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闇を抱えた勇者は世界を救う為に全てを飲み殺す~完結済み~

青篝(夢八)

まず、腹だな

あの面影、どこかで見たような。
まるで初めての感じがしない。
しかし、全く思い出せない。
分かるような、分からないような。
一体、あれは誰だったのだろうか。

「…ぅん?」

背中や腰の痛みを感じながら、
俺は目を覚ました。
いつの間にか、洞窟の中で
寝てしまっていたようだ。
いや、寝ていたというよりは、
気を失っていたのか。

「そうか…暗闇を引っこ抜いて、
気絶してしまったのか」

寝息が聞こえたので
周囲を見渡すと、
チュニ、シイラ、マーレは無事で、
固まって寝ていた。
俺は盗難に遭ってないか
アイテム袋を確認して、
それが済むと改めて
周囲を見渡した。
そこは既視感のある場所で、
俺達が休憩をした場所に見える。
休憩をした痕跡は残していないし、
洞窟内にこうした広けた所は
他にもあるだろうと思うので、
一概に同じ場所とは言えないが、
確かに似ている。
いや、一つ違う所があった。
俺の前方約10m先、
一人の女性が座っていた。

「………」

彼女は何も言わない。
俺に気づいているはずだが、
彼女は微動だにせず、
じっと座っているだけだ。
腰まで伸びた青色の髪と
綺麗に澄んだ紫色の瞳。
真っ白な純白のドレスを纏い、
その姿はとても美しい。
あの女性に相応しい言葉を
当てはめよと言われたら、
俺は迷わずに『花嫁』と答えるだろう。
その美しい彼女の姿に、
思わず目が釘付けになる。

「う…ん?ここは……?」

美しい彼女の姿に見惚れていると、
シイラが目を覚ます。
シイラは痛そうに
腰をさすりながら、
周囲に視線を彷徨わせる。
その視線の中で
俺のことを捉えると、
シイラは安心したような表情をする。
そして、さらに目線を巡らせ、
彼女の姿を見る。

「わぁ、綺麗な人…」

女性であるシイラでさえも、
彼女に見惚れてしまったようだ。
シイラの紫の瞳に、
ドレスの純白が映える。
俺は立ち上がり、
体についた土を払う。

「シイラ、チュニとマーレを
起こしてやってくれないか。
俺は危険がないか確認してくる」

「はーい」

子どものように間の抜けた
返事をするシイラを背にして、
俺は周囲を散策しに行く。
広さにして、
学校の教室3つ分くらいか。
俺達が休憩を挟んだ
あの場所ではないようだ。
あそこには水溜まりがあったが、
ここにはないし、
見たことのない形の
カギのような物が転がっている。
これからの旅で
使えそうな物は落ちておらず、
とりあえず謎のカギを拾う。
魔物の痕跡がないか、
出入口付近までしっかりと確認して、
俺はシイラの元に戻る。
ちょうどチュニとマーレが
起きたところだった。

「お前ら、腹は減ってないか?
体の具合も悪くないか?」

俺が呼びかけると、
3人は体のあちこちを手で触り、
自分に異常がないか確認する。
俺が見た感じでは大丈夫そうだが、
何も問題ないことを祈る。

「体は問題ないが、
吾は腹が減ったぜ!」

「私も大丈夫だけど、
小腹が空いてしまいましたね」

「わ、私も、お腹が空きました…」

皆、体の状態は同じらしい。
実は俺も腹が減っているし、
一度ここで休憩をしよう。
後ろにいるあの女性が気にはなるが、
いきなり襲ってはこないだろう。

「じゃあ、ちょっと休憩だ。
あの女の人は後で話しかけてみよう。
で、チュニは一応警戒しといてくれ」

「了解だぜ!」

腹ごしらえもそうだが、
やる事はたくさんある。
あの女性も気になるし、
俺達が今洞窟のどこにいるのか
正確な位置を把握したいし、
洞窟に入ってから
どれくらいの時間が経過したのか、
今は朝か昼か夜か、
俺達を襲った睡魔や暗闇は
一体何だったのか。
気になる事はたくさんある。
だが、ひとまず腹を満たして、
今後の事を話し合おう。

「――?」

俺がパンを齧ったその時、
不意に背後から視線を感じた。

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