闇を抱えた勇者は世界を救う為に全てを飲み殺す~完結済み~

青篝

氷属性の気質

国門で検問を受けてから、
俺達はタアラの外に出る。
シイラのことだったり
マーレのことが心配だったが、
衛兵の二人は何も言わずに
門を通してくれた。
どうやら、シイラのことは
もう元近衛兵団長とか
そんなこともどうでもよく、
マーレのことも
国で追いかけ回している
訳でもないようだ。
俺は竜車に揺られながら、
この世界の地図を広げ、
タアラ周辺を観察する。
いや、正確には、この大陸の地図だ。
今俺がいるこの大陸――
ズーイタミ大陸というらしい――は
この世界で最も大きな大陸で、
所々に洞窟やら遺跡があり、
巨大な森林地帯もあれば、
砂漠のような地帯もある。
そんでもって、
ここから目的地の洞窟は、
そう遠くない。
ドワーフの国のライオに行く方が
よっぽど遠く、休めるような
ところもなかったので、
疲れが溜まる一方だった。
がしかし、今回は遠くもないし
洞窟の近くにオアシスがある。

「お前ら、今日の予定が決まった。
洞窟近くのオアシスに竜車を止めて、
とりあえず洞窟を軽く散策する。
もし行けそうだったら、
今日で魔物共を掃討して、
ヤバそうだったら
一旦引き返して明日もう一度行く。
それでいいか?」

竜車の後ろから前に向かって
俺は声をかけると、
前から各々の返事が聞こえる。
マーレの声も微かに聞こえたので、
俺は少し嬉しくなる。
さて、あとは着くのを待つだけだが、
起きたのがついさっきなので
ちょっと一眠り、
という訳にもいきそうにない。
どうしようと思い、考えていると、
ふとある事を思い出した。

「そういえば…」

右手の指を合わせ、振る。
最後に指を鳴らして
俺はステータスを呼び出す。


(種族)人間 (影の勇者)
(名前)千夜 深慈
(能力値)体力 8000
     攻撃 4000
     防御 4000
     俊敏 4200
     魔力量 1600
     知力 9000
     精神力 34000
     魔法耐性 6000
(魔法気質)闇 氷
(固有能力)『絶対的主人ブラッドウィン
   ――使い魔に命令できる。
      『比例強化性ビルドビルド
   ――主人が強くなる度に
     使い魔も強くなる。
      『闇の所有権シャドウキラー
   ――己の闇を操る。
     能力を持つ者が強くなる程、
     闇の力は増し、融通も利く。
      『力を我が手中にブラックホール
   ――闇の力で対象の力を飲む。
     鍛錬すればその力も使える。


(固有能力)の欄は、
今見ても特に変わっていない。
しかし、俺が気になったのは、
そこではなく(魔法気質)の欄だ。
『闇 氷』
闇は分かるが、
なぜ氷の気質まであるのか。
氷属性の魔法を使った覚えはないし、
てっきり俺には
闇属性の気質しか無いのだと思っていた。
が、結果として、
俺は自分でその疑問を解決できた。
まあ、確証がある訳ではないが、
おそらくそういうことだろうと
納得できる理由を、
俺は見つけたのだ。
それが、(固有能力)にある、
力を我が手中にブラックホール』だ。
闇の力で対象を飲み込み、
自分の力とする能力。
言ってしまえば、
コピーのような能力だと思うのだが、
こういう能力はチートだろう。
相手を力を自分も使える、
つまりは何でもできるってことだ。
そう、それが最強。
そして、いつ俺が氷属性の魔法を
取り込んだのかというと、
シンガルで雪の勇者である雪乃の
魔法で氷漬けにされた時だ。
あの時はまだミシリディアから
闇の力を解放される前だから
若干の疑問は残るが、
随分の長い間氷に閉じ込められていたし、
その際に氷属性の気質を
手に入れていても不思議はない。

氷河時代アイスエイジ

某海賊漫画の某人物の技を
試しに唱えてみたが、
竜車の木の板は何ともならず、
俺の手が凍るようなこともなく、
少しの冷気も
発することができなかった。
きちんと使えるようになるには、
鍛錬が必要ってことか…。

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