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闇を抱えた勇者は世界を救う為に全てを飲み殺す~完結済み~

青篝(夢八)

生き延びる術

ドワーフの職人達が
装備一式を作るまでの三日間。
ヤガラに案内された部屋で、
俺はこの時間に
何をするべきか考えていた。
ここが観光地なら、
街を散歩するだけで
いくらでも時間を潰せるが、
ライオの街は寂れてボロボロだ。
家の壁に穴が空いていたり、
半分ほどにちぎれたネジが
転がっているのが
ここに到着した時は疑問に思ったが、
ヤガラから話を聞いた手前、
黙って見過ごすことができない。
しかし、ライオの民全員に
配れるほど俺は食料を持っていない。
たとえ、魔物を一掃したとしても、
すぐにすぐ食料を
調達できる訳ではない。
歯痒いが、ここは意地でも
彼らに耐えてもらうしかない。

「空腹って辛いだろうな…」

俺は産まれてこのかた、
飢えで苦しんだことがない。
なのでもちろん、
空腹の辛さが俺には分からない。
人間は水なしで三日、
水のみで一週間は
生き延びられると聞くから、
案外大丈夫そうなのだが、
実際どれほど苦しむものなのか。

「辛いですよ。
食料が尽きて、
何人もの近衛兵が倒れて、
それでも任務遂行の為に
生き延びなければならないのは」

俺の独り言に
妙にリアリティの滲んだ
回答をくれたのはシイラである。

「そういう時は
どうやって生き延びるんだ?」

「そうですね…。
ジャングルや密林なんかは
食料の宝庫といっても
差し支えないくらいの
動物や果実があるので、
皆で協力して確保しますが、
砂漠地帯や洞窟になると
何もありません。
洞窟は雨風の影響もないですし、
水もいくらか確保できるので
その分マシですが、
朝も夜も分からない上に
ゴブリンなどの魔物に
襲われる可能性があるので、
見張りは常にいました」

過去を思い出しながら、
また、倒れていった仲間のことを
一人一人頭に浮かべながら、
シイラは自然の中で
生き延びる術を語ってくれた。

「でも、一番辛かったのは、
本当に食料がなくて、
自らの肉を食料として
食ってくれと命を絶った
仲間の肉を食べたことですね」

今でこそ、
シイラは笑って誤魔化しているが、
本当は思い出したくもないはずだ。
自分の為に命を絶つ者がいて、
それだけでも心に大きな
傷ができるはずなのに、
その命を食わねばならないという
苦渋の行動を取るしかない。
心優しいシイラのことだから、
きっと泣きながらも
その仲間の肉を食べきったに違いない。

「そうか…」

何だか悪い話をさせてしまった。
自分の気遣いのない発言が
今になって恥ずかしくなる。
しかし、聞いてよかった。
シイラは、辛い過去があって、
今を生きている。
俺に命を託してまで。
その命を預かっている者として、
より一層、シイラを守る意志が
固くなったような気がする。

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