やしあか動物園の妖しい日常

流川おるたな

なんだかなぁ...

 価格に驚きつつ他の子猫も見て行く。

子猫を観ているとやしあか動物園の動物達のことが頭に浮かんだ。

 わたしが飼育を担当している動物達はちゃんと餌を与えられているだろうか…
「休みの日は別の人やってくれるよ。それは僕の方で手配しておいたから」と久慈さんが言っていたし、大丈夫だとは思うけれど気にはなる。
 
 10種類以上の子猫達を一通り観終わった。
 確かにどの子猫も抱きしめたくなるほど可愛いのだけれど、「この子猫だ!」という決定的な直感が湧かない。

 もう一度観たら何か変わるかもと考え、再度、猫のコーナーを一周して観てみる。
 それでもやっぱり決定的な直感は働かなかった。
 ん~、相棒になる猫だから妥協はしたくないしなぁ…
 かなり迷ったけれど、ここで買うのは断念することにした。
 
 久々に街なかまで来たので、ペットショップを出てから暫くのあいだ商店街をぶらぶらと歩く。
 商店街で服や雑貨の店などより飲食店の看板が気になりお腹も減って来た。

 もうお昼時だしどこかでランチしよう!

 気ままに選んだ定食屋に入り、僅かに空いていた席に座って店内を見回すと、時間的なこともあってか多くのお客さんで賑わっていた。
 メニューを広げるて見ると、看板に「定食屋」を謳っているだけあって豊富な種類の定食が記載されていた。
 ここでふと、やしあか食堂で最初に食べたチキン南蛮定食を思い出し、この店の定食と食べ比べたくなり、店員さんにチキン南蛮定食を注文した。

 注文の品が届くまでのあいだにスマホの画面を開き、この付近にペットショップが無いかネット検索してみる。
 検索ワードをいろいろ変えて検索してみたけれど、動物病院やペットフードを置いている店などしかヒットしない。もうこの付近には無いのか残念だなぁ…
 
 ペットショップ探しを諦め、スマホをテーブルに置くと、程なく若い女性の店員さんがチキン南蛮定食を運んできた。
 
「お待たせしましたぁ、ご注文のチキン南蛮定食です。ご注文は以上でよろしかったでしょうか?」
 
「はい、大丈夫です。ありがとうございます」
 
 さぁチキン南蛮定食さん、この沈んだわたしの心を癒してくださいよ~。なんて気持ちで食べ始める。
 でも、食べ進めているとそんなわたしの気持ちとは裏腹に、心が癒されることは無かった。
 やしあか食堂の定食と食べ比べようと思って注文したのがいけなかったのだろうか。
 このお店のチキン南蛮定食の完成度は決して悪くない。悪くはないのだけれど、やしあか食堂の定食を食べた時の高揚感や感動が起こらない。それなりの一般的な味と言ったところだろう。
 
「ご馳走様でした」
 
 それなりの一般的な味をそれなりに美味しくいただいた。

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