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闇を抱えた勇者は世界を救う為に全てを飲み殺す~完結済み~

青篝(夢八)

凍死

全身が凍っているはずなのに、
不思議と寒さを感じない。
これも勇者ゆえの
能力なのかと思ったが、
どうやら違うらしい。
寒さは感じないが、
先ほどから意識が朦朧としている。
おそらく、凍死しようとしているのだ。
勇者として異世界に来たのに、
冒険もしないままこんな所で
こんな死に方をするなんて、
冗談でも全く笑えない。
血と鉄が混じり合って
鼻がもげそうな刺激臭がする。
目の見える範囲には、
鉄格子、床、壁しかなく、
ロウソクの1本すらない。
この地下牢に閉じ込められて、
どれだけの時間が経過したのか、
消えいく意識の中で
俺は自ら瞼を下ろす。
もう、希望は潰えた。
勇者の力を使えず、
王には見下され、
仲間であるはずの人間に裏切られ、
氷漬けにされ、閉じ込められ、
俺はこのまま死ぬんだ。
――父さん、母さん。ごめん。
俺、2人の分まで生きれなかった。
あの日、家族4人で行った金閣。
そこに現れた薬物中毒者の男が、
刃物で人を次々に刺していた。
俺達もその男に目をつけられたが、
父さんと母さんが男に立ち向かい、
腹や胸を刺されながらも、
警察が来るまで男を拘束した。
事件の被害者は14人に達し、
父さんと母さんのおかげで
それ以上のけが人は出なかった。
が、救急車が現場に到着する前に、
2人は息を引き取った。
母さんの最後の言葉は、
今となっては思い出せない。

「…父、さん……母さん…愛、咲……」

ここで死んでも、
2人に合わせる顔なんてない。
いや、仮に生きて元の世界に
戻れたとしても、
愛咲にしてやれる事はない。
本当に申し訳ないと思う。
父さんと母さんを失い、
辛いのは愛咲も同じこと。
それでも愛咲は俺とは違い、
きちんと学校に通い、
2人の分まで生きようと
毎日を頑張っている。
――ごめんな、愛咲。
ダメな兄ちゃんで。
俺はもう戻れないから、
2人の分と合わせて
俺の分も背負って生きてくれ。
もし、生まれ変わって、
もう一度家族で暮らせたら、
俺が皆を守るから。
本当に、ごめん。
でも、今までありがとう。

「出会った時より
辛気臭い顔をしているのは、
気のせいじゃあないよな?」

俺の耳に聞こえたその声は、
落ち着いたでもなく、
穏やかなでもない、
とてもオラついたような声だった。

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