闇を抱えた勇者は世界を救う為に全てを飲み殺す~完結済み~

青篝

深慈の学校 2

二年生から三年生になっても、
俺と藤井さんは
同じクラスになることができた。
このことについては、
素直に先生達に感謝している。
そして、藤井さんがいると、
俺は学校に行くことが
嫌だとは思わなかった。
勉強をしなくなり、成績も落ち、
負け組にまで成り下がったが、
俺の事情を知る先生達は
深く俺に追求してこなかった。
中学最後の文化祭を前に、
クラスメイトは活気立っていたが、
俺はろくに顔を出していないため、
このクラスが何をして、
何を目指しているのか、
俺にはさっぱりだった。
が、藤井さんは藤井さんだった。
このクラスがやること、
それぞれの役割、
当日までのスケジュール等、
全てを分かりやすくまとめ、
俺が来た時に教えてくれたのだ。
どうやらこのクラスでは
歌や生演奏、ダンスをするようだが、
練習する時間のない俺は
当日のステージに出ない代わりに
衣装を作るのを手伝わされた。
衣装班のクラスメイト達は、
そんな俺を微笑んで迎え、
どこをどう縫い合わせばいいのか
俺に一から指導してくれた。
この時、俺は案外器用なんだなと
自分でそう思った。

「待って!千夜めちゃ綺麗じゃん!」

クラスメイト達からも褒められ、
俺は頬が熱くなった。
まだ、自分には照れとか
そういう人間らしい感情が
残っていたのかと、
少し嬉しくもなった。
文化祭当日は、学校を休んだが、
後日になってその時の写真を
これでもかというくらい
見せつけられた。
友達同志で仲良くピースしている写真、
男子の生徒がふざけている写真、
男女で手を繋いでいる写真、
俺以外のクラスメイト全員で撮った
ステージ衣装を着ての集合写真。
皆笑顔で、その場に俺がいなくて
本当によかったと思った。
俺がいたら、楽しい雰囲気を壊して、
皆の笑顔を台無しにしていただろうから。
本当に、俺がいなくてよかった。

「でも、千夜がいたら、
もっと楽しかったろうな~」

「あ、マジそれな!」

やめろ。
そんなことを言うな。
どうせ冗談だろう?
上辺だけの方便なんだろう?
好きなあの子から
良いように思われたくて
良い人を演じてるだけだろう?
だから、やめてくれ。
俺の心を、救わないでくれ。

「千夜、これやるよ」

いらない。
受け取りたくない。そんな物。
それはお前達の大切な思い出だ。
その写真に、
俺は写っていないんだ。
だから、いらない。
受け取りたくない。
それを見る度に、
後悔してしまうから。
でも、どうして俺は、
写真を受け取り、
わざわざ家の見やすいところに
飾っているのだろうか。

「いつか、お兄ちゃんも
そんな風に笑えるようになるよ」

本当にみっともない兄だ。
妹に励まされてやがる。
でも、ありがとう。
顔も名前も思い出せないクラスメイト達、
藤井さん、愛咲。
今より少しはまともな日々を
俺は送れそうな気がする。

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