闇を抱えた勇者は世界を救う為に全てを飲み殺す~完結済み~

青篝

ライオの話

魔物を根絶やしにしてほしい。
それは、ラ王を始め、
この国に住むドワーフ全員が
心から願っていることだろう。
体があれだけ弱っていても、
切なる想いは強く伝わってくる。
そして、今彼らを救えるのは、
他ならぬ俺達しかいない。
俺はダイからもらった
お金が入った袋と、
食料がいくらか入っている
小さなアイテム袋を取り出す。
この小さなアイテム袋は、
タアラで食料などの買い出しを
している時に
偶然チュニが拾ってきたのだ。

「ここにダイから受け取った金と、
俺がシンガルから持ってきた
なけなしの食料がある。
これで俺達に防具と武器を作ってくれ」

「…と、申しますと?
…と、仰っております」

「簡単な話だ。
この辺の魔物全部、俺達が狩る。
その為の武器と防具を、
あんた達の技術で作ってほしい」

本当は武器と防具は
ここに着いた時点で
見繕う予定だったのだが、
どこもかしこもズタボロなので
急遽変更せざるを得なかった。
昼ご飯を食べる場所も
探さないといけないし、
泊まる宿も見つけないといけない。
今日は忙しくなりそうだ。

「すぐに我が国で特に優秀な職人を集め、
三日以内で準備させて頂きます。
…と、仰っております」

ラ王は少しばかり
考える素振りを見せると、
感謝するような眼差しで
俺達の事を見る。
その後、道案内の彼に
何かを耳打ちして、
俺達は城の一室に通された。
装備が完成するまでの間、
この部屋を使っていいらしい。
――のだが、

「お前のとこの王は、
こんな部屋に客を泊まらせるのか?」

綿がほとんど詰まっていないベッド、
切れかけのランプ、
硬い鉄製の椅子。
ハナから期待していた訳ではないが、
もう少しいい部屋を
使わせてほしかった。
俺とチュニはともかくとして、
女性のシイラには
かなり辛いのではなかろうか。

「申し訳ございません。
この部屋が、今この城で
最も整った部屋なのです。
他の部屋は、もはや監獄と言っても
過言ではありませんし、
この国の街でお宿を探されても、
どこも似たようなもので…」

俺が不満を表すと、
彼は申し訳なさそうに頭を下げた。
こんな立派な青年に
頭を下げられると、
俺が悪者に見えてしまう。
慌てて彼に顔を上げさせて、
俺は一呼吸置いた。

「詳しい話を聞かせてくれ」

俺達はベッドに座り、
彼を椅子に座らせる。
彼は、ヤガラと名乗ってから、
ゆっくりとこの国のことを
俺達に話してくれた。
まず、ライオはこの世界で
最も技術の進んだ国で、
他国との貿易も盛んだったから
とても豊かな生活ができていた。
しかし、急増した魔物によって
貿易が止まってしまい、
どんどん国は衰退。
武器やカラクリを作れても
食物を作れなかったドワーフ達は、
国から離れたり、
助けを求めて旅に出たり、
魔物討伐に行ったきり
帰ってこなかったりと、
人口も減少していった。
ここまでは事前にダイから
聞いていたのだが、
民家などがボロボロなのは、
他に理由があった。

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