうだし、
部下から慕われそうな顔をしている。
なぜ、こいつではなく
先にシイラを団長にしたのか
不思議に思えてくるほどだ。

「…マシュー・ペリーだ」

俺は面倒なことは嫌なので、
とりあえず嘘をついた。
俺のいた世界でペリーのことを
知らない人はいないが、
さすがのペリーも
この世界には存在しないだろう。
その内、黒色の船に乗って
国交を結べとか言ってくるかもしれんが、
その時はタアラの国王が
どうにかしてくれるはずだ。

「そうか。ペリーというか。
では聞くが、君は我が近衛兵団、
ユーカリの者と面識はあるのか?」

俺は内心でドキッとする。
そして、確信した。
こいつは俺がユーカリの者と、
もといシイラと面識があることを
何かの経緯で知っている。
そうでなければ、
こんなにもはっきりとした口調で
言ってくるはずがない。

「…ある訳ねぇだろ。
俺はただ、この世界を旅してる
しがない暇人なだけさ」

しかし、それでも俺は嘘を言う。
ここでこいつの言い分を認めれば、
何かとんでもないことに
巻き込まれそうな気がするのだ。

「君が元近衛兵団の者と
一緒に歩いている所を
目撃した部下がいるんだよ」

クレはその鋭い眼光をキッと細めて、
俺のフードを覗き込んでくる。
なんだ、目撃者がいるのか。
別にやましいことなんて
何もないのだが、
ここはもう諦めて
正直に言うしかなさそうだ。

「はぁ…分かったよ。降参だ。
俺はあんた達の元上司のシイラと
一緒に旅をしています。
…これでいいか?
本当に急いでいるんだが」

両手を挙げて、
わざとらしい溜め息を吐いて、
俺は嫌味な雰囲気で言った。
俺が正直に言うと、
クレは勝ち誇ったような顔をして、
部下から受け取った
1本の青い筒を渡してきた。

「君が素直な人で良かったよ。
いつまでも認めないのなら
強引に連れていって
拷問しなければいけなかったからね」

頭のおかしいことをサラッと言ったな…。
こいつが団長で近衛兵は大丈夫なのか?

「では、また城で会おう。ペリー」

また会おうだとぅ?
何を意味深なことを言ってんだ。
と、文句の一つでも
くれてやろうと思ったが、
俺が何かを言う前に
クレは部下を連れて
去っていってしまう。
俺は筒をアイテム袋に片して、
シイラ達の待つ宿屋に帰ることにした。

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