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闇を抱えた勇者は世界を救う為に全てを飲み殺す~完結済み~

青篝(夢八)

洞窟に到着

凍れ、凍れと
一人でブツブツ言うこと数時間。
結局何も進歩しないまま、
竜車は目的地のオアシスに着いた。
氷の魔法に夢中になって
外の景色を見ていなかったのだが、
目の前にそびえる洞窟に
俺は興奮を覚えた。
まさに未知の空気を纏ったそれは、
高さは5メートル程あり、
ワニが口を開けて
獲物を待ち構えるが如く、
フラっと入れば二度と
出てこれないような
異彩な雰囲気に満ちていた。

「主、魔物の匂いがぷんぷんするぜ」

チュニのいう、魔物の匂いを
俺も絶賛堪能中だ。
いくら洞窟に近いといっても、
まだ洞窟の入口にも立っていない。
だが、鼻腔を刺激する魔物臭が
こちらに届いている。
オークの泥塗れの家畜臭、
ゴブリンの腐敗した死体の臭い、
ウルフの獣臭、
ディープ・シャドウの
炭のような臭い。
ざっと挙げるだけでこれだ。
他にも様々な匂いがするし、
ただならぬ怪物の匂いもする。

「…人も死んでるな」

魔物の匂いに混ざって、
人の匂いもする。
それも死体の。それもたくさん。

「深慈君、竜車は隠したよ」

竜車をオアシスの木の影に
隠していたシイラが戻ってくる。
マーレをしっかりと
背中にくっ付けて。
俺には便利なアイテム袋があるので、
竜車に盗まれるような物はないが、
帰るのが大変になるし、
地竜が割と可愛い顔をしていたので
何となく大切にしてやりたい。

「じゃあ、行くか」

洞窟の前に立ち、
中を覗き込んでみる。
暗く、ここからでは
中の様子はほとんど分からない。
さて、最初の一歩を
踏み出そう――とその前に、
俺達の装備と所持している
アイテムを確認しておこう。
まず、俺の装備は、
簡単に言えば軽装だ。
胸当てと、手足につけた装備の他は、
一本の青銅を持っている。
勇者らしく、
剣にしようかとも思ったのだが、
殺傷力の高い剣よりも
耐久性のある青銅棒の方が
俺にはしっくりきた。
続いてシイラの装備は、
ライオの時とほぼ変わらず、
軽装に細剣だ。
が、今回はシイラの要望で
投げナイフを大量に持っている。
次にチュニだが、
何も身につけてないし、
何も持っていない。
本人によると、ライオの時は
カッコよさそうだったので
ドワーフ達の装備を身につけたが、
戦闘の際に邪魔だったらしい。
だから、今回はチュニは
何の装備もない状態である。
悪魔ゆえに許される全裸。
全く、けしからん奴だ。
最後にマーレの装備だが、
フード付きコートを
一枚羽織っているだけで、
装備と言える装備はしていない。
いや、良く見たら
20センチくらいの
魔法の杖みたいなのを持っている。
どうやら、戦闘における
後方支援の役割をしてくれるようだ。
そして、アイテム類だが、
光源の松明たいまつ…は
チュニが光属性の魔法を
使えるというので不要。
回復用、解毒用、魔力回復用、
身体強化用の各種ポーション
(きちんと信用できる店で
買っておいた)、
対魔物用の毒薬、煙幕等など、
とりあえずはこんなものだ。

「皆、準備はいいな?」

チュニはわくわくを
抑えられない、という様子で
勢いよく返事をして、
シイラはいつの間にか
近衛兵団長の目つきに変わっており、
マーレは足を震わせながらも、
しっかりと首を縦に振る。
正直に言って、俺は怖い。
下手をしたら死ぬかもしれないし、
この中の誰を失うかもしれない。
だが、それでも俺は進むだけだ。
一応はリーダー的存在である俺が
こんな所で怖気付いていては、
後ろに向ける顔がない。

「――行くぞ」

覚悟を決めて、
俺はその足を踏み出した。
この先の暗黒に待ち構えるのは、
果たして絶望か、恐怖か。
はたまたこの世界の終わりか。
俺は、心臓がドクンと
激しく鳴るのを感じていた。

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