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闇を抱えた勇者は世界を救う為に全てを飲み殺す~完結済み~

青篝(夢八)

少女の悪夢

少女はうなされていた。
悪夢を見ていたのだ。
とても、とても悪い夢。
怖い顔をした男の大人達に
いつまでも追いかけられ、
捕まると服を破かれた。
悲鳴を上げても
誰も助けてくれず、
抵抗しても大人に
力で敵うはずがなかった。
物心ついた時から
タアラの貧民街で育ち、
歳の近い仲間達が
街から盗んできた食べ物で
毎日をやり過ごしていた。
が、自分もみんなの役に立ちたいと思い、
金持ちから金目の物を盗んだり、
屋台に並ぶ食べ物を
盗んで走ったりしていた。
そんなことを続けていると、
怖い大人達に捕まり、
幼い体を蹂躙された。
そして、全てが嫌になって、
逃げ出したいと思った時、
少女はあることに気づいた。
自分は、他の人に比べて、
とても耳がいいのだ。
離れていても
会話の内容が聞き取れるし、
複数の会話が入り交じっていても、
正確に聞き分けることができた。
少女はこの長所を活かして、
情報屋をやることにした。
街を徘徊する冒険者の会話や、
酒場の隅っこでヒソヒソと
している商人の会話を
盗聴して情報を集め、
それを他の冒険者達に
売ってお金を稼いでいた。
稼いでいたといっても、
年端もいかない少女の言葉を
鵜呑みにする人はおらず、
本当の情報でも
対したお金はもらえない。
それでも、盗みを働いて
大人達に体を蹂躙されるよりは
何倍もよかったし、
常連のように少女の
持つ情報を求めにくる
人もいたので、
少女は自分のやっていることに
少しの自信を持っていた。
――そんなある日のことである。
どこで聞きつけてきたのか、
例の男達が現れ、
少女を無理矢理連れていこうとした。
当然、少女は逃げ出し、
人気のない路地を走り回った。
この辺りの地形は
とっくに頭に入っているし、
幸いにも男達はのろかった。
が、追いかけられるようになって
数日が経つと、
完全に地形を覚えた男達に
追い詰められてしまい、
民家の屋根によじ登った。
当然、道などなく、
下に飛び降りようものなら
確実にケガをしてしまう。
もう逃げ場を失い、
武器も何も持っていない少女は
泣きそうになる。
男達に捕まれば、
色々な情報を引き出された挙げ句に
体を蹂躙されるだろう。
少女は体が震えるのを抑えられず、
しかしどうやって
この状況を打破できるか考えた。
男達の声がもうすぐ近くに聞こえる。
もう数秒の猶予しかない。
その時、少女の目に映ったのが、
宿屋の窓だった。
中には男と女が一人ずついて、
彼らに全てを託そうと思い至った。
顔も名前も知らないけれど、
一か八か、賭けてみたのだ。
そもそも、この屋根から
あそこの窓まで
飛べるかどうかすら
不安であったが、
結果として少女の思いは
窓に、彼らに届いたのだ。

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