やしあか動物園の妖しい日常

流川おるたな

まさかの園長

 初めてのブログは、担当している家畜動物の記事から書いて行くことにする。

 記事を書くために事務室にある本で調べた結果、世間で良く知られている牛に関しておもしろいことが分かった。

 なんと、牛の一日の睡眠時間はたったの3時間くらいで、相当な量を食べるその胃袋は4つもあるらしい。
 飼育員として恥ずかしながら今まで知らなかった...
 こんな情報を取り入れながら記事を作り念のため久慈さんに見てもらう。

「うんうん、初めてにしてはなかなか良いんじゃないかな。これで投稿して大丈夫だと思うよ」

「じゃあこれで行っちゃいますね!」

 沢山の「いいね」をもらえるといいなぁと思いつつブログの初投稿を実行した。
 投稿後に時計を見ると既に12時を回っている。示し合わせたかのように、久慈さんとやしあか食堂へ向かう。

 昨日は一般の定食屋で少しがっがりさせられた事もあり、今日のランチはとても楽しみにしていたのだ。

 中に入ってすぐに注文用のメモ紙に日替り定食二つと書く。

「訊くまでもないと思って注文を書いちゃいましたけど、久慈さんも日替りで良かったですよね?」

「もちろん日替りでオッケーだよ」

 今日は双子の猫娘のワラさんとカヤさんの元気に働く姿が見えた。
 近くに居たカヤさんにメモを渡して、いつものように社員用の別室へ移動する。

「えっ!?」

 ドアを開けて中に入ると、そこには想定外の人が座って食事をしていた。
 その食事をしていた人とは、やしあか動物園の経営者にして園長のぬらりひょんこと瀬古修一郎さん。

「お疲れ様です!びっくりしたんですけれど、園長もここで食事をする事があるんですね?」

 これはもう驚きのあまり自然に出てしまった質問。

「二人ともお疲れ様です。黒川さんからすると私がここで食事をするのがそんなにおかしいのかな?」

「あっ、そんなことは無いです…いえ、やっぱりそんなこと有ります。園長がここで食事を摂ることが全くイメージ出来なかったもので...」

 わたしの園長に対するイメージとは、お昼時になると園長室に特別な料理が運ばれ、それを一人でひっそり食べるといったものだった。

「フフフ、黒川さんの私に対するイメージがどのようようなものかは知らないけれど、私はナカさんの作る料理を殊の外好いていてね。月に数回はここに足を運んで食べていますよ」

 そうか、園長も純粋にやしあか食堂の一ファンだったというだけのことか...

「ですよね!わたしもここの料理は初めて食べた時から大好きです」

「フフフ、それは良かった。二人とも遠慮せずそこに座ってください。少し話でもしましょう」

 そう言われてわたしと久慈さんは園長の正面に並んで座った。

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