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闇を抱えた勇者は世界を救う為に全てを飲み殺す~完結済み~

青篝(夢八)

救出

気分転換がてら
タアラの道を歩くと、
突然、裏の路地の方から
男の叫ぶ声と女性の悲鳴が聞こえた。
俺の直感が告げる。
今、女性を助けなげれば、
女性は男に殺される。
助ける義理はない。
しかし、見捨てる権利もない。
気づけば、俺は走り出していた。
声のした方に足を向け、
全力で地面を蹴る。

「そこの右の路地だぜ」

正確な場所が分かるのか、
飛びながら、
チュニがナビをしてくれた。
別になくても良かったが、
チュニのおかけで
自分の感覚に自信が持てた。
それに、俺の意図に気づき、
即座に対応してくれるのは
とても嬉しいことだ。

「――っ」

角を曲がり、
人の気配がしない建物と建物の間で、
俺はその光景を見た。
2mはあろうかという大柄の男は、
全身の筋肉が盛り上がっており、
貧民街で暴れていそうな
ボロい服装をしている。
一方、綺麗な銀髪をした女性は、
地面に座り込み、
大事そうに胸に何かを抱えている。
服装もこんな路地には
到底似合わない白の羽織りを
着ているし、抱えているそれも、
ただの紙袋ではなく
赤のよく映える箱のように見える。
これだけで察するなら、
女性が胸に持っている箱を
大柄の男が奪おうとしている、
といったところだろう。

「っ!その貴方様!助けて下さい!」

俺に気づいた銀髪の女性が、
必死の形相で叫ぶ。

「なんだぁ、てめぇ」

男も振り返り、
俺の姿を完全に捉える。
ここでカッコよく、
カッコいい台詞が言えたなら、
女性は俺に惚れるに違いない。
しかし、蘇る数日前の出来事。
恥ずかしさで顔から
太陽が出そうだったあの時の俺。

「…何してんだ」

思わず、嫌いなことを
後回しにするような
事を言ってしまった。

「俺はこいつが盗んだ物を
取り返そうとしてるだけだ。
関係ねぇザコは引っ込んでな」

「…何だとぉ?」

男の言葉に反応したチュニを
俺は手で制して、
慌てるなと首を横に振る。
この感じなら、悪いのは男の方で、
女性は複雑な事情のある貴族の娘、
っていうのがよくある展開だが、
実は悪いのは女性の方で、
主人公を裏切る展開もありえる。
これはどうしたものか…。
俺が一人で考えていると、
涙が溢れそうな瞳で、
女性が俺を見ていた。

「男ってのは、損な生き物だな…」

「はぁ?何言ってやが――」

男が言い終わる前に、
俺は思いっきり踏み出して
男の腹に拳をねじ込んだ。
俺と男の距離は
少なくとも5mはあったが、
一瞬でその間がなくなり、
殴られた男は気を失っていた。

「こ、これが主人公補正…!」

何の確証もないのに
試しにやってみたら、出来た。
あの一瞬で敵に接近して、
「遅い」っていいながら
拳を叩き込むやつ。
クールを装っていた俺だが、
自分の拳を見て、
思わずそう言っていた。
だって男の子だもんっ。

「あのっありがとうございます」

干渉に浸る俺に、
女性は頭を下げてくる。
近くで見ると、やはり美人だ。
腰まで伸びた艶やかな銀髪、
優しさが滲む紫の瞳、
女性らしい凹凸のあるスタイルに、
思わずドキッとしてしまう。

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