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闇を抱えた勇者は世界を救う為に全てを飲み殺す~完結済み~

青篝(夢八)

アイテム袋の常識

「こんなことになるなら、
もっと食料を買い込んでおけば…。
って、考えても無駄か」

例の王城の独房みたいな部屋で、
俺達は軽く食事をとっていた。
タアラで買っていた食料は、
馬車の移動中でも
食べられるような
パンや果実が中心で、
チュニの好きなベーコンなど、
肉類や生モノは
腐るかもしれないので
買うのを避けていた。

「…ん?」

「どうした、主?」

僅かな食料をむさぼっている最中、
俺は不意に気になってしまった。

「このパン、買った時のまんまだ」

パン屋のおばちゃんは言っていた。
焼きたてのパンはいかが、と。
俺はその言葉と
香ばしいパンの匂いに釣られて、
勢いのままにパンを買っていた。
自分で手に取ったから
その時の感触は覚えている。
指でつつけば沈み、
離せばゆっくりと膨らみを戻す。
手に乗せればじんわりと
温かみを感じたし、
買ってすぐに二つほど
食べてしまっていた。
元の世界でもよく見かけた、
ただのロールパンだ。
が、あんなにも美味しく思ったのは
あの時が初めてだった。
その時の記憶が
今鮮明に蘇ったのは、
このパンを手に持ったからだ。
何も変わっていない。
感触も、熱さも、匂いも、
全てがあの時のままなのだ。

「そりゃそうだろ?
アイテム袋に入ってるもんは
何年経とうが変わらねぇ。
そんなことも知らずに使ってたのかよ」

知らねぇよ。
そうならそうと先に言え。

「…は!?もしかして、
吾がベーコン買ってくれって言って
却下されたもの、それが原因か!?」

はい、そうです。

「クソゥ!こんなことになるなら、
アホの主にアイテム袋の
常識くらい教えてたのに!」

「誰がアホだ!
俺はこことは全く違う世界から
何のお知らせもなく、
急に飛ばされてきたんだぞ!?
常識なんて知る訳ねぇだろうが!」

「あー!あー!
主の言い訳なんか
聞こえませーん!
あっ、間違えた。アホの主だった」

「てめぇいい加減にしろ!
知らねぇもんは知らねぇし、
普通に考えて腐るもんは腐るだろ!」

「あー!うるさい!
あーあ!吾の仕える主が
こんなにもアホだったなんて!
誰か別の人探そうかな!」

「勝手にしやがれ!
俺が寝たフリしてる間にでも
出ていけばいいだろう!」

日本のあの名曲の
歌詞の一部を抜粋してしながら、
その後も俺とチュニは
激しく言い合い続けた。
途中からはお互いに
何でケンカしてるんだ?と思いながらも
二人ともやめ時を見失ってしまい、
最終的には痺れを切らした
シイラの鉄拳によって、
やっと二人は我に返った。
すぐに仲直りをして
改めて食事を始めたのだが、
俺はふと閃いた。
ライオを恐怖させる
あの魔物がどこから
やってくるのかを。

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