やしあか動物園の妖しい日常
不自然に動く水草
担当動物コーナーから事務所までの道を歩くと、右手に一つの小さな池が見える。
その池の前を通る際にふと[河童の妙薬]のことを思い出した。
「久慈さん、池掃除担当の河童のワッパさんて確か園内のどこかの池にいるんでしたよね?」
「ああそうだよ。今朝はそこの池に居るみたいだ」
「えっ!?そこですか?」
言われて池に目をやって全体的に見渡したけれど、河童の姿をした生き物はどこにも見当たらない。
「もうお客さんが園内に入場してるからあんまりジロジロ見ちゃ駄目だ。指差す訳にもいかないから、僕の目線の先をそっと見てみて、水面に浮かぶ水草の一つだけがス~ッと動いてるのが分かると思うよ」
「わかりました。久慈さんの目線の先ですね」
言われた通りの場所を見てみると...
「あっ!」
確かに一つだけ不自然にス~ッと動く水草を見つけて思わず声を上げてしう。幸い近くにはお客さんが居なくて助かった。
「す、すみません。大きな声を上げてしまって。あの下でワッパさんが泳いでるんですか?」
「うんだと思うよ。僕もこんな風にリンさんに教わっただけで、実際に泳いでるところは見たことがないんだよ」
ですよね。池の水中に入るなんてそうそう経験するようなことじゃない。
「わたし会って聞きたいことがあるんですけど、どうやったらワッパさんに会えます?」
「ん、そうだなぁ。動物園が開園しているあいだに会うのは難しいだろうから、タイミング的には閉園したあとだろうけど、ワッパさんがその時どこの池に居るのか知ってないといけないんだよなぁ...」
聞いているとワッパさんに会うのは簡単ではなさそう。
「久慈さんすみません。難しそうなら別に会う必要はないです。大した用事がある訳でもないので」
わたしの目的は本当に大した事ではなく、この前飲んだ[河童の妙薬]についてワッパさんに訊きたかっただけだった。水中の家とやらも見てみたいけど...
「そうかい。でもどうしても会いたくなったら、園長か副園長あたりに訊いてみると良いよ」
「ありがとうございます。もし機会があれば園長に訊いてみますね」
会話が一区切りして池の水面に目を向けても、さっきの動く水草は見当たらなくなっていた。
事務所に戻り、久慈さんに言われてから密かに考えていたブログの一発目の文章を作る。
タイトルは「新人飼育員紗理っちの動物大好き日記」。...に決めてしまったけれど、果たしてこれで良かったのだろうか?いや、決めたからにはこれでい行こう!
悪戦苦闘しながらも愛情を込めて動物達の世話をして行き、その中で知り得た新たな発見と、動物達とわたし自身の成長を書き綴るのだ!
その池の前を通る際にふと[河童の妙薬]のことを思い出した。
「久慈さん、池掃除担当の河童のワッパさんて確か園内のどこかの池にいるんでしたよね?」
「ああそうだよ。今朝はそこの池に居るみたいだ」
「えっ!?そこですか?」
言われて池に目をやって全体的に見渡したけれど、河童の姿をした生き物はどこにも見当たらない。
「もうお客さんが園内に入場してるからあんまりジロジロ見ちゃ駄目だ。指差す訳にもいかないから、僕の目線の先をそっと見てみて、水面に浮かぶ水草の一つだけがス~ッと動いてるのが分かると思うよ」
「わかりました。久慈さんの目線の先ですね」
言われた通りの場所を見てみると...
「あっ!」
確かに一つだけ不自然にス~ッと動く水草を見つけて思わず声を上げてしう。幸い近くにはお客さんが居なくて助かった。
「す、すみません。大きな声を上げてしまって。あの下でワッパさんが泳いでるんですか?」
「うんだと思うよ。僕もこんな風にリンさんに教わっただけで、実際に泳いでるところは見たことがないんだよ」
ですよね。池の水中に入るなんてそうそう経験するようなことじゃない。
「わたし会って聞きたいことがあるんですけど、どうやったらワッパさんに会えます?」
「ん、そうだなぁ。動物園が開園しているあいだに会うのは難しいだろうから、タイミング的には閉園したあとだろうけど、ワッパさんがその時どこの池に居るのか知ってないといけないんだよなぁ...」
聞いているとワッパさんに会うのは簡単ではなさそう。
「久慈さんすみません。難しそうなら別に会う必要はないです。大した用事がある訳でもないので」
わたしの目的は本当に大した事ではなく、この前飲んだ[河童の妙薬]についてワッパさんに訊きたかっただけだった。水中の家とやらも見てみたいけど...
「そうかい。でもどうしても会いたくなったら、園長か副園長あたりに訊いてみると良いよ」
「ありがとうございます。もし機会があれば園長に訊いてみますね」
会話が一区切りして池の水面に目を向けても、さっきの動く水草は見当たらなくなっていた。
事務所に戻り、久慈さんに言われてから密かに考えていたブログの一発目の文章を作る。
タイトルは「新人飼育員紗理っちの動物大好き日記」。...に決めてしまったけれど、果たしてこれで良かったのだろうか?いや、決めたからにはこれでい行こう!
悪戦苦闘しながらも愛情を込めて動物達の世話をして行き、その中で知り得た新たな発見と、動物達とわたし自身の成長を書き綴るのだ!
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