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闇を抱えた勇者は世界を救う為に全てを飲み殺す~完結済み~

青篝(夢八)

闇の体

『――よこせぇぇぇぇ!!』

「っぐはぁ!?」

凄まじい勢いで、
俺の五感に闇が迫る。
視界は暗く霞み、耳鳴りが響き、
鉄の錆びたような刺激が疼き、
血が口の中に溢れ、
肌がジクジクと痛む。

「深慈君!」

慌てるシイラに掌を向け、
目で近づくなと訴える。
今俺にむやみに近づけば
シイラまでもが闇に
飲まれてしまう可能性もある。
だから、もう少し、もう少しだけ、
俺に時間を与えてくれ。

『――殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す――!』

心の底から這い上がってきた闇は、
次第に俺の体を蝕み始める。
胸から徐々に広がっていき、
腹、股、太もも、膝、すね、足首、
肩、上腕、肘、手首。
そして、首、顎、唇、鼻――。

「返せ――!」

顔全体が飲み込まれる寸前で、
俺は何とか闇の進行を食い止め、
顔だけは奪還することができた。
といっても、本当に顔だけだ。
体の9割は今も闇を纏っている。
だが、これでいいのだ。
脳が俺の権力下にある以上、
実質的な体の支配権は俺にある。
体が闇に飲まれていても、
動かすのは俺の自由。
つまり、闇の力を纏ったまま、
俺は戦うことができるのである。

「さぁ、始めようか」

口角が吊り上がり、
不敵に笑っているのが
自分でもよく分かる。
意図して笑っている訳ではないが、
それでも笑ってしまうのは、
きっと、厨二病くさい
このスタイルに興奮しているのだ。
心からワクワクする。
早くヒガンバと戦いたい。
そんな衝動を感じている。
激戦が繰り広げられている
ドワーフ達とヒガンバに目をやると、
あの鉄球がヤガラの顔を掠った。
職人ドワーフも魔力切れのようで、
ヒガンバの攻撃を避けては
ただ石を投げるだけになっている。
そろそろ、俺の出番だな。

「飲み殺してやる――』

足に力を込め、地面を蹴った。
――速い。
今までとは比較にならない程、
体が風を追い越す感覚を感じる。
そして、ヒガンバの横っ面を
思い切りぶん殴る。
ヒガンバ、もとい鬼神の体は
後方に吹っ飛び、しかし
見事に両足で着地してみせる。

「ふふっ。やっと見せてくれるのね」

手の甲で口元を拭い、
ヒガンバは嬉しそうに笑う。
広い空間に風が吹き、
瞬く間に緊張の糸が張る。

「お前らは下がってろ」

ドワーフ達を引き下げ、
正面からヒガンバと対峙する。
おそらく、また魔力を
放っているのだろうが、
闇を纏っているからか、
不思議とあまり恐怖を感じない。
後ろのシイラやドワーフ達は
例の如く震え上がっているが、
俺とヒガンバの戦いを
見届けようと目を背けないでいる。

「覚悟しろ。魔物石、ヒガンバ」

「そちらこそ。影の勇者、深慈」

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