やしあか動物園の妖しい日常
魔女狩り
出勤三日目も昨日と同じように担当コーナーへ歩いて行き、掃除と給餌の準備に取り掛かる。
馬小屋の掃除をしていると、旅人馬のシーバさんが話し掛けて来た。
「紗理っち、昨夜の歓迎会は楽しめたのかい?」
「それはもう楽しめましたよ~。料理は美味しかったし、お酒もたくさん呑んで最高でした。シーバさんも来てたんですか?」
「そうか、良かったな。少し遅れて行ったが、オレもトクやラゴスと一緒に酒をガブ呑みしながら楽しんでいたよ」
シーバさんてトクさんにラゴスさんと仲が良いのか。意外な組み合わせ...
こうやって徐々に妖怪達の関係性が分かってくると、仕事もやり易くなるのかも知れない。
気になっていた河童の妙薬について、シーバさんが何か知っているか訊いてみると、池掃除担当の河童のワッパさんという妖怪が作っているという情報を入手出来た。そのうち会いに行ってみよう。
掃除と給餌を済ませたあと、サトリさんのことが気掛かりだったので顔を見に行った。
兎小屋を覗くと、サトリさんは他の兎に混ざってニンジンをカリカリと美味しそうに食べている。
人間とは不思議なものでほんの少しでも相手のことを理解すると、時として親近感が湧くものだ。最初に会った時はさほど可愛いと思わなかったサトリさんを、今のわたしは食べる姿が可愛いとすら思いながら眺めている。
ん?サトリさんの動きが急に止まりわたしに視点を合わせた。
「紗理っち、今、ボクのことを可愛いと思ったろ」
あっ!うっかり魔法障壁で防ぐのを忘れてしまった。
「べ、別に可愛いと思ったって良いじゃないですか!悪いことでもないだろうし...」
「て、照れてしまうから止めてくれないかな?」
「照れなくても良いですよ。ところで昨夜は大丈夫だったんですか?」
「大丈夫だったよ。紗理っちが魔法の期限を教えてくれたお陰で、ギリギリまで遊んでいられたよ。本当に感謝してる。ありがとう」
これだ。悪戯っ子がたまに見せる素直な姿が「可愛い」と人を思わせるのだ。
小動物の妖怪であるサトリさんは特に...
「いいえ~、必要な時はいつでも言ってくださいね」
わたしはそう言ったあと久慈さんと合流し、事務所へ戻って行った。
歩きながら物想いに耽る。
やしあか動物園に来るまでのわたしは、外出する際に必ず魔力封じのブレスレットを着け、世間に魔女であることをひた隠しにして来た。
もちろんそれはSNSなどで言うところの[魔女狩り]とは違い、社会的な事実上の魔女狩りをされて普通の生活が出来なくなるのを恐れてのこと。
特異な能力は家の外で活かされず、希少な魔女の血はわたしにとってハンデでしかなかった。
だからこそ、やしあか動物園で魔法を使い役立てられる現状に、わたしは至上の喜びを感じている。
馬小屋の掃除をしていると、旅人馬のシーバさんが話し掛けて来た。
「紗理っち、昨夜の歓迎会は楽しめたのかい?」
「それはもう楽しめましたよ~。料理は美味しかったし、お酒もたくさん呑んで最高でした。シーバさんも来てたんですか?」
「そうか、良かったな。少し遅れて行ったが、オレもトクやラゴスと一緒に酒をガブ呑みしながら楽しんでいたよ」
シーバさんてトクさんにラゴスさんと仲が良いのか。意外な組み合わせ...
こうやって徐々に妖怪達の関係性が分かってくると、仕事もやり易くなるのかも知れない。
気になっていた河童の妙薬について、シーバさんが何か知っているか訊いてみると、池掃除担当の河童のワッパさんという妖怪が作っているという情報を入手出来た。そのうち会いに行ってみよう。
掃除と給餌を済ませたあと、サトリさんのことが気掛かりだったので顔を見に行った。
兎小屋を覗くと、サトリさんは他の兎に混ざってニンジンをカリカリと美味しそうに食べている。
人間とは不思議なものでほんの少しでも相手のことを理解すると、時として親近感が湧くものだ。最初に会った時はさほど可愛いと思わなかったサトリさんを、今のわたしは食べる姿が可愛いとすら思いながら眺めている。
ん?サトリさんの動きが急に止まりわたしに視点を合わせた。
「紗理っち、今、ボクのことを可愛いと思ったろ」
あっ!うっかり魔法障壁で防ぐのを忘れてしまった。
「べ、別に可愛いと思ったって良いじゃないですか!悪いことでもないだろうし...」
「て、照れてしまうから止めてくれないかな?」
「照れなくても良いですよ。ところで昨夜は大丈夫だったんですか?」
「大丈夫だったよ。紗理っちが魔法の期限を教えてくれたお陰で、ギリギリまで遊んでいられたよ。本当に感謝してる。ありがとう」
これだ。悪戯っ子がたまに見せる素直な姿が「可愛い」と人を思わせるのだ。
小動物の妖怪であるサトリさんは特に...
「いいえ~、必要な時はいつでも言ってくださいね」
わたしはそう言ったあと久慈さんと合流し、事務所へ戻って行った。
歩きながら物想いに耽る。
やしあか動物園に来るまでのわたしは、外出する際に必ず魔力封じのブレスレットを着け、世間に魔女であることをひた隠しにして来た。
もちろんそれはSNSなどで言うところの[魔女狩り]とは違い、社会的な事実上の魔女狩りをされて普通の生活が出来なくなるのを恐れてのこと。
特異な能力は家の外で活かされず、希少な魔女の血はわたしにとってハンデでしかなかった。
だからこそ、やしあか動物園で魔法を使い役立てられる現状に、わたしは至上の喜びを感じている。
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