闇を抱えた勇者は世界を救う為に全てを飲み殺す~完結済み~

青篝

闇の実験場

王が座るための玉座の後ろに、
ヤガラの言った隠し通路がある。
ヤガラがいるから
隠す必要もないと思ったのか、
入り口の扉は
開いたままになっていた。
大きさにして縦横1mずつの扉は、
閉まっているとただの壁になる。
実際、魔物狩りに役立ちそうな
物を探して城の中を探索していた時には、
こんなものは気づかなかった。
チュニを先頭にして中に入り、
ヒガンバを追う。
狭いので膝と手を着いて
進んでいたのだが、
急に視界が開き、広い空間に出た。
その広さは、テニスコートが
3面はとれそうなほどで、
壁に等間隔で光っている
ランプがある以外何もない。

「…ここはもしや、
『闇の実験場』なのか?」

「…『闇の実験場』?」

俺がこの空間について
疑問に思っていると、
職人ドワーフの一人がそう言った。
『闇の実験場』。
言葉の響きとしてはかっこいいが、
中身は恐ろしいものだろう。
ここがドワーフの国だからか、
なんとなく、すぐに予想がついた。

「ご名答。さすがドワーフですね。
そこの彼が言った通り、
ここは『闇の実験場』。
今やただの噂話にまで
成り下がってしまった場所。
このライオで最も醜い過去の場所」

声を聞いて、心臓がビクッと跳ねる。
灯りが乏しいので
気づかなかったが、
俺達の前方にはヒガンバがいた。
ヒガンバは持ち出した水晶玉を
丁寧に手で撫でながら
勝手に語り出す。

「ここはね、ほんの数十年前までは
立派なドワーフの職場だったんです。
朝から朝まで毎日ように
当時のドワーフ達は働いていました。
ある  兵器  を創るためにね」

朝から晩まで、ではなく
朝から朝まで、か。
それも毎日。
当時のこの国は
今の日本よりもブラックな
企業だったのか。
そして、そうまでさせて
ライオが創りたかった兵器。
俺の元いた世界なら
核爆弾あたりがそうだろうが、
そんな科学力はこの世界にはないし、
神にも代わるような
とんでもない力を持った
兵器であるはずだ。
もう、俺は察しがついた。

「…古代兵器か」

古代兵器。
古代に存在した兵器で、
ある時は貧しい国を救い、
ある時は戦争を終結させ、
ある時は世界の在り方を変える。
おとぎ話や英雄譚に登場し、
今は世界のどこかに
眠っているとされる。
当然のことながら
実物を見たことなどないが、
こういう異世界で
どの国もが欲しがる
最強の兵器と言えば、
古代兵器以外に考えつかない。

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