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闇を抱えた勇者は世界を救う為に全てを飲み殺す~完結済み~

青篝(夢八)

ハズレの王

部屋の様子とは打って変わって、
長い廊下には、鮮やかな赤の
絨毯が敷かれていた。
頭上には等間隔で付けられた
やや小さめのシャンデリアがあり、
壁際には色とりどりの花達が
花瓶に入れて飾られている。
どれも一級品で、
部屋にあったかざりっけのない
シャープな花瓶ではなく、
細部までこだわり抜けた
花瓶だけに華美な代物だ。
っと、気を取られている時間はない。
とりあえず人を探さねばと思い、
俺は部屋から見た右へ歩き出す。
左右どちらにも扉があり、
自分がどの部屋にいたのか
さっぱり分からない。
扉の等間隔の並び方と
デザインが同じことを考えれば、
恐らくここはメイドの寝室や
客人を泊める為の一棟だと思う。
優に100mは超えているであろう
という廊下をただ歩き、
突き当たりに辿り着く。
上と下に続く階段があり、
俺は下への階段を選んだ。
廊下もそうだったが、
階段の隅々まで綺麗に
掃除が行き届いている。
ここまで綺麗だと、
自分の汚い靴で歩くのが
躊躇われるなと思ったら、

「やべ」

俺の足は靴下だった。
途中まで降りた階段を引き返し、
俺の寝ていた部屋を探す。
探すといっても、
全てが同じ扉なので、
この辺りかなと思われる扉を
一つずつ開けていくしかない。
戻る際に落ちていた
ホコリをひょいと拾いつつ、
一枚の扉の前に立つ。
俺の引き運は弱い方だと
自負しているので、
間違い覚悟で思い切って扉を開ける。

「…あなた様が一番乗りですか」

どうやら、正解らしい。
俺にしては珍しいこともあるもんだ。
テニスコート4面分はありそうな
大広間は、真っ赤な絨毯が
真ん中に通路のように敷かれ、
大きな柱が立ち並ぶ。
絨毯の敷かれていない床は
煌びやかな大黒石、
天井の高さは目測で約10m、
巨大な黄金色のシャンデリア、
そして、赤い絨毯の先の
5段ほど上座に座る男。
――俺はこの男を見知っている。
燃える炎のような瞳、
口元と顎に生やされた毛、
真新しい赤い王族服。
間違いない。
俺の目覚めた部屋にあった、
巨大な人物画の本人であり、
この国の王。
(俺が勝手に決めつけただけだが)

「驚かれているとは存じますが、
どうぞお近くにいらして下さい」

王(仮)がそう言うと、
俺の後ろから
スっと執事らしき人が現れ、
俺を前へ前へと促す。
白髪混じりの頭で、
シワも寄っているが、
歳を感じさせない
清潔感のある男性だ。
俺はされるがままに進み、
王(仮)と対面する。
目前にすると、違う。
絵なんかよりずっと、王感がない。
今にも消えてしまいそうな、
淀んだ赤色の瞳、
毛も毛で無造作に
伸びているだけで、
整ってもいなければ、
男らしくもない。
真新しい王族服なんて
普段滅多に着ないから
汚れてないだけじゃないのか。
言葉遣いだけは
丁寧そのものだが、
心がこもってない感じするし、
何よりも表情が笑ってない。
大層面倒くさいと
心で思っているに違いない。
数多くの心理学や精神学の本も
読み込んでいた俺には分かる。
この王はダメだ。
こいつみたいな奴が国を滅ぼす。
だから、思わざるを得なかった。
――俺はハズレの世界を引いた、と。
そして、どうかと願う。
せめて役に立つ力をくれ。

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