闇を抱えた勇者は世界を救う為に全てを飲み殺す~完結済み~

青篝

独りの勇者

「じゃあ、一人一つずつ、
自分のいた世界の常識を
言っていってみよう」

陽向が舞空の説明に納得すると、
舞空は俺達に呼びかけた。
一人ずつといっても、
最初くらいは誰かを
名指ししないと分かりにくいのでは、
と思ったが、それは俺みたいな
陰キャ限定の話だったらしい。

「それなら!俺からだ!
俺のいた日本では、最近!
使った紙コップをキャンプ場等に
放置するという社会問題が起きている!」

それは確かに問題だな。
しかし、俺はそんな話を知らない。
これでも俺はネットニュースを
頻繁に見ていたので、
社会問題と話題になれば
目についているはず。
その俺が知らないのなら、
答えは一つに限定される。
不動と俺は、違う日本の人間だ。

「あ、あたしそれ知ってる!」

「僕も…知ってる」

不動と俺が違っても、
その他の人間が皆、違うとは限らない。
現に、陽向と雪乃は知っていた。
6人中3人が同じ日本から来ている。
そう考えるならば、
俺と舞空と白波が
同じ日本の人間だという可能性がある。
不動と陽向と雪乃は、
他にもいくつか話題を出し合い、
本当に同じ日本なのか、
確認を取っていた。

「あの3人はどうやら
同じ日本だったようだね。
俺達も同じだといいんだけど、
ちょっと不安になってくるよ。
じゃあ、次は俺が言うよ。
う~ん、そうだな…。
あっそうだ!俺のいた日本では、
7人組で仮面を着けた
音楽ユニットが活躍してるんだ。
二人とも、知ってる?」

不動達を横目に、
不安そうな顔をしていた舞空だが、
その不安を払拭するように
自分の日本のことを話す。
結論から言えば、俺は知らない。
音楽も日常的に聞いているので、
もし勢いのあるユニットが
登場しようもんなら、
俺は必ずチェックする。

「えぇ知っているわ。
名前は確か…『虹色仮面少々』、
だったかしら?」

「そうそう!『虹色仮面少々』!
やった!一人じゃないんだ!
あ、いや、待って、確認しよう。
えっと、他には……」

『虹色仮面少々』か…。
聞いたこともないな。
となると、仲間はずれは
俺だけってことになるな。
不動達は確認が取れたようで、
陽向は胸を撫で下ろしている。
舞空と白波の方も、
舞空は何かを言えば、
白波が頷いている。
こちらも同じ日本のようで、
ますます俺は
取り残されることになった。
独りには慣れているつもりだったが、
いざこうした初対面同士で
残されると、不安で仕方ない。
仲良く手を取り合う彼らを横目に、
俺は窓の外に視線をズラす。
雲一つない青空がどこまでも続き、
シンガルの街並みが広がる。
今まで気にしていなかったが、
ここはシンガルの王宮で、
つまりは国の一番奥の一番上、
シンガルが一望出来る位置だ。
これからこの広がる世界に
旅に出ると考えると、
不安よりも興奮が勝ってくる。
一人旅も悪くないなと
思っていると、部屋の扉が叩かれた。


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