闇を抱えた勇者は世界を救う為に全てを飲み殺す~完結済み~
闇の力
うまく使わねぇと死ぬからな」
ミシリディアは最後にそう言って
俺の手を強く握り締めると、
満足気な笑顔で消えていった。
その次の刹那である。
『助けて』
『死なせろ』
『俺は無力だ』
心の奥底から、
たくさんの悲鳴や怒号が
俺の感覚を覆い尽くしたのだ。
やがてその『闇』は俺の手を侵食し始め、
俺の体全てを飲み込みそうになる。
しかし、俺の体の操縦権は譲らない。
冷静な心と理性の力で、
俺は自分の体を取り戻す。
息が乱れ、胸が苦しい。
今の『闇』の力こそが、
ミシリディアからの贈り物だと
理解するのに、時間は必要なかった。
俺の心に眠る『闇』の力、
それをミシリディアは
呼び覚ましてくれたのだ。
さっきは向こうの方から
やってきたが、
この力をうまくコントロール出来れば、
俺でも十二分に戦える。
勇者の力なんて、もう必要ない。
ミシリディアが呼び覚ましてくれた力で、
俺はこの世界を救う。
この国の為でもなく、
ドラゴンロックの為でもなく、
他の勇者の為でもなく、
ミシリディアの為に、
俺はこの世界を救ってみせる。
「まずは、ここからの脱出だな」
そうして、俺が新たな一歩を
踏み出そうとしたその時――。
「おい!吾を忘れんな!」
俺の肩で大きな声がした。
驚いて首を回すと、
自分の頬をぷっくりと膨らませた
一匹の悪魔がいた。
「ああ、すまん。忘れてたわ。
えぇと……ミシリディアジュニア」
「忘れんな!あと、変な名前つけんな!」
「いや、お前の名前知らねぇし」
「お前は吾の主だろうが?
名前はお前がつけるんだよ」
どうやら俺がこいつの主人で、
俺が名前をつけてやらねば
いけないという事らしい。
しかし、なぜこいつの一人称は
『吾』なのだろうか。
確か、平安時代とかに
俳人達の間で使われていた
一人称だったはずだ。
もしかして、当時の俳人の
生まれ変わりだったりするのか。
「ハイジン」
「ダサい」
「コマチ」
「女っぽい」
「ウグイス」
「吾は鳥じゃねえ。悪魔だ」
「ヘイアン」
「イヤだ」
「一生決まらねぇだろ、これ…」
何とかそれっぽい単語を
並べてみたのだが、
彼はことごとく却下した。
最後のヘイアンはかなり
いい感じだと思うのだが、
彼には彼の好みがあるらしい。
「色々やりながら考えとく。
別に今じゃなくてもいいだろ」
一旦肩の力を抜いて、
彼に名前をつけるのは
後回しにすることにした。
とりあえずこの地下牢から
脱出しない限り、
世界を救うなんて夢のまた夢。
鉄格子に横や前後に
力を入れてみるが、
全くびくともしない。
「なぁ、これ壊せるか?」
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