話題のラノベや投稿小説を無料で読むならノベルバ

闇を抱えた勇者は世界を救う為に全てを飲み殺す~完結済み~

青篝(夢八)

闇との戦い

「――っ!」

誰かが俺を呼んだ気がした。
だが、意識がはっきりしない。
俺は何をしていたんだっけ。

「し――っ!」

あぁ、そうだ。
確か、俺の心の闇の中とやらで
ミシリディアから色々な事を
聞かされていたんだ。
あれ?ミシリディアはどこだ?
というか、ここは闇の中じゃない。
俺はどこで何をしているんだ?

「深慈君っ!」

「――ッハ!?」

と思ったら、急に意識が覚醒した。
目の前ではシイラが
涙目になりながら
俺の肩を揺さぶっていた。
どうやら、シイラのおかげで
俺は意識を取り戻したらしい。

「――グッ!?」

目を覚ました次には、
猛烈な痛みが俺の左腕を襲った。
見れば、俺の左腕の手先から
二の腕までが黒く覆われている。
それはジリジリと広がっており、
もうすぐ肩までもが
侵食されようとしている。

『お前の手で仲間を殺し、死ぬ』

今、ようやく思い出した。
俺が闇の中でミシリディアから
一つ一つ丁寧に聞いたこと全てを。
このまま俺の体が黒く覆われたら、
俺の意思とは関係なしに
俺の体は動き回り、
大切な仲間を殺し、
俺自身も程なくで死ぬ。
そんなことが、あってたまるか。

「俺の腕を、返せっ!」

冗談ではない。
せっかくできた仲間を
自分の手で殺す?
しかも俺はその後もすぐに死ぬ?
許されない。許さない。
そんな結末にする為に、
ミシリディアは
俺の闇を解放してくれたのではない。
世界を救って、
皆でハッピーエンドを迎える、
明るい未来を見る為に
ミシリディアは俺に想いを託したんだ。

「俺が、勇者になるんだ」

精一杯、俺は腕に力を込める。
それでも、闇の進行を止めるだけで、
腕を取り戻すには足りない。
どうすれば――?
そっと、俺の右手をシイラが握る。
気づかぬ間に出てきていたチュニも、
その上にちょこんと乗る。
二人とも、笑顔だった。
言葉を交わすこともなく、
笑顔で俺を見ている。
ただそれだけで、
俺は力が湧いてきた。
そうだ。俺は一人ではない。
数にしてたったの二人だが、
シイラとチュニがいる。
この世界で出逢った、
俺の大切な仲間だ。
こいつらの期待に応えずして、
何が勇者だ。何が世界だ。
自分の腕一本さえ
取り戻せないような男に、
何が救えるというのか。

「ありがとう、シイラ、チュニ」

自然と、俺も笑顔が浮かぶ。
こんな状況でも
なぜ笑っていられるのか、
と以前までの俺なら
そう思っていただろう。
しかし、笑っていられる。
こいつらと一緒なら!

「戻った…」

黒い闇は、一瞬にして消えた。
しかし、今も俺の体の中で
激しく蠢いているのが分かる。
まぁ、結果として乗り越えたのだ。
闇から戻った時に
不思議な力で腕のケガも治ったし、
それで今は十分ではないか。


「闇を抱えた勇者は世界を救う為に全てを飲み殺す~完結済み~」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く