闇を抱えた勇者は世界を救う為に全てを飲み殺す~完結済み~

青篝

俺のステータス

正直、このチュニのステータスが
高いのか低いのか、
俺にはよく分からないのだが、
チュニは他の種族とは違い、
神の親戚みたいな物らしいから、
おそらく高いのだろう。
しかし、能力値より気になるのは、
(固有能力)の項目だ。
『絶対的服従』、『失われる命』、
『神様の末裔』。
端的に言えば、俺に逆らえず、
俺より先に死んで、
死に際に人を殺せる。
前2つは使い魔としては
当然のような能力の気がするので
別にいいのだが、
最後の『神様の末裔』は
名前とは関係なしに
物騒な能力である。

「なぁ、チュニ。
お前のステータスって
この世界じゃ高いのか?」

「んー、何とも言えねぇな。
確かに吾は神ミシリディアの
血を受け継いでいるから、
魔物の中だと高い方だが、
主がまだまだ頼りない分、
吾のステータスも
そこまで高い訳じゃない。
まぁ、主のステータスを
確かめてみて、
それから判断してくれよ」

俺はチュニに促され、
自分のステータスを見ることにした。
いや、さっきから自分のステータスが
気になって気になって仕方がない。
右手の指を揃えて、
手刀を正面、右、左に振る。
それから、パチンと指を鳴らす。
小6の頃から毎日のように
指を鳴らす練習をしておいて
本当に良かった。
今、物凄くいい音が鳴った。
そして、俺の眼前に表示された
輝かしいステータスが
以下の通りである。


(種族)人間 (影の勇者)
(名前)千夜 深慈
(能力値)体力 8000
     攻撃 4000
     防御 4000
     俊敏 4200
     魔力量 1600
     知力 9000
     精神力 34000
     魔法耐性 6000
(魔法気質)闇 氷
(固有能力)『絶対的主人ブラッドウィン
   ――使い魔に命令できる。

      『比例強化性ビルドビルド
   ――主人が強くなる度に
     使い魔も強くなる。

      『闇の所有権シャドウキラー
   ――己の闇を操る。
     能力を持つ者が強くなる程、
     闇の力は増し、融通も利く。

      『力を我が手中にブラックホール
   ――闇の力で対象の力を飲む。
     鍛錬すればその力も使える。


ふむふむ、なるほどなー。
知力はそこそこあって、
精神力は万超えかー。

「…これって、チュニより
俺の方が弱いってことだよな?」

「今はそうだな」

使い魔より弱い主人ってどうなんだよ!
仮にも俺、勇者だよな!?
何でこんなに弱いの!?
案の定、『勇者』としての
固有能力もないし、
精神力のこの数値って
闇に対する耐性みたいなもんだろう。
そのおかげか、
魔法耐性はそれなりにあるけど、
戦闘における基本ステータスが
低過ぎやしないだろうか。

「だけどな、主」

項垂れる俺に、
チュニは諦めるのはまだ早いと
そう声をかけてきた。

「そこに書いてあることが
全てって訳でもないんだぜ」

チュニの言葉に俺は目を丸くする。
ステータスに書いてあることが
全てではないとは、
一体どういうことなのだろうか。

「能力ってのは気分屋でな、
ステータスに出たり出なかったり、
発動したりしなかったりするんだ。
主の場合、耳が異常に良くなったり
したことがあるだろ?
そんな感じで、能力ってのは
たまに顔を出すのさ。
だから、気にするな。
基本ステータスも鍛えれば
主ならすぐ上昇するさ」

俺はふむふむと言いながら
チュニの話を聞いていた。
確かに、チュニの話は納得できる。
まだシンガルにいた時、
離れた部屋の会話が
聞こえてきたことがあったし、
それを今やろうとしても
俺には何も聞こえない。
おそらくは、マーレが持っている
固有能力に似たような能力が、
俺の固有能力にも
存在しているのだろう。
今は顔を隠しているだけで。
それに、基本ステータスも
多分すぐに鍛えられる。
根拠は特にないが、
実を言うと戦いの度に
自分の中の力が強くなっているのを
俺は微かに感じていたのだ。

「ありがとう、チュニ。
おかげで色々助かった」

チュニに礼を言うと、
チュニは俺に笑顔を返して、
枕の横に寝転がった。
俺もベッドに横たわり、
静かに目を閉じる。
明日は出発前にシイラとマーレの
ステータスも見てみようかな。

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品