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闇を抱えた勇者は世界を救う為に全てを飲み殺す~完結済み~

青篝(夢八)

食ったら寝る

お腹が満たされると、
今度は睡魔に襲われた。
でも、ここで眠るわけにいかない。
空腹のあまり、
差し出されるままに
パンを食べてしまったが、
そうやって油断させて
眠っている間に
監禁でもされたら、
それこそ一巻の終わりだ。

「眠いなら、
寝れるうちに寝ておけ」

ウトウトしていたのがバレたのか、
男は私にそう言ってきた。
この男からは、
今までに出会った男にはない
暖かさがある。
でも、もしそれが仮初の姿なら。
私を陥れる為の演技なら。
――ダメだ。
私はこんなところで
終わりたくなんてない。

「大丈夫?」

次は男ではなく、
女性の方が話しかけてきた。
艶やかな銀髪を腰まで伸ばして、
紫色の瞳がとても綺麗だ。
女性なら誰でも憧れる
凹凸のある体つきに、
私は一瞬見惚れた。
女性は私の顔を覗き込んで、
優しい眼差しで見つめてくる。

「不安なら、
私と一緒に寝る?」

女性は私の心を読んだのか、
そう提案してきた。
女性は男の方に、
別にいいでしょ?と確認すると、
男は考える素振りも見せずに
構わねぇよ、と返事をする。

「見張りは任せておけ」

最後にそう付け足して、
男は私を見る。
穏やかな顔だった。
前髪が長く、
はっきりとその全貌が
見える訳ではないが、
私は聞こえた気がした。
――安心しろ、と。
男は口を動かしていないのに、
私の心には聞こえた。
だからか分からないけど、
私は睡魔に勝ちを譲った。
ゆっくり瞼を閉じると、
私の意識は遠い所に消えた。

「フフっ、可愛い寝顔」

「…そうだな」

シイラに体を預けるように
眠っている少女は、
すぐに寝息をたて始め、
シイラが頬をつついても
起きる気配が全くない。
シイラは少女をベッドに寝かせると、
自分も少女の横に横たわる。
少女の青色の髪を撫でて
シイラは優しく微笑むと、
大きなあくびをして
眠ってしまった。
俺はその様子を見守っていたが、
まるで二人が親子のように見えた。

「主、吾も少し寝るぜ」

まだ昼過ぎだというのに、
チュニも眠そうにしている。
ゆっくりとチュニは二人の
枕元に飛んでいって、
そっと降り立つ。
足と手でベッドの感触を確かめてから、
チュニは羽を折りたたんで
ベッドに横になった。
二人のこの安らかな寝顔を
見ていたら誰でもそうなるのだろうか。
心なしか、俺も眠くなってきた。
だが、ここで俺が寝ては
見張りの役割を果たせなくなる。

「そういえば、名前聞いてないな」

名前も知らぬ少女を匿って、
男達に追われる前に
宿の場所を変えたのはいいが、
これからどうすればいいのだろうか。
俺としては、
いずれ来る戦いの為に
情報を集めたり
強くなったりしたいのだが、
今さら少女を放ってはおけない。
まぁ、何にしても、
俺一人が考えたところで
どうにもならない訳で、
とりあえずは少女の話を聞いて
今後の方針を決めようか。

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