闇を抱えた勇者は世界を救う為に全てを飲み殺す~完結済み~

青篝

パラレルワールドの話

勇者歓迎の宴(俺が名付けた)が
お開きになると、
順備があるからと
俺達は一室で待たされることになった。
俺が、いや全員同じような部屋から
『素質鑑定』を受けたはずだから、
正確には俺達が目覚めた部屋、だ。
白を基調とした部屋に
デカデカと飾られている
ドラゴンロックの人物画。
これを見ると、いい男って
雰囲気が漂っているが、
実際のは汚かったな。
おっと、汚いは失礼だな。
そうだな。胡散臭い、ケチ臭い。臭い。
うん、ロクな単語が出てこない。
つまりドラゴンロックは
壊れた電子辞書と同じ。
何も言葉が出てこない。

「みんな、今いくつ?
ちなみに俺は18歳なんだけど」

不意にそう言ったのは、
鮮やかな青髪の好青年、舞空だ。
舞空は部屋に来て早々、
皆にそう切り出した。

「あたしは、16歳です」

「俺は!18だ!」

「17よ」

「僕は…16……多分」

「俺は16だ」

舞空の質問に全員が答える。
控えめに言ったのが陽向で、
無駄に声が大きかったのが不動、
短く簡潔に言ったのが白波、
多分とか自分のことなのに
変な答え方をしたのが雪乃、
最後が俺だ。
6人中3人が同じ16歳か。
これなら話し相手に
困ることはなさそうだ。
いや、俺コミュ障だから
年齢とか関係ないわ。

「みんな同じくらいだね。
じゃあ、敬語はなしにしよう。
二人もいいよね?」

舞空が確認を取ったのは、
不動と白波だ。
一番上の自分と不動だけで判断せずに、
白波にも確認をするあたり、
舞空は出来る奴だ。
イケメンは皆優秀だから困る。
舞空の言葉に二人が首を
縦に動かすと、
またも舞空が話の舵を取る。

「ここにいるのは、
皆日本人って前提でいいよね?
日本語も通じてるし。
だけど、俺が気になるのは、
皆同じ地球の日本から
来たのかっていうことなんだけど。
皆はどう思ってる?」

俺もそのことは気になっていた。
よくある話で、
言葉が通じるから
同じ地球の日本の人間と思ったら、
流行っている物が違っていたり、
歴史上の人物が違っていたり。
同じだけど違う。違うけど同じ。
分かりやすい説明なら、
パラレルワールドが妥当だ。
ボールを上に投げて、
それを捕れる未来と
捕れない未来がある。
あるいは他の誰かが捕る未来。
あるいは暴投して、
鬼教師の藤原の頭を直撃する未来。
可能性と選択肢が無数に存在していて、
その数だけ別の世界がある。
それがパラレルワールドだ。
同じだけど違う。違うけど同じ。
舞空も似たような事を
きっと考えているのだろう。
いや、同じ事を考えていた。
頭に『?』を浮かべ、
困惑している陽向に、
パラレルワールドの説明をしていた。
そして神のイタズラなのか、
例えでボールの話をするのまで
全く同じ事を陽向に話していた。

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